ここがヘンだよ外国人オーナー

ここがヘンだよ外国人オーナー

タイの外資系企業で働く日本人の現地採用が語る本音座談会

日本で生活していると、「外資系企業」なんていうと、英語が必須で、ノルマが厳しくて……と、とかくハードルが高いイメージがあると思うが、いざ国を飛び出し海外で働くと、外資系企業などは、むしろ当たり前のことであり、ここタイにおいても、日系、中華系、欧米系と、いわゆる外資系企業が群雄割拠で凌ぎを削っている。そんな中、語学や日本での経験を駆使し、日々戦いを挑む我がサムライ企業戦士なわけであるが、そこには文化・風習の違いもあり、苦労の連続なのである。
ここでは、外国人オーナーの下で働いている、あるいは働いた経験のある4名の方に上からの無理難題、珍事件などを匿名形式で大いに語ってもらい、日頃の憂さを晴らしていただこう、と思う次第である。

 

座談会参加者

A: 広橋雄二(仮名)39歳。中国人がオーナーのIT関連会社勤務。エンジニアとして勤務6年目。

B: 北村義勝(仮名)30歳。広橋さんと同じ会社に勤務。ウエブクリエーターとしてタイ生活3年目を迎える。

C: 嶋野剛(仮名)49歳。韓国人がオーナーを務める旅行代理店に4年間勤める。在タイ18年目、現在は日系企業に勤務。

D: 峰岡純一(仮名)52歳。アメリカ人がオーナーを務めるメディア関連の会社に、ウエブデザイナーとして10年勤める。現在はフリーランスのデザイナーとしてタイで活躍中。

 

夢を語る中国人オーナーに社員全員が振り回される

──今回は、タイを主戦場として活躍する日本人の中でも特に「外国人オーナーの下で働いたことがある、あるいは現在も働いている」という方に集まっていただきました。とかく、ワンマンといわれがちなオーナー企業の中、さらには外国人ということもあり、事業の進め方、方針などに特徴がありそれが大きな悩みとなっている、というのは、しばしば耳にするところです。さらには、中国人、アメリカ人、そして韓国人と、各々強烈な個性とアイデンティーを持つオーナーさん、ということで興味深い話が聞けそうです。では、まず「アジアの大国」中国編から行ってみましょうか(笑)。

A:はい。私は中国人がオーナーを務めるIT関連の会社に6年勤めています。中国本土に本社がある会社で、中国に支社を8つ、その他、タイ、シンガポール、ベトナムなどアセアン全域に支社を持っています。オーナーは生粋の中国人で、10年ほど前から蘇州に居住し、そこで不動産業で財をなして起業した、と聞いています。年齢は40代後半だと思います。「金ならいくらでもある」が口癖で、実際羽振りも良く見えますが、とにかく性格がメチャクチャな人で、社員一同、常に彼の一挙手一投足に振り回され続けています。

B:私も広橋さんと同じ会社に勤めていて、広橋さんの後輩にあたるわけですが、当初聞いていたものを遥かに上回るスケール感で日々驚きの連続です。私はフリーペーパーの求人でこの会社のことを知り、面接するまで中国人がオーナーということは知らなかったのですが、スカイプでの面接の際、まず最初の洗礼を受けました。新事業立ち上げのためのスタッフ募集、ということだったんですが、その事業の内容について、とにかくしゃべるしゃべる! 1時間あまりの面接の間、私のほうがしゃべった記憶はほぼなく、なぜ採用されたのか未だに分かりません(笑)。入社後も、会議の場などでオーナーが話す機会があるのですが、とにかくエネルギッシュな人で、プロジェクトの内容というよりは自身の夢を語り続け、気が付けばオーナーの独演会で終わる、ということもしばしばです。

A:それは私が入社した当初から今に至るまで変わりませんね。とにかく、自分自身と自身が手掛ける事業に絶対の自信を持っており、それを一方的に押し付けてきます。そこに「民主主義」などという概念は一切ありません。それでいて、たちが悪いのが、概念・コンセプトだけが先に立ち、具体的な予算感、タイムフローの概念がまるでないんです。「後は、君たちでやっといて」というのが常。また、ネタ振りも唐突で荒唐無稽であり、戸惑いの連続です。北村君などはまだ大事にされているほうで、私ともう1名の古参社員には、休日も深夜も問わず急に直電(国際電話)がかかってきて、「明日、どこそこの会社にコンタクト取って、うちの商品を営業してきて」との無茶振りが日常茶飯事。しかもその相手先がザ・モールグループやセントラルグループなど、財閥系の超一流企業だったりするのがほとんどなんですよ。このへんの現場感みたいな感覚は一切持ち合わせていない人ですね。

 

現金しか信用しない韓国人オーナー

──いやー、のっけからヘビーな話の連続ですね(笑)。珍エピソードに関してはおいおい語っていただきますので、次に嶋野さんについてお聞きします。韓国人女性がオーナーの旅行代理店にお勤めの経験がおありなんですよね?
C:はい。私が以前勤めていた会社のオーナーは韓国人です。もう70歳を超えているかな? 30年ほど前に韓国からバンコクへ渡ってきて、ツアーガイドの仕事をしながら20年ほど前に今の会社を自身で立ち上げられました。完全に家族経営の会社で、社員数も4~5人、当時日本人のスタッフは私ひとりでした。もう元気な韓国のおばちゃんそのまま、という性格で、仕事ぶりから私生活までとにかく豪快! お客さんのゴルフバック一式を抱えてバイクタクシーの後ろに乗り、ゴルフ場まで送り届ける、なんてのも、もう少し若い時分はよくやってましたね。また、現金主義な人で、羽振りの良い時などは150~200万バーツを財布に入れて持ち歩き、1度10万バーツを入れたカバンを紛失したことがあり、結局無事に戻ってきた、というエピソードもあるほどです。

──。これまた熱い人ですね。思わず、宮路社長を思い出しました(笑)。それと比べると、峰岡さんはスマートなアメリカ人オーナーの下で働かれたんですよね?
D:スマートなんてとんでもない! あんなのただの妖怪ですよ(笑)。彼は国籍はアメリカですが、母親が日本人であり、つまり日米のハーフ、ということになります。齢は70を超えたくらいに見えますが、とにかく、その見た目同様まったく中身がつかめない人で。彼も広橋さん、北村さんのとこのオーナーと一緒で、よく演説をするんですが、同じく荒唐無稽、どこかで見聞きした情報のそのまんま受け売りでまったく具体的でないという話がほとんどですね。それでいて、自分の昔話をするのが大好きで(笑)。生まれ故郷がアメリカのシアトルで、ほぼ同時期にビル・ゲイツ、ジェフ・ヘゾス、ハワード・シュルツを輩出しているんだ、というどうでも良い話から始まり(笑)、中南米で生死をかけた乱闘に巻き込まれたが、空手など武道をやっていたおかげで何とか生き残った、という眉唾の自慢話、しまいには、「私は人を殺した事があるんだ」と言って、社員の前でシャドーボクシングを始めたり、ともうギリギリですよね(笑)。それが昂じて、彼は元CIAという噂がまことしやかに流れており、実際、アメリカの元大統領からもらった手紙を持っていたり、日米の警察高官につてがあったり、など、とにかく存在が謎だらけなんですよ!

 

何だかんだ言っても、日本人しか信用しない

──おーっと! これは本格的にヤバイ人のようですな……。その他のエピソードを聞くのが怖いんですけど(笑)。ところで、話を腰を折るようで恐縮ですが、各オーナーさんたち、皆さん日本に縁があり、ゆえに、わざわざタイという異国の地で日本人向けの商売をされているんですよね?

A:うちの中国人オーナーの場合、日本の大学を卒業し、その後8年ほど日本で生活をした経験があります。日本語はそのとき覚えたんだそうです。ただ、その日本生活は彼にとって苦汁に満ちたものであり、東京大学を卒業し、世の中がちょうどバブル景気に浮かれていたにも関わらず、彼が許された仕事は居酒屋での皿洗いのバイトしかなく、その時の劣等感、屈辱がバネとなり、「日本人を見返してやりたい。日本人に認められたい」との思いから、日本人向けの商売を手掛け、日本人相手の商売にこだわっているんだそうです。ポテンシャルで言うと、中国人向けのほうがよっぽど儲けが出るんでしょうが、中国人向けの商売は一切行なっていません。そもそも、彼自身が中国人をまったく信用していませんしね。要するに屈折してるんです(笑)。

C:韓国人の彼女は、タイに渡ってくる以前から本国でガイドの仕事をしており、そこで日本行きのツアーがメインだったんだそうです。そのガイド時代、必要に駆られたこともあり、独学で日本語を覚えたと言っておりまました。ですので、会話は問題なくできるレベルにありますが、読み書きはできません。彼女も日本を大変リスペクトしており、商売は日本人相手にしかしたくない、と常日頃言っています。あまり口にはしたがりませんが、韓国人とタイ人相手の商売では何度も騙されて痛い目に遭っているようですね。

D:アメリカ人の彼は先述したとおり、お母さんが日本人ゆえ日本語は問題ないレベルでやりとりできます。ただ、猜疑心の強い人でメールの受信は日本語でもオッケーですが、返信は必ず英語で返してきます。また、言った言わない、というのを極端に嫌い、ちょっとしたことでも文書にして、よくサインを書かしてましたね。自分の都合が良いように日本人とアメリカ人を使い分けるのも彼の特徴で、ある時には「同じ日本人同士、そのへんは言わずもがなで分かってくださいよー」と口にしたかと思えば、ビジネスにおいて特に社員との契約については非常にドライで、「では、そういうことで。明日から出社しなくて結構ですから」と突然その日にクビを切られた社員を何度も目にしてきました。

 

自分に非があるのに逆切れして取引先を失う

──なるほど。では、ちょっと怖いですが(笑)、ブラックなエピソードなんかも少し語っていただきましょうか。
C:ここは私に先陣を切らしてください(笑)。いやー、商売に対してとことん貪欲というか、行き過ぎてアコギなんですよね。まず、予約の問い合わせがあったら、とりあえず全て受けます。「お客様を待たせてはダメ。返答はその日のうちに」がポリシーで、聞こえは良いんですが、その結果ダブルブッキングが続発。勝手に部屋を振り替えたりするのは当たり前で、当然クレームが来るんですが、最終的には激逆ギレ(笑)。予約が取れていないお客さんを何事もなかったかのようにゴルフ場に連れて行き、スターターに500〜1000バーツのチップをアンダーテーブルで払い、強引にラウンドする、なんてのもよくやってましたね。もちろん、まともに予約を入れて来ているお客さんやゴルフ場からは大ブーイングですが、お金をもらえるスターターからはかなりの人気者でした(笑)。ホテル、ゴルフの予約とも料金設定もでたらめで、よくトラブルになっていたので、僕のほうで配慮して必ずサインをしてもらうようにしてました。あと、今の商売とは直接関係ないのですが、ちょっと腰を抜かすエピソードとして、独立前のガイド時代、子熊をどこからか仕入れてきて、それを水に漬けて水死させ、その心臓を韓国人相手に売っていたんだそうです。滋養強壮に良いとかで。これでかなり儲けた、と自慢げに語ってましたよ……。ヤバ過ぎですよね(笑)。

B:スゴイですね(笑)。それと比べるとスケールは小さいですが、先にも述べたとおり、中国人のオーナーは、自身の商品に根拠のない自信を持っており、それにより営業も高圧的で、取引先の社長を怒らせてしまうこともしばしば。社員が必死にフォローし、先方も「まあ、外国人だから仕方ないよね」と丸く収めているにも関わらず本人はどこ吹く風。あと、社員全員が困らされているのが、オフィスに対して異常なほどのこだわりを見せることで、ある日のこと、夜遅く中国からやってきたオーナーがひとりオフィスに閉じ篭り、一晩のうちに、机、PC、プリンターなどすべての配置を変え、何と壁の色まで塗り替える始末! おかげで私の机にあった未申請の領収書など多くの書類が紛失し、結局、経費を申請することができませんでした……。恐らく風水など、中国独特の考えにもとづいているんでしょうが、ちょっと病的な感さえありますよね。

A:根本的に絵に描いたような唯我独尊の人。中国ではこうだから、という、いわゆる中華思想もちょいちょい顔を出します。基本、タイに滞在する期間は短く、1年のうちトータルで1か月も居ないくらいの滞在期間ですが、滞在中は会議という名の独演会が開催されます。酷いときは朝10時に始まり夜の7時になっても終わらなかったことがありますが、これもほとんどオーナーの考えを一方的にまくしたてるだけで、それに対する社員のレスは一切期待されていません。そして、ざっくりとした観念だけを丸投げされ、「後はやっといて」、これの繰り返し。

 

アメリカ人の経営者に日本人が勝つのは難しい

D:皆さんと比べると、やはり、アメリカ人が一番悪辣かもしれませんね(笑)。彼も中国人オーナーの方と同様、唯我独尊ですが、たちが悪いのは金に綺麗でないこと。以前、全国的に大規模な洪水が起こり、収益がガタ減りしたことがあったのですが、天災であることを理由に、「取引先への支払いは今月はしなくてよい。今まで何年も取引をしてきてるんだから、それくらいのことは当然だ」と言い放ったことがあって、社員一同、唖然としました。その時のサプライヤーはタイの企業だったのですが、彼らは逆に冷静で、「払わないなら結構。その代わり翌月からオタクとの取引は一切やめさせていただきます」と返され、大慌てで当時の営業部長と秘書がスーツを着て、菓子折りを持って謝罪に飛んでましたよ(笑)。ただでさえ叩いて叩いて、これ以上ないくらいの底値で取引してましたから、ここに見放されたら他を見つけることなんかできませんでしたからね。その他、いろいろな政変などがあり、商売が安定していたとは言えず、社員への給料遅配などもしばしばあったのですが、これも相手を見てやるんですよ。まずはタイ人から。彼らに対して粗相があるとすぐ訴えられる、と分かってるんですよね。それから日本人、となるわけですが、部署ごとにプライオリティーを決めてました。要するに代えの効かない人間が優先されるわけです。私のようなデザイナーなど末端の末端。彼の常識の中では、材料を渡せばデザインは自動的にあがってくる機械のような存在と見なされていたんですから、涙も枯れますよ……。あとは、徹底的な無駄遣い。私が在籍中はベトナムに入れ込んでいて、視察と称して会社の金でしょっちゅうベトナムへ行ってました。結局、何一つ事業化はされず……。私の退社後は、その行き先がミャンマーへと代わり、毎週のように行っているんだ、と後輩が嘆いてましたね。それでいて、社員や取引先への支払いは遅配するんですから……。いやー、ほんどやりたい放題ですよ!

C:絶句ですね……(笑)。ちょっと辛い流れになってしまいましたが、私のほうから1点フォローさせていただきたいのは、韓国人の彼女は、何事に対してもとにかく一生懸命であった、ということ。私なんかも何度怒鳴りあいの喧嘩をしたことか分かりませんが、とにかくとことん面倒見が良く、少しでもお金があれば食事をご馳走してくれ、景気が悪い時などは「申し訳ないな。食事に連れてってやれんと……」と頭を下げてました。身内に対する情の深さは、やはりこの国の人の特徴なんだ、と身に染みて感じましたね。

――皆さん、本日はいろいろな話をお聞かせいただきありがとうございました。皆さんがいかに苦労されながら頑張っておられたか、重々理解することができました。ただ、私見ではありますが、外国で外国人が商売をすること、というのはかくも過酷なことであり、これほどの個性と自我を発揮してもお釣りがくることはないんだろうな、というのも感じることができた次第です。私もタイという地で自営を営む立場でありますが、彼らの爪の垢を少しだけ煎じて飲み、自らのため、働いてくれるスタッフのため、そしてタイのために少しでも貢献すべく精進したいと思います。

 

川越渉(かわごえ・わたる)
Kamin BCNT代表

39歳のときに一念発起しタイへ移住。1年間チュラロンコン大学にてタイ語を勉強した後、通訳兼コーディネーターとして大手電機メーカーに勤務。日系新聞社での勤務を経て4年前より起業しゲストハウス経営、展示会オーガナイザー、通訳などの人材派遣業を手掛ける。在タイ10年目。

 

 

 

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here