イオンディライトがベトナムの建物管理を変える

効果的な施設運営は、長期的に建物の寿命と性能を向上させ、コストを抑制するのに役立つ

ベトナムで効率的な施設・建物管理に取り組んでいるイオンディライトの挑戦を紹介したい。
ビルの建設ラッシュが続き、経済成長が著しいベトナムだが、それに伴うインフラはまだまだ追いつかないのが現状だ。
ベトナムで今後、建物の維持・管理をどう進めていくのか──。
イオンディライトベトナムの代表取締役社長である磯貝孝幸氏にお話を伺った。

建築費用よりも維持費用のほうが高くつく

 

–磯貝さんがベトナムにやってきて、非常に驚いたことがあるそうですね。

それはベトナムの建物の老朽化です。これは築30年くらいのビルかなあ、と思ったら、実はまだ10年未満だった。こういうような例がベトナムでは非常に多いんですね。これは住居用のアパートでも、商業ビルでも、用途問わずです。

–それはどうしてなんでしょうか?

使用する建設資材の影響もありますが、最も大きな要因は建物の適切な維持管理が実施されていないことに起因すると思います。同じ品質の建築資材を使って建てたビルでも、その後の維持管理が適切か否かで、建物の劣化速度が全然違ってきます。ところが、ベトナムでは、建築するときの予算しか用意しておらず、その後、維持に必要なだけの額を予算に組み込んでいないという場合がほとんどです。この維持管理にかかる費用のことを「ライフサイクルコスト」と呼びますが、こういう概念自体が、ベトナムではまだあまり知られていません。

–どれくらいのコストがかかるのでしょう?

20年くらいの長期的な視点で考えると、建物の建築費を超える維持費を見込んでおく必要があります。

–建築費よりも維持費のほうが高くなるとは驚きました。

そうなんです。日常的にかかる水道光熱費や、管理に必要なスタッフの人件費に加え、何年かに1回は設備の入れ替えや、修繕も必要です。特にベトナムでは気候条件も厳しいので、建物の劣化の速度は早くなります。それを考えると、必要な維持費は相当な額になります。

–維持にお金を使うのと、使わないのでは、どちらがどれくらい得になるのでしょうか。

仮の話としてですが、1つ例を挙げましょう。100万米ドルで建てたビルが2つあったとします。A社は、これに毎年3万米ドルの維持費をかけた結果、20年後もそのビルは使える状態でした。つまり、建物としての資産価値を維持することができました。一方のB社では、維持費を5000米ドルしか使わなかった結果、20年後、そのビルは老朽化が進み、ビルを建て直すことになりました。つまり、資産価値はゼロです。A社は20年の間に60万米ドルを使ったのに対し、B社は10万米ドルしか使いませんでした。これだけを見ると、B社は50万米ドルの節約をしています。しかし、その結果、ビルを建て直すことになり、100万米ドルの費用が発生するとしたら、結局、A社と比べて50万米ドル損をする結果となるのです。これはあくまでも1つの例ですが、このように考えれば分かりやすいと思います。

–ベトナムの古いビルは、トイレの水が流れなかったり、雨漏りがしたりと、トラブルがいっぱいですから、そういう数字に出てこない損も含めると、維持費を軽視することによる損害額は、もっと大きくなりそうですね。

問題が発生しないように、普段からしっかりと維持管理することを「予防保全」と言います。これに対し、問題が発生してから対応することを「事後保全」と言います。どちらが得かというと、確実に「予防保全」です。「予防保全」を怠り、「事後保全」で対応していくことは社会全体として損をしていることになるのです。

–これはバイクに置き換えて考えると分かりやすいですね。普段からバイクのオイル交換などの維持管理をマメにしていると、いつも快適に走ることができる。一方、それを怠っていると、取り返しのつかない故障をしてしまい、バイク自体を買い換える羽目になる。それと同じことがビルにも言えるということですね。

はい。その通りです。。

建物の維持管理は、分割できない「1つの業務」

–バイクの場合は素人にも分かりやすいですが、建物の維持管理というと、何をしたらいいのか、具体的なイメージがつかめません。

建物の維持管理と一口に言っても、そこには毎日の清掃、トイレットペーパーの補充、切れた電球の取り替え、エアコンシステムの入れ替え、警備、壁のペンキの塗り替えから、屋根の補修まで、本当に多種多様な業務が含まれます。

–その程度のことなら、ベトナムのビルオーナーさんは、どこでもすでにやっていると思いますが、それではダメなのでしょうか。

ところが、そこに大きな改善の余地があるのです。まず、多くの会社では、それぞれの業務を違う会社が担当しています。毎日の清掃はパートの清掃員と契約する、ビルの警備は警備会社に頼む、エアコンが古くなったら来てもらって入れ替えをする、など。

–その通りです。

これには2つの問題点があります。1つは、それぞれ別の会社が担当しているので、横の連携が取れないということです。そのため、1つの業務を2つの会社が重複して作業したり、逆に、どこの会社も「それは私の会社の担当じゃないから」と思っていて、誰もケアしていない空白の部分ができてしまったり、そういう状況が発生してしまいます。例えば「警備」と「清掃」という2つの業務は、実は深く関連しあっているんですね。これを別々の会社が担当していると、効率が良くありません。

–会社の総務部門が、しっかり調整すれば済むことではないのですか。

実際、多くの会社では、これらの調整は総務部門の業務になっています。ところが、会社の規模が大きくなると、こういう維持管理業務の量が増えて、内容も複雑になります。しかも総務の人は、警備の専門家でもないし、電気機器の専門家でもありませんから、深いところまでは分かりません。これが2つ目の問題点です。

–確かに、それぞれの外注先から提案されると、その言いなりになりがちです。

建物の維持管理業務が効率よく行なわれていない。社内の総務の負担が増えてしまう。これら2つの問題を解決するのが「ファシリティマネジメント・サービス」という考え方です。

–これもベトナムでは新しい概念ですね。具体的に説明していただけますか?

ビルやオフィスの設備管理や清掃、警備といった業務を、有機的に関連している「1つの業務」としてとらえる考え方です。日本では「ビル管理法」という法律があって、ファシリティマネジメントの定義もできていますが、ベトナムではまだ法律すら整備されていません。日本ではもちろん、ファシリティマネジメントを業務とする専門の会社もあります。

–そういった専門の会社に建物の維持管理を頼むことのメリットとは何でしょう?外注に出すと、コストが上がるのではないでしょうか?

新たなコストは発生しますが、本来の業務に割ける時間が増えるので、本業での生産性が向上し、会社全体の財務状態は向上します。会社の規模や業務内容にもよりますが、試算してみると、得になる場合が多いと思いますよ。それに、実はコスト自体が下がる場合もあるんです。

–具体的な例をあげていただけますか?

自社で警備会社と契約して警備員を派遣していると、10人の警備員が必要だった建物でも、ファシリティマネジメント会社に外注することで、業務の効率化や警備の機械化が進み、警備員の数が5人で済んだ、というようなことが実現できます。

–整理をすると、まず「ライフサイクルコスト」の必要性を認識すること。そして、「ファシリティマネージメント」を、まとめて外注に出すことにより、マネージメントの質の向上と、ライフサイクルコストの低減を図ることができる。そういうことですね。

そういうことです。

 

ファシリティマネジメント会社と上手に付き合う

–ファシリティマネジメント会社との上手な付き合い方を教えてください。

まずは、自分の社屋やお店の診断から頼んでみてはいかがでしょうか。どんな問題点があるのかを診てもらうのです。そこで、自社の建物を良好な状態に保つためには、どんな作業が必要か、そして、それには、年額どれくらいのライフサイクルコストをかければいいのかの見積もりを出してもらいます。その結果を見てから、ファシリティマネジメントは外注に出すか、それとも従来通り社内で対応するのか、決めればいいと思います。ファシリティマネジメント会社が自社スタッフを派遣するのではなく、取引先のスタッフを指導する専門家を派遣するというようなサポートをすることもあります。そうすればコストもおさえられます。弊社では、そういう専門家のことを「ユニット・コントローラ」という名前で呼んでいます。

–ファシリティマネジメント会社の良し悪しを見分けるには、どうすればいいですか?

ファシリティマネジメントというと、つい、目に見えるものの維持管理だけを考えてしまいがちですが、ゴキブリなどの虫の有無をはじめ、建物の中の空気のきれいさ、室内の明るさ、作業する場所の音の静かさなど、「お客さまが来られたときや、仕事をするときなど、利用環境に配慮した快適な空間づくり」もファシリティマネジメントの一環です。さらに言うと、清掃に関しても、単に「机を拭く」だけでなく、「細菌類が除去されているのか」というレベルまでケアしてくれる会社だと安心ですね。

–確かに社内の音や空気のきれいさは、作業効率に関係してきますね。

さらに「維持管理コストをどうやって下げるかを、一緒に考えてくれるかどうか」も重要なポイントです。ファシリティマネジメントには、当然、コストがともないます。つまり、会社の資金繰りや経営計画とも直接的に関係してくるわけです。10年間、20年間でどれくらいのライフサイクルコストが必要なのか、建物に関する中長期の運営計画のコンサルティングまでしてくれるのが、良いファシリティマネジメント会社だと言えるでしょう。

–イオンディライト社では、ファシリティマネジメント・サービスを提供されているわけですが、取引先はイオンモールだけではないと知って驚きました。

はい。イオンモールでは、ファシリティマネジメントに対して、大変に高い水準が求められます。そうしたハイレベルなファシリティマネジメントを「当社でも導入したい」という会社は多く、現在、弊社では全部で約150社と取り引きしております。例えば、在ベトナム日本大使館も弊社が担当していますし、ベトナム最大のシネコン・チェーンであるCGVもそうです。

–取引先は日系企業ばかりではないのですね。

当初より「日本の技術でベトナム社会に貢献したい」と考えていましたから、ベトナム企業を最優先に考えています。現在の顧客の割合は、ベトナム企業が60%、日本以外の外資企業が30%、日系企業が10%という比率になっています。業種としては、レストラン、工場、ホテル、オフィスビルなどが中心です。後は、病院や教育機関へも取引先を増やしていきたいと考えています。弊社の強みの1つは、感染制御を組み込んだ清掃ソリューション「衛生清掃」です。それは病院や教育機関に必要なものですから。

-最後に読者の方々にまとめのメッセージをお願いします。

企業活動は本業に専念するのが、経営効率を考えたときに最善の選択肢であると、私は考えています。当社はそうした環境づくりに貢献いたします。皆さんの会社の課題を共有し、一緒に解決策を考え、責社の成長をお手伝いするパートナーになりたいと思っています。

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