オーガニック野菜をタイで開発し、 世界に売る日本人 (下)

オーガニック野菜をタイで開発し、 世界に売る日本人 (上)

 

自然のままを基本に野菜を生産する

ハーモニー・ライフ・オーガニック農園があるカオヤイ山脈の中腹はバンコクに比べると涼しく、1日の気温差が10~20度あることが、美味しい高原野菜の栽培を可能にしている。大賀さんは「有用菌が多い土壌でこそ美味しい健康的な野菜が収穫できる」と力説する。70ライのハーモニー・ライフ・オーガニック農園では、EM菌、乳酸菌、麹菌、酵母菌などの抗酸化作用がある有用菌を多く含む土壌作りに心がけている。腐敗菌が多い土壌では野菜に病気が発生し、害虫の異常発生が起きる。農薬や化学肥料を使っている土壌は有用菌が少ないために腐敗菌が増え、そこで野菜を栽培すると不健康で美味しくない野菜が育ってしまう。

「美味しい野菜とは生命力がある野菜を作ることであり、ハーモニー・ライフ・オーガニック農園で作っている野菜は冷蔵庫に入れておけば数週間が過ぎてもまったく劣化しません」と大賀社長は自慢する。

順調に発展してきたように見えるハーモニー・ライフ・オーガニック農園だが、始めた最初の5年間は苦労の連続だったという。とりわけ、農作物に害虫が大量に発生することから打撃を受け続けたが、試練を続ける中で、健康で元気な野菜には害虫がつかないし、病気にもならないことが発見できたという。

大賀さんの案内で農園を歩くと、雑草がかなり多いが、そのままにしている。トマトのハウス栽培でもトマトを栽培している畝(うね)と畝の間も雑草が多いが、これらを抜かない理由は「雑草には土の下の栄養分を地上に上げてくれるという有用さがあることに気付いたから」と大賀さん。野菜の畝でも野菜が小さい間は雑草に負けてしまうので雑草を抜き取るが、野菜が育つと雑草は抜かないという。
化学肥料で育ったイチゴは味がないだけでなく、甘くないものが多いが、ハーモニー・ライフ・オーガニック農園でオーガニック栽培したイチゴなど果物、ニンジンなどの野菜は農薬を使って栽培されたものに比べて甘くておいしい。大賀さんの農園は何もかも自然のままだが、毒蛇のコブラも出没するため、暗い夜に農園を歩くのは注意が必要だ。

野菜を植えている畝では、野菜が小さい間は雑草に負けてしまうので雑草を取るが、野菜が育つと雑草は抜かないのは、雑草が余分な水分を吸収し、泥はねの被害が軽減し、土の中の養分を雑草が吸い上げ、緑肥にもなる。

「夜間も不自然な照明で照らされ、抗生物質が入った餌を食べさせて早く市場に出す鶏を食べ続ければ病人が増える」と大賀さんは警告する。ハーモニー・ライフ・オーガニック農園で飼っている500羽の鶏は自由に鶏舎から出て砂浴や日光浴もさせている。そして、オーガニック栽培された穀物、野菜、果物が餌。このような環境でハーモニー・ライフ・オーガニック農園の鶏が産む卵は有精卵で、「保温すればヒヨコが生まれる」と大賀さんは説明する。同農園で採れるこの卵は1個10バーツでバンコクの「SUSTAINA」で販売されているが、すぐ売り切れることが多い人気商品になっている。

農園で飼育している牛にはオーガニック栽培を徹底した農園の中の健康な草しか食べさせない。しかし、飼っている牛は食用ではなく、肥料を作るための原料にする糞の確保が狙い。オーガニックの健康な草だけを食べている牛は毎日50キロの糞を出すが、そのすべてを肥料にする。

「農園の動物たちは1回もワクチンを打っていないが、すべて健康です」と大賀さん。
ハーモニー・ライフ・オーガニック農園では果物や各種ハーブの生産も行なっている。野菜ではニンジン、大根、キュウリ、オクラ、かぼちゃ、モロヘイヤ、キャベツ、玉ネギ、各種レタス、ホウレンソウ、ナス、春菊、ネギ、ニラ、サツマイモを栽培している。パパイヤ、パッションフルーツ、バナナ、メロン、レモン、ライムといった果物の他、各種ハーブの生産も行なっている。ハウス内でキノコのレイシ(霊芝)の栽培、インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」では頭髪薬として使うヘナも栽培している。


タイ・周辺国へのオーガニック農法の普及を支援して感謝されている大賀さんだが、経営するハーモニー・ライフ・インターナショナル社では、オーガニック栽培での研修に参加し、オーガニックに転向した農民をサポートするため、オーガニック産物を自社のオーガニック製品の原料などとして購入し始めている。例えばかつて同農園でのオーガニック研修に参加していたタイ東北部スリン県の農民から、タイで最高品質だと評価されているジャスミン米を購入し始めた。これは、この米がタイのオーガニック認証を取得してからで、その後この米は米国USDAオーガニック認証も取得している。

近年、農園で収穫するオーガニック野菜、果物、ハーブ等を発酵して製造する酵素飲料は日本の他、香港、中国、米国にも輸出される人気商品になっている。オーガニック抗酸化酵素飲料の「極み」は、農園内の衛生管理を徹底させた工場で製造されているハーモニー・ライフ・オーガニック農園の代表的人気商品の一つ。32種類の野菜、ハーブ、穀物など同農園でオーガニック栽培により作られた原料を1年半かけて発酵熟成させて、農園内の衛生管理が徹底されている工場で製造している。他にも オリーブ石鹸、オリーブシャンプー&ボディソープ、オーガニックハーブティーやオーガニックジャム、アロマセラピー(芳香療法)で使われるハーバルボール、洗剤関係ではココナツオイルから作るヤシ油脂肪酸を主成分とする天然素材を使って生産している。EM菌、カニ殻から抽出したキトサン、米ぬか、モミ、農園で飼育している鶏と牛の糞を2か月以上発酵させて作る「EMぼかしキトサン肥料」は農園内で使用する他、外販もしている。

月50万食のモロヘイヤ・ヌードルを世界に供給

大賀さんが「モロヘイヤ・ヌードルがヒットしなければ、経営が行き詰っていたかも知れない」と明かすように、モロヘイヤ・ヌードルが柱商品になっている。


ハーモニー・ライフ・インターナショナル社では、無農薬有機栽培のモロヘイヤを使用したモロヘイヤ・ヌードルが売上高の30%ほどを占める最大の商品。同社のオーガニック製品ではオーガニックのモロヘイヤ玄米パスタがモロヘイヤ・ヌードルに次ぐ商品だが、このパスタではオーガニック栽培のモロヘイヤとオーガニック栽培の玄米を使用している。

2001年からモロヘイヤ・ヌードルはタイ風しゃぶしゃぶで日本にも進出している「MKレストラン」チェーンで大賀さんのモロヘイヤ・ヌードルを採用、ほぼ同時にタイの伊勢丹、イオングループ、FUJIスーパー、ビラ・マーケット、レモンファーム・スーパーマーケットといった有名店での販売も開始した。モロヘイヤ・ヌードルは油を使わない「ノンフライ・ヌードル」であることも売り物にしており、これまでに月間販売数が50万食を超えている。

原料のモロヘイヤはハーモニー・ライフ・オーガニック農園で種から生産、天日と温風乾燥機を使用して乾燥させてからヌードルに使う。

「100グラムのヌードルの中に生の葉の計算で20グラムのモロヘイヤが入っています」と大賀さん。モロヘイヤの乾燥粉末は100%ハーモニー・ライフ・オーガニック農園で生産し、製麺工場でモロヘイヤ・ヌードルを製造している。発売当初では日系大手でノンフライのインスタントラーメン工場に生産を依頼したが、その後、その工場を買収したタイの大手食品会社であるタイ・プレジデント・フーズの工場で、同社の日本人の責任者が生産管理をしている2004年からは香港の日系スーパーであるシティスーパーのチェーン店にオーガニック野菜とともにモロヘイヤ・ヌードルの納入を始めた。米国の無店舗販売のアムウエイ・タイランドでも2006年からハーモニー・ライフ・オーガニック農園のモロヘイヤ・ヌードルを扱い始め、2009年からは米国の西海岸を手始めにニューヨークなど東海岸でも販売を開始した。さらに、2010年6月からモロヘイヤ・ヌードルのシンガポールへの輸出を開始、日本にも進出した。2017年7月にバンコクでタイ商務省が開催したオーガニック展に出展した「ハーモニー・ライフ」では、新製品としてフライパンを使わずに作れるモロヘイヤの焼きそばを発表した。


「モロヘイヤ麺は世界市場に出ていますが、このところは米国向けが好調で、これまでに米国だけで計550店のスーパーで販売されています。米国には毎月40フィートコンテナで約20万食を輸出している」(大賀さん)そうだ。モロヘイヤ焼きそばはタイで発売した他、シンガポールと米国への輸出も始まった。

2010年にはハラル(イスラム法で許可を意味するアラビア語)認証を取得し、イスラム圏への輸出も可能。

「もともとの原産地である中近東にモロヘイヤ製品を逆輸出したいと考えて輸出したことがありますが、麺を食べる食文化がない国なので売れませんでした。本格販売できる時期を待ちます」と大賀さん。今後のイスラム市場への夢も膨らませている。

 

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松田健(まつだ・けん)

アジアジャーナリスト。元日刊工業新聞記者。主な著作には、『タイで勝つ!! 直感力こそ成功のカギ』(重化学工業通信社)、『今こそフィリピンビジネス─アジア投資の穴場』(カナリア書房)、『魅惑のミャンマー投資』(カナリア書房)などがある。

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