バンコクで働く人々の現実に迫る タイ現地採用者の覆面座談会

バンコクで働く人々の現実に迫る

タイ現地採用者の覆面座談会

外務省領事局が発表した最新のデータによると、タイで起業している日本の法人数は1783社、そこに従事する企業関係者およびその家族の数は3万1357名(日本大使館発表のデータ)と、依然としてタイ、特に首都バンコクは日系企業の海外進出の拠点として大きな役割を果たしている。ただそこには、海外で事業を行なうがゆえの問題やトラブルが山積しており、それを解消すべく日夜奮闘しているのが現地採用スタッフ、いわゆるゲンサイの人たちだ。今回座談会に参加いただいた方々は2~3年と勤務年数は少ない部類に当たるが、現地採用者の中には10年以上同一企業に従事し、駐在員とローカルスタッフの潤滑油になりながら週末は日本からの出張者のためのゴルフ接待、はたまた将来は現地法人の幹部候補、など、時に重要な役割を果たしている人もいる。今回は、そんな彼らの日常と将来像を語ってもらった。

座談会参加者

A:千葉県出身/24歳/女性/日系の幼稚園勤務/在タイ3年目。
B:愛知県出身/28歳/女性/事務機器販売会社勤務/在タイ2年目。
C:千葉県出身/27歳/女性/日系保険会社勤務/在タイ3年目。
D:埼玉県出身/36歳/男性/外資系人材紹介/ウエブサイト制作会社勤務/在タイ5年目。

 

人に歴史あり。
タイになぜ来たのか、皆それぞれストーリーがある。

──本日は、仕事終わりにお集まりいただき、ありがとうございます。早速ですが、自己紹介をお願い致します。まずは女性陣から。

A:プロンポンにある、日系の幼稚園で先生をしています。今年で3年目になります。24歳、千葉県出身です。

B:日系のFA(※)機器販売会社に勤務しています。会社はラマ3世通りにあります。在タイは2年ほどになります。28歳、愛知県出身です。

C:アソークにある日系の保険会社に勤務しています。海外保険の担当です。在タイ3年目、千葉県出身の27歳です。

 

──様々な業種でご活躍中の皆さんですね。では最後に、今回の企画のリーダー格でもあるDさん(男性)の自己紹介をお願い致します。

D:はい、はじめまして。今回、ビザイアさんよりお話をいただき、私のコネをフル活用し、3名の女性を招集させていただきました。皆さん、真面目に慎ましくタイで生活されている方なので、本日はお手柔らかにお願いします(笑)。私は、在タイ5年目、今の会社は2社目になりますが、現地採用として外資系の人材紹介会社に勤務しています。勤務地はアソークです。埼玉県出身、36歳です。

──はい、ありがとうございます。Dさんを除いて、在タイ3年未満とフレッシュな皆さんですが、まずはタイで働くことになったきっかけ、就活の様子などをお聞かせください。

A:私は、日本で大学を卒業し、幼稚園の教員資格を取得しました。もちろん、日本の幼稚園での勤務を真っ先に考えていましたが、ひょんなことから大学にあった求人「タイにある幼稚園」の求人を見かけ、妙に気になったんです。タイに関しては、事前に行ったことはなく、象さんのイメージくらいしかなかったんですが(笑)。私の祖父が何度も渡航していたことが記憶に残っていて、どうせ初めてのことなら変わったことをやってみるのも面白いかな、と思いました。住居など生活面は学校がすべて保障してくれる、と条件が整っていたのも決心した要因です。

──はあー。それは思い切りましたね。大体は旅行などで一度は行ったことがあり、料理や環境が気に入って、というのが理由だと思いますが、知らないことが功を奏するってこともあるのかな? その辺はおいおい聞かせてください。では、他の方もお願いします。

B:はい。私の場合は司会者さんがおっしゃられる通りで(笑)、学生の頃から海外旅行が好きでいくつかの国を旅行したことがあり、中でもタイに良い印象を持っていました。日本で仕事をしている際も海外との関わりが多くある環境で、一度海外で仕事をしてみたい、という気持ちが日増しに大きくなり約2年ほど前移住を決意した、というところです。就活はタイとマレーシアの2国に絞って行ないました。実はインドネシアも好きな国なんですが、仕事をするには渋滞(囲みコラム参照)が酷すぎるかな……と。で、条件の良かった現在の会社に決めました。

C:私は、大学のアジア学部に籍を置いていたのがきっかけで、第2外国語もタイ語を専攻していました。当時は、今ほどタイブームが起こっていたわけではなく、タイ語を選んだのもなんとなく……というのが正直なところですが、1年間の短期プログラムでチェンマイ大学に留学する機会があり、そこでタイの魅力にハマッてしまいました。大学卒業後はタイとはまったく関係のない仕事をしていたのですが、やっぱりタイへの想いが断ち切れなくて……といったところです。実際の就活は、その前に語学留学していたフィリピンでオンラインの求人を見つけ、スカイプ面接で採用にまで至りました。タイ語と英語の能力をアピールできたのが決め手かな、と思ってます。

D:私は学生時代、いわゆるバックパッカーとして世界を旅していました。その中で月並みですが海外での生活に憧れ、特にタイに対して良い印象を持っていました。その後月日は流れ、日本では普通にサラリーマンとしての生活を送っていましたが、リーマンショック後当時の会社が立ち行かなくなり、どうせ職を変えるなら国も変えてしまおうと思ったのがきっかけです。フィリピン、香港では語学留学の経験がありましたが、個人的にあまり良い印象がなく、シンガポール、マレーシア辺りも候補でしたが、たまたま大阪府の海外支援プロジェクトでタイの案件に応募したところ通ってしまい、3か月の就職経験ができたことが、最終的にタイに移住する決意をする決め手となりました。

仕事はハードでキツくて責任も重く、
ストレスが溜まっている。

──そうですか。皆さんそれぞれのストーリーと決意を持ってタイに渡って来られたのですね。素晴らしいと思います。では、現在どのようなお仕事をされているかお聞かせください。

A:私が勤務する幼稚園には、1~5歳まで250~300人の児童がいらっしゃいます。日本人経営の園ということもあり、児童は基本的に日本人、もしくは日タイのハーフのお子さんです。主にタイに駐在している方のご子息が通われており、園内にあるグラウンドでアスレチック遊びをしたり、時には揃って外出したり、と暑い中、元気に保育をしております。お子さん、親御さんとの間で特に目立ったトラブルは今のところありませんが、親御さんからのご相談のほとんどが「子供が外国の環境に馴染めず、少しノイローゼ気味になっている」というもので、我々先生はメンタルのケアーに特に気を遣っています。先生は女性がほとんどで、7割が独身、2交代制の勤務シフトになっていますが、仕事がハードなため、休日以外、外出することはほぼありませんね。

B:メインの仕事は営業事務です。システムの管理なども行なっています。ただ、もともと営業志望であったため、最近では少しずつ営業の業務も任されています。トータルで200人強の規模の会社ですが、そのうち日本人駐在員の数が10人程度、現地採用は私を含めて2人です。会社の成り立ちが少し変わっていて、もともとタイローカルであった会社を日本の会社がM&Aし、スタッフなどはすべてテークオーバーされたという経緯があり、当初は大変な苦労があったようですが、少しずづ日本式の経営方針が社内全体に浸透してきたかな、という感じです。おかげで、日本人スタッフの絆は大変強く、人間関係で悩まされることはまずありません(笑)。

C:私の会社では、日本の某大手保険会社より業務を委託され、海外保険運用のためのサポートをしています。具体的には、海外旅行保険の提携先であるタイの病院(バンコク病院やサミティベート病院など)へ出向き、保険が的確に適用されているかの査定を行ないます。保険適用者と保険会社の間に立つ仕事なので、業務は正直ハードであり、ストレスが溜まることもままあります……。

D:私が勤務する会社は、アメリカ資本の人材派遣会社です。業務の内容は、日本国内の人材をヘッドハンティングするなど、様々な手段を用いて確保し、主に外資系会社に紹介、斡旋するというものです。実際のやりとりはほぼオンラインで完結しており、主なターゲットは年収1000万円以上の人たちとなるので、やりがいがありますが、細かい神経を使います。外資系だけあって、給与体系はほぼ歩合制であり、ノルマの設定もかなりキツいものがあります。

 

給与待遇・賞与・住居条件には恵まれている。

──ほー。のんびりとした、はっきり言ってしまうと、緩~いタイ社会において、皆さんはかなりガツガツ業務をされている印象です。ちょっと聞きづらいことではありますが、今後タイで仕事をしたい、という人たちの後学のため、給与など勤務条件、住宅事情などをお聞かせください。

A:月給は5万3000バーツいただいています。その内の3000バーツは保険代として自動積み立てされるので手取りは5万バーツですね。その他住宅手当として1万バーツ支給されています。ボーナスは年に1回です。住居は先に述べたように幼稚園から支給(紹介)された物件に、他の先生方と一緒に住んでいます。場所はプロンポンです。

B:現在お給料として6万3000バーツいただいています。初任給が6万バーツだったのですが、1年経ったところで昇給しました。その他保障としては、携帯と通信代を会社に持ってもらっています。会社にほど近いところにある住居は家賃1万バーツ、ボーナスは年1回6か月分をいただいています。こちらは業績次第、といったところですが。

C:私はお給料として月額5万バーツ、ボーナスは年に2回1か月分いただいてます。その他、海外旅行保険を付けていただいてます。これは現物支給のようなものですね(笑)。住居はラマ4世通り沿いの物件、家賃が1万1000バーツです。

D:私の場合、皆さんとは少し形態が異なってまして。先にもお伝えしたとおり、完全歩合に近い内容なので、月によってかなりばらつきがあります。人事の異動は季節がありますので。年収で言うと、100万バーツ以上はいただいていますが、少ない月では2万バーツ、ということもありますので、やりくりをうまくしなくてはいけません。住居は、プラカノン近くにあるコンドミニアムを借家しており、家賃3万5000バーツとかなりお高い物件ですが、シェアハウスをしています。実は、今回座談会に参加されているCさんも元私のお客さんでして(笑)。

C:実はそうなんですよ! 私の場合、タイでの就職が決まり、アパートを探すまでの2週間ばかり滞在させていただいたんですが、設備がばっちり整っていて、生活面のサポートなどもしていただき、とても感謝しています。こちらで就活や語学学校探しなど希望される方に是非お勧めしたいですね!

外食するときはタイ料理ではなくて、
日本食を食べることが多い。

──なるほど、そういうつながりがあったんですね。渡タイしてきたばかりのサポートから始まり、今でも交流がおあり、というのは素敵ですね。私も10年のタイ在住経験があり、現地採用として2社で働いた経験ありますが、皆さん不自由ない条件で生活されてますね。可処分所得が4~5万バーツあるようなら、十分「外国人として」豊かな生活が送れることと思います。では、仕事以外の趣味や週末の過ごし方などお聞かせいただけますか?

A:私の趣味は、週末のケーキ食べ歩きです!
──一同、「かわいーい! そりゃ幼稚園の先生はモテるわ‼」(座談会中、一番の盛り上がりを見せました)。

A:トンローのソイ10にある某お店のチーズケーキが一番のお気に入りです。それ以外は基本、部屋でゴロゴロしてますね。やっぱり疲れてしまうので……。食事は、お昼は児童と一緒に給食を食べ、夜はだいたい外食で日本食を食べています。

B:就業時間が8~17時と決まっているので、仕事終わりでジムに通ってます。休日は針灸通いが日課(笑)、針治療と整体で疲れを癒してます。食事は近くのスーパーで食材を買ってきて、基本自炊です。週末は友達と集って、日本食の居酒屋さんで憂さを晴らしてます。

C:週末は趣味である吹奏楽の練習に明け暮れてます。バンコクにもブラスバンドのサークルがあることを人から紹介され、参加しました。日本人だけでなく、マレーシア人や台湾人もメンバーにいる賑やかな会で、トータル40人ほどの規模。年に2回発表会があり、つい先日もMBKの前にあるヤマハホールで演奏を行ない、200人ほどのお客さんがいらっしゃる、とても盛大なものでした。日頃の食事は基本外食で、やっぱり日本食が多いですね。たまに自炊も、といった感じです。

D:私の場合、先ほど述べたようにシェアハウス業を手がけており、趣味から始めたものが今やライフワークのようになっていますが、それ以外にも日本人や外国人を集めたサークル活動を主催しています。トランポリンサークルだったり、エビ釣りサークルだったり。問い合わせ、要望がある物は極力吸い上げ、それをサークルとして形にするようにしています。こちらも私にとっては生き甲斐のようになっており、おかげさまで楽しくやらせてもらってます。食事は皆さんと同様、外食で日本食ですね。

 

タイ人との人間関係に爆発しそうなこともある。

──なるほど、なるほど。皆さん、充実したタイ生活を送られているのがよく分かりました。では逆に、タイで仕事、生活するにあたって苦労されていることがあったら教えてください。

B:私の場合、真っ先に言えるのが「タイ人との人間関係」ですね! 先にも言ったとおり、会社自体が少し変わった成り立ち、ということも影響しているとは思いますが、我々日本人スタッフとタイ人スタッフの間に見えない、高い壁が存在しています。タイ人スタッフたちが、とにかく責任感に乏しい‼

自分のミスを絶対に認めない! 何か問題が起こったら必ず、「あなたたち日本人の伝達の仕方が悪いんだ」となり、多勢に無勢なこともあり諦めて日本人スタッフが尻拭いするしかありません。もちろん、私も含めた日本人の側にも問題はあると思っています。やはり、日本式を押し付けすぎるのは傍から見ても感じることがあり、会社自体、海外での事業展開に馴れていないこともあり、ローカルスタッフとの折り合いに関する対処法、マニュアルが確立していないように感じます。ですが、これも人と人、お互いが我慢し、自ら率先して業務を行なうことを心がけることによって、ちょっとずつですが改善が見受けられ、ローカルの皆さんの歩みよりも感じる今日この頃です。

C:私が一番感じるのは、タイの人たちの融通の利かなさ、臨機応変さに欠ける点ですね。一度に複数のオーダーをすると、まず間違いなく混乱し、失敗します。これが、向こうに言わせると、「日本人のオーダーの仕方が悪い」ということなのかもしれませんが……。後は、仕事とは直接関係ないですが、タクシーのマナーが酷いですね。女性で外国人だと分かるとまず舐められますが、タイ語で返答するとシュンとします(笑)。それにしても、ぶしつけな質問をされることも多く、ムッとすることが多いですね。渋滞時や雨が降るとメーターを使わない、などローカルルールも多くイライラすることが多いです。

 

タイは若いうちに行け!
迷ったらタイに行け‼

──女性陣はかなりタイ人との関係にストレスを抱えているようですね(笑)。これは私見になりますが、やはり向こうは向こうでこちらをよーく観察していて、どれだけ我々のことを理解しようとしているのか、どれだけ本気でタイのことを考えているのか、を見極めているのだと思います。自身の経験ですが、ある時を境に急にタイ人との垣根が取り払われたように感じられる瞬間があり、それを過ぎるとまだ違った世界が垣間見れるのかな、と思います。そしたらそれで、ずうずうしく踏み込んでも来るんですがね(笑)。では、ご自身の今後の展望と、これからタイ生活を夢見る人たちへアドバイスをお願いします

A:私は、当初より3年間こちらで働くことを計画していました。実際、幼稚園との契約も3年です。その後は日本へ帰って、この経験を活かして幼稚園の先生として仕事を続けていきたいと思ってます。アドバイスするほど大それたものはありませんが、日本ではできない経験ができるのと、貯金も結構できるのでタイでの就職はお勧めですね。

B:私も2~3年をメドにしています。年齢もちょうど30の大台になりますので。日本に戻ってからどうするかはまだ考えてませんが。アドバイスとしては、気が長い人、寛容さを持ち合わせた人じゃないとストレスが溜まるかな(笑)。

C:実は、ちょうど転職が決まったところでして(笑)。私も3年を目安にしてましたが、もう少し長居することになりそうかな? といったところです。タイ自体はとても好きな国なので。アドバイスとしては、「迷ってるなら来てみたら」ですかね。実際周りの人たちも来たらなんとかなってるし、相変わらず求人の数も多いみたいですしね。

D:私としては、タイを拠点にして海外とインタラクティブに活動したい、というのが理想ですが、日本との行き来を増やすのが具体的な目標でしょうかね。

──分かりました。本日はお忙しいところありがとうございました。

最後に、余談として、故郷である日本への思いを皆さんに一同に語ってもらったのですが、皆一様に日本の素晴らしさを口にしていました。サービスの質、社会全体の上品さ、相手を忖度をする奥ゆかしさ。離れてみてこそ分かる自国の美徳なわけですが、外国で苦労しながら頑張っている皆さんには是非この日本人の矜持をいつまでも持ちながら、タイ社会に何か少しでも貢献していってほしい、と願うばかりです。

 

 

日本人経営のシェアハウス
Chai krap bkk

BTS(高架鉄道)エカマイ駅とプラカノン駅の間に立地するコンドミニアムの物件です。共用の冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・WIFI・TV・DVDデッキがあり、女性も住んでいます。本棚には、フリーペーパーなど日本語の媒体も複数あります。お部屋はプライベートが確保できる個室です。エアコン・収納棚付きです。こんなことをご希望の方は是非!

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(個別のご紹介、もしくは交流会等をシェアハウスで開いてます)
詳しくは、http://thaisharehouse.com
までお問い合わせください。

 

 

川越渉(かわごえ・わたる)
Kamin BCNT代表

日本で雑誌編集者として業務後、39歳のときに一念発起し、タイへ移住。1年間大学にてタイ語を勉強した後、通訳兼コーディネーターとして大手電機メーカーに勤務。日系新聞社での勤務を経て、4年前より起業し、ゲストハウス経営、展示会オーガナイザー、通訳などの人材派遣業を手掛ける。在タイ10年目。

 

 

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