ニッポン発アジア行き アジアを舞台にビジネスを展開する日本人起業家を紹介

アジアビジネスにフォーカスするのではなく、世界全体に目を向けてビジネスをしていきたい。

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豊田圭一(とよだ・けいいち)
株式会社スパイスアップ・ジャパン
代表取締役

 現地の言葉で自己紹介をする。現地の経営者や幹部に食事を奢ってもらう。ある製品の仕入れ先と仕入れ価格を調査する。……これらは駐在員のミッションではない。スパイスアップ・ジャパンが提供する海外研修で行われるミッションの一例。こうした日々、クリアが求められるデイリー・ミッションのほかに、ファイナル・ミッションと呼ばれる研修期間中に完成させる大きなミッションがあり、期間中は両方をこなす必要がある。かなり難易度の高い研修で知られている。

「実際、海外修羅場研修とか海外サバイバル研修なんて言われています(笑)。ただ僕は理不尽なのは好きじゃない。例えば、奢ってもらうというのは一見、すごく敷居の高いミッションに感じますが、相手に有益な情報を与えることができれば、その対価として相手は食事をご馳走してくれる。つまり、これはゲームではなくて、相手が何を求めているのか、または相手に何ができるのかを考えることなんです。海外ビジネスで不可欠なスキルを磨くためのミッションなんです」

そんなユニークな海外研修で知られるスパイスアップ・ジャパンを豊田氏が起業したのは2011年のこと。アジアに適応できる人材ニーズが高まってきたのがきっかけだったという。

「会社を設立した2011年頃は、グローバル人材という言葉がちょうど出始めてきた頃で、海外ビジネスの大きなターニングポイントでした。すなわち、安い労働力を活用するというグローバル化から、アジア各国をマーケットとして捉えるグローバル化に変化してきた。当然、求められてる人材像も変わってきます。マーケットとして考えるなら、現地の人の趣味嗜好を知らないといけないし、入り込んで、巻き込んでいかなければなりません。大切なのは語学ではなくマインドセットで、それは経験からしか得られないのです。ただ、実際の問題として企業が海外研修にかけられる時間は少ない。長くても2週間と聞いて、大いに悩みました。短期間で経験を得るには鍛えるポイントをフォーカスする必要があります。それで編み出したのが、今の研修スタイルなのです」

アジアを舞台にした体験型海外研修システムとして、今では多くの顧客を抱える同社のサービスであるが、実はアジアを特段意識して事業を始めたわけではなかった、と豊田氏は言う。

「僕はこの会社を始める前から、留学事業に携わっていて、16年の経験を持っていました。なので自分でニーズを掘り起こしたのではなく、ニーズが向こうからやってきた。留学の延長線として海外研修のニーズを受けて、その先がたまたまアジアだった。僕が行っていた留学事業はアメリカが中心でしたし、その後に起業した携帯電話レンタルの会社もハワイが中心でした。アジアというのは完全に企業ニーズから出たものなんです。

しかしながら、僕も学生時代にバックパッカーとしてアジア各国は回っていましたし、当然、興味は持っていました。さらに、こうした事業を始めるなら、自分自身もアジアで事業をしている立場でいたいと思って、インドで英語学校をスタートさせました。

ここ7年、ずっとアジアに貼り付いていましたが、アジアに強いこだわりを持っているわけではありません。とはいえ、最近はアジアの豊田さん、インドの豊田さんのイメージが強くなりすぎて、「豊田さんの英語はインドなまりですね」と言われる始末です。正直、不本意ですよね(笑)。
僕としてはアジアだけにフォーカスするのではなく、世界に広く目を向けてビジネスをしていきたい。ですから、今はラテンアメリカでの新規事業参入も視野に入れているんですよ」

新規事業という言葉が出てきたが、豊田氏という人は「純然たる」起業家だ。「純然たる」と枕詞をつけたのには理由がある。先に書いたように留学事業を行いながら、海外向けの携帯電話レンタル事業を行う会社も起業した豊田氏だが、せっかく事業が軌道に乗っても、新規事業(スパイスアップ・ジャパン)の立ち上げに伴い、ぽんと仲間に譲ってしまう……。通常、自分が手がけた事業が成功すれば、それを守りたいというのが人間の心情だろう。だが、そのあたりの感情が、豊田氏の場合、いい意味で欠落している。結果、常に事業を創出し続けているのだ。

そういう人であるから、豊田氏のバイタリティたるや凄まじい。例えば、企業研修事業を極めるべく、最先端のリーダーシップ理論を学ぶために、スペインにある名門IEユニヴァーシティーに、なんと現在進行形で留学中。3カ月に一回はマドリードに飛び、濃厚な時間を過ごしているという。同時に日本においても、昼は会社で仕事をし、夜は英文レポートにかかるという、とんでもない生活を送っている。

それだけでも大変だが、同時に合気道の道場にも通っているという。きっかけは大学の指導教授(外国人)の勧め。リーダーシップ理論にある人の強みを引き出す、その向き合い方は合気道にこそ極意があるとのことで、その答えを探しに、豊田氏はなんと週4のペース(本人曰く「ほぼ部活」)で道場に通っているのだという。

さらにセルフプロデュースのラジオ番組を放送し、自らMCとしてマイクに立つなど、その行動力は突出している。常に豊田氏が斬新なアイデアから新規事業を立ち上げ、時代の先頭を走り続けてきた理由は、こうした出口のないバイタリティにこそあるのだろう。

豊田氏にはミッション・コンプリートという言葉はないのかもしれない。

 


埼玉県出身。幼少期をブエノスアイレスで過ごした後、上智大学を卒業後、清水建設に入社。海外事業部に配属される。約3年の勤務の後、海外教育コンサルティング事業を起業。留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ・海外研修事業に携わる。その傍、SNS事業や海外携帯電話レンタルの会社を起業。2011年にスパイスアップ・ジャパンを起業し、これまでの事業を全て譲る。現在、グローバル人材育成のため、海外研修事業に従事するほか、世界7カ国で複数の事業を展開中。

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