スポンサーリンク

ミャンマーがメートル法を採用へ

いまだ重宝がられる日本の尺貫法

近年、世界共通の単位として定着したメートル法は、経済、国際交流の発展に大きく寄与しているが、これ以外の単位はまったく無用の長物になっているかといえば、そうとは限らない。

いい例が日本である。現在はメートル法に準拠しているが、今から約60年前の1958年までは尺貫法とメートル法が共存していた。特に古来からの日本の木造建築(畳の大きさが1つのユニット)や、和服の長けや寸法などは尺貫法のほうが合理的であったし、21世紀になった今でも、その意識は根強く残る。

日本酒党には1合、1升といった単位 のほうがしっくりくるし、何合炊きで表示される炊飯器の容量などはまだ日常的 に使われている。他にテレビの大きさが まだインチ表示なのに抵抗がないのは不思議だ。

スポーツの世界でもまだヤード・ポンド法表示に違和感がない種目もある。メジャーリーグの投手の球速はマイル(miles per hour)表示のほうが凄みが出るし、飛ばし屋のゴルファーの豪快なショットは、300ヤードドライブ(約274メートル)などとアナウンスされたほうが実感が湧く。

キング・オブ・スポーツと呼ばれる競馬の世界でも、いまだにハロン表示が日本でも使われている。1周のラップを計るときに約200メートルごとに立てられたハロン棒を目安に、流れが速いか遅いか判断される。今でも「マイル・チャンピオンシップ」などというGIレースが存在する。伝統的に英国王室も関わる競馬に限らず、英国が生んだゴルフにしても、ヤード表示が常識になっているようだ。

しかし、問題なのは、前記の火星探索機ではないが、数値を読み違えて命の危険性にさらされることがあることだ。メートル法では圧力はパスカル(Pa)で表示するといっても、日本の医療現場では従来から今日までずっと水銀柱ミリメートル(mmHg)が使われている。かりに血圧が100とすれば100mmHg(約133hPa)のことになるが、血圧数値を読み違えたら生死に直結する場合もある。だから、日本の医療現場ではいまでmmhgを使用し、パスカルとの併用も行なわれているそうだ。

経済活動が急速に国際化している現状では、ある国で作った部品を他の国、地域で組み立て・完成させる場合には、そのつど異なる単位系の換算を行なっていては効率が悪く、事故にもつながりかねない。だから、世界共通のメートル法の導入は必然と言えよう。すでに科学の世界では、論文の表記はすべてメートル法にしないと受け付けてもらえない時代に入った。

ミャンマーでも、紙幣を数える単位で10万ksのことを1lucという場合がある。他にも穀物などを数えるときに使う独特の表示単位がある。だから、メートル法に移行するには時間がかかるかもしれない。しかし、国際化や経済の発展の速度に合わせていくには乗り越えないといけない重要な課題ではある。

余談だが、もしアメリカがメートル法」を法的に義務付けたとしたら、マクドナルドの「クォーター・パウンダー」(1/4ポンド)の商品名は一体どうなるのか。「113グラム・バーガー」というネーミングにでもなるのだろうか。あるいは、ボクシングの選手紹介で体重をポンドではなく、キログラム表示でアナウンスするようになるのだろうか。

しかし、こうした聞き慣れた単位表示は無理に変更しなくてもいいのではないだろうか。それがすでに伝統慣習になっているのだから。

栗原富雄(くりはら・とみお)

月刊『Yangon Press』編集長兼CEO。元日本旅行作家協会会員。1949年、東京生まれ。高校を休学して2年間、ヨーロッパ、ア ジア、アメリアを放浪。1975年から1988 年まで、「ブルータス」「週刊宝石」の取材記者。1992年~ 2001年、月刊「SEVEN SEAS」、月刊「VACATION」編集長、月刊 『MOKU』編集局長を歴任。その後、フリーランスを経て、2011年にミャンマーのヤンゴンへ。2013年4月、日本語フリーペーパーの 「Yangon Press」を創刊。2014年9月、ミャンマー語版を創刊。VIP取材には、ダライ・ラマ14世、ゴルバチョフ元ソ連大統領、デビッド・ロックフェラー、アウンサン・スーチー他。著書に『あの助っ人外人たちは今』(実業之日本 社)、『不動産広告の裏を読め』(実業之日本 社)、『Yangon Pressで読み取る現実と真実』(人間の科学新社)などがある。

コメント

タイトルとURLをコピーしました