ミャンマーの地震状況を検証する(上)

20年に1度の割合で大地震が発生していた

ミャンマーの地震状況を検証する

2018年1月12日の地震はミャンマー中央部を震源地とするM(マグネチュード)6の強震だったが、ヤンゴンでもかなりの揺れを感じた。タイの首都バンコクでも揺れたという。これまで地震に対しては全く無警戒だっただけに、これでやや目が覚めた感がある。ミャンマーは大丈夫なのか──。

 

ミャンマー中央部に地震が集中
ヤンゴンも安閑としていられない

年明け早々の1月12日未明、ミャンマー中央部でM(マグネチュード)6・0の地震が発生し、ヤンゴンでもかなりの揺れを感じた。アメリカの地震調査機関(USGS)の発表によると、震源地はヤンゴンから北西に186キロの地点だった。この地震のあとにも、同地域でM5・3の余震が3度発生した。ちなみに、この地震の影響で、タイ北部チェンマイ、中部ノンタブリや首都バンコクなどでも揺れを感じたという。

滅多に地震がこないヤンゴンにいると、どうしても地震への恐怖や警戒感が薄れがちだ。

だから久々に大きな揺れを感じた今回の地震には少々不気味な感じさえした。しかし、よく調べてみると、ミャンマーは想像以上に地震が多発している地震国だということが分かる。1930年から1956年にかけての26年間だけでも、M7・0以上の強い地震が6回も発生している。

最近では2012年に国内中央部でM6・8の地震が発生し、数百人が負傷、26人が死亡した。また、2016年には古都バガンでもM6・8の地震が発生し、多くの寺院が崩壊した災害はまだ記憶に新しい。

ミャンマー国内には活断層(Active Fault)が多数存在しており、中心部を南北に走るザガイン活断層(Sagain Fault)は特に有名で、最近では内外からこの断層の動きに警戒感が増している。専門家の中には、このあたりの断層が年に約2センチ程度ずれていと指摘する人もいる。

しかもミャンマーには、南中国プレート(South China PLate),インドプレート(Indian Plate), ビルマプレート(Burma Plate), スンダ・プレート(Sunda Plate)といった活断層が国内西北部のこのザガイン断層あたりでぶつかり合っているとも推測されている。

活断層という点に関していえば、2004年12月に発生した「スマトラ沖地震」は、スマトラ島南側沖(スマトラセグメント)の長さ420キロ、幅240キロの断層が平均5~20メートルずれ、次いで中央部(ニコバルセグメント)の長さ320キロ、幅170キロの断層が5メートル、さらに北側(アンダマンセグメント)の長さ570キロ、幅160キロの断層が2メートルずれ、全体として長さ1200~1300キロの広大エリアが震源区域になった。

この大地震はM9・3というの巨大なもので、1960年に発生したチリ地震のM9・5に次ぐ史上最大級の大地震であった。震源はスンダ海溝に位置し、インド・オーストラリア・プレートがユーラシア・プレートの下に沈み込むことによる海溝型地震の多発地帯の中にあった。これにより、ビルマ・マイクロ・プレートの歪みが一気に開放されたという。

地震の揺れは震源の南端では3分ほど、インドネシアのバンダ・アチェなど少し離れたところでは6~7分続いた。遠いところでは、バングラデシュ、インド、スリランカ、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイ、モルディブまで伝わったほか、こうした国々の海岸地域に、津波による甚大な被害をもたらしたことはまだ記憶に新しい。

こうしてみると、活断層は、ミャンマー一国のみならず、アセアン諸国、特に地震多発国インドネシアの断層ともリンクしていることが分かる。

過去の記録を見ると、ミャンマーでは20年から30年に1度の割合でM6程度の地震が起き、100年に1度の周期でM7から8以上の巨大地震が発生している。ちなみに、主な大規模地震の発生年月と規模をあげれば、1912年5月12日(M8)、1918年7月8日(M7・6)、1931年1月27日(M7・6)、1941年6月26日(M7・7)、1946年9月12日(M7・5)、1946年9月15日(M7・75)、1947年7月29日(M7・9)、1950年8月15日(M8・7)などが記録されている。

こうした大地震の大半は、やはり国内中央部に集中しているが、1931年に発生した地震は、ヤンゴンから北東に約80キロのところにあるバゴーが震源地だった。バゴーの観光名所である「シュエモード・パゴダ」には、この地震で落下したパゴダの頂上部が今もそのまま置かれている。こうしてみると、ヤンゴンとて決して安閑としてはいられなくなる。

日本は地震頻度で世界第4位
年平均死亡者数で世界第7位

ミャンマーの場合はヤンゴンやマンダレーといった都市部での地震災害が少なく、ここ20年に限ってみても、都市部ではさしたる地震災害はない。だからあまり切迫感がない。

それに比べると、日本は言わずと知れた地震大国である。1995年1月17日に発生した戦後最大と言われた「阪神淡路大震災」(M7・3)、2011年3月11日に起きた日本周辺観測史上最大といわれた「東日本大震災」(M9)、さらに、2016年4月1日に起きた「熊本地震」(M 6・5 )などの巨大地震を例に出すまでもなく、日本は大小様々な地震に見舞われている。

しかし、内閣府の「平成26年版災害白書」の付属資料によれば、M5・5以上の地震の頻度(1980年から2000年にかけての20年間の年平均回数)を見ると、日本は年1・14回であり、中国の2・1回、インドネシアの1・62回、イランの1・43回に次ぐ、世界第4位となっている。これは意外だった。ちなみに、この後にはアフガニスタン、トルコ、メキシコ、インド、パキスタン、ペルー、ギリシャ、フィリピン、イタリア、などの国々が続く。

ただ、中国の地震頻度が世界一であると言っても、国土面積が広大なので、特定地域における被災確率はそれほどではないと考えられている。逆に小国で頻度が高ければ、被災確率は高まることになる。

そこで国土面積当たりの地震頻度を算出してみると、例えば各国が日本と同じ国土面積であるとしたら、年平均地震回数は一体何回になるか、というデータも指標化されている。

この場合はコスタリカが2・44回で世界一となり、次いでキプロス、アルメニア、エルサルバドル、ギリシャが続き、日本はこれに次ぐ世界第6位となっている。

さらに、地震頻度が同じでも、人口密集地にどれだけ大規模な地震が起こったか、また地震災害に対する脆弱性の違い(家屋構造、防災体制等)によって被災死亡者数は異なってくる。過去20年間の年平均の地震災害の被災死亡者数で見ると、イランが2251人で最多。これにアルメニアの1191人、トルコの950人が続き、日本は281人で世界第7位となっている。

このように、指標のとりかたによって、順位は異なってくるが、いずれの場合でも日本は常時ベストテンに入る地震大国であることが指標からも分かる。

〈参考文献〉
・米国地震調査研究所資料
・内閣府「平成26年度版災害白書」
・名古屋大学環境学研究科附属地震火山・防災研究センター資料
・日本応用地質学会 平成17年度研究発表会資料
・デトロイトトーマツ企業リスク研究所資料

 


栗原富雄(くりはら・とみお)

月刊『Yangon Press』編集長兼CEO。元日本旅行作家協会会員。
1949年、東京生まれ。高校を休学して2年間、ヨーロッパ、アジア、アメリアを放浪。1975年から1988年まで、「ブルータス」「週刊宝石」の取材記者。1992年~ 2001年、月刊「SEVEN SEAS」、月刊「VACATION」編集長、月刊『MOKU』編集局長を歴任。その後、フリーランスを経て、2011年にミャンマーのヤンゴンへ。2013年4月、日本語フリーペーパーの「Yangon Press」を創刊。2014年9月、ミャンマー語版を創刊。VIP取材には、ダライ・ラマ14世、ゴルバチョフ元ソ連大統領、デビッド・ロックフェラー、アウンサン・スーチー他。著書に『あの助っ人外人たちは今』(実業之日本社)、『不動産広告の裏を読め』(実業之日本社)、『Yangon Press で読み取る現実と真実』(人間の科学新社)などがある。

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