東南アジア最後のフロンティア ミャンマーの魅力

第3回 消費市場の急拡大と外資への開放

ビジネスチャンスが拡大するミャンマー

南国の女性の間で多い「肌を白くしたい」「脂分を抑えたい」などのニーズに対応したタイ製品は「ミャンマー女性の嗜好」に受け入れられたと言えそうです。

外資の参入障壁が緩和される

第二次世界大戦後のミャンマーの法律は、UK法の影響を色濃く受けたインド法に準じた体系でしたが、ネ・ウインが軍事クーデターで1962年に大統領に就任してから、ミャンマー語の新しい法体系が導入され、非常に分かりずらいものになってしまいました。

しかしながら、これが海外資本の進出の大きな妨げになっているとの認識から、海外の法律専門家の助言を得ながら法律の見直しが始まりました。

2018年4月1日には新投資法が施行され、新投資法と共に両輪とも言える新会社法が8月1日から施行される運びとなりました。

また、商業省が5月9日付に告示(実際の公表は5月11日)した Notification No.25/2018 (2018年通達第25号)は、それまでは一部の品目についてのみ外資にも認めていた「卸売・小売」を品目による制限なしに外資の参入を認めました。

人口5142万人(2014年5月に30年ぶりに実施され、9月に公表された国勢調査の暫定値)、1人当たりの国民総所得(GNI)が1255米ドルの大きな市場が外資に開放された事になります。

【参考】ミャンマー外務省が2018年5月に、1987年に指定を受けた「最貧国」の指定から2021年に脱却する見込みであると発表した。国連が後発開発途上国(LDC = Least Developed Country)と認定するための3基準(随時改定)は、①1人あたりの国民総所得(GNI)が1230米ドル以上、②国民のカロリー摂取量、健康に関する指標、識字率などに基づいて算出される人材投資指標(HAI= Human Assets Index)が66ポイントを超えている事、③外的ショックに対する経済的脆弱性を表す経済脆弱性指標(EVI = Economic Vulnerability Index、農産物の生産量、商品とサービスの輸出の安定性、製造業・サービス業が全経済活動に占める比率、人口に基づく国内市場の規模、天災の影響を受ける人口の割合)が32ポイント未満である事などで、この内2つをクリアすれば LDC の指定から解除されます。ミャンマーは、GNIが1255米ドル、HAIが68・5、EVIが31・7といずれの数値も基準に達しました。ミャンマーは1987年に国連から最貧国の指定を受けていました。

新会社法で最も注目される外資規制の緩和

従来は、外資が1株でも入っていると、その企業は外資企業と見做され、輸入、国内販売を禁じられていました。近年は、自動車、肥料、種子、殺虫剤、医療機器、建設資材、農業用機械などの一部品目に限り、合弁企業には輸入と国内販売が個別に認められ始めていました。

2018年8月1日以降は、外資が35%以内の合弁企業は「国内企業」と同等に、ほとんどの品目に就き、輸入と国内販売が認められる事になりました。

【参考】新会社法では従来2人以上を求められていた出資者が1人でよくなるという緩和策や、取締役の内1人はミャンマーの居住者でなければならないなどの変更がありますが、ここでは新会社法の「外資規制の緩和」について述べるに留めさせていただきます。

商業省通達の内容

100%外資企業でも「卸売・小売」への参入が可能となります。ただし、①100%内資企業、②外資20%以下の合弁企業、③外資20%超の合弁企業と100%外資企業の3分類で投資金額などの条件が異なります。

(1)売り場面積の制限
卸売業に就いては、面積の定めはありませんので、たとえば貸倉庫を利用する事も可能です。
小売業については、100%内資企業は「特に規定なし」、合弁企業と100%外資企業は、「1店舗当たり1万平方フィート=929平方メートル以上」が求められています。また、合弁企業と100%外資企業はコンビニエンス・ストアやミニマートの展開はできません。

(2)投資金額の下限
卸売業に就いては、100%内資企業は「特に規定なし」、外資20%以下の合弁企業は200万米ドル、外資20%超の合弁企業と100%外資企業は500万米ドル、となっています。

小売業の場合には、100%内資企業は「特に規定なし」、外資20%以下の合弁企業は70万米ドル、外資20%超の合弁企業と100%外資企業は300万米ドルが1店舗ごとに求められます。

この投資金額は「資本金」ではなく、販売用商品の「仕入れ額」と考えられますが、これが最初に全額を使わなければならないのか、あるいは、許可申請の時に提出する事業計画の中で、初年度の仕入金額であればよいのかは未だ明確ではありません。

(3)手続き
卸売業、小売業共に、次のような申請手続きが求められます。
•会社登録証(すなわち、申請前に会社が設立されている必要があります)
•MIC投資許可証、あるいは、MIC Endorsement Certificate
•当該地区の開発委員会からの推薦状(ヤンゴンならYCDC)
•取り扱い品目のリスト
•事業計画書(当初投資金額、店舗所在地を明示)
この他、商業省に輸出入業者登録(Importer/Exporter Registration)を行なう必要もあります。

(4)留意点
ミャンマーでは、「法律」と「通達」(Notification)と「窓口規制」が存在します。常識的には「法律」「通達」よりも上位にあるはずですが、この通達の「内資企業」と「外資企業」の分かれ目が明らかに8月1日に施行される「新会社法」と矛盾しています。

「新会社法」では外資が35%以下の合弁企業は「内資企業」として取り扱われると明示されていますが、この通達では、①少しでも外資が入っていると100%内資企業よりも厳しい条件(当初投資金額、小売店舗面積)が課せられ、②外資が20%を超えると、さらに高い当初投資金額が求められています。

ミャンマーへの投資事情が大きく変わる

今まで、良質で豊富で割安な労働力が注目されて、①輸出志向の製造業が中国や他の東南アジアの国々から移転して来ましたが、②国内市場向けの製造業やIT(KDDIの携帯電話事業)、建設業がこれに続きました。

これからはますます、ミャンマー市場で自由に輸入、卸売り、小売りの投資ができるようになります。

この千歳一隅の機会を見逃さずに、多くの日本企業が積極的に参入して来る事は明白です。

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山口 哲(やまぐち・てつ)

早稲田大学第一商学部卒。三井物産に入社し、米国ニューヨーク本店やインドネシア現地法人に勤務。銀行マンに転身し、ABN AMRO BANK、ANZ BANKなどの外資系銀行を経た後、ジェトロのヤンゴン・オフィスで海外投資アドバイザーを務める。現在はヤンゴンで「Office Teddy」を設立し、日本企業のミャンマー進出支援や不動産仲介業に携わっている。

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