ミャンマー産チークの謎に迫る

世界一の品質を持つ建築材

ミャンマー産チークの謎に迫る

遭難して70年以上も経ったタイタ二ック号のデッキに使用されたミャンマー産のチークは無傷だった。
驚くべき耐久性である。
その銘木の産地であるバゴー近郊に、15人の彫師の手になる約5000点のアートが展示されたリゾートがあった。
ミャンマー産チークの秘密とその素晴らしい芸術を報告したい。

 

イギリス海軍が着目して使い始める

ミャンマーにはいまだに豊富な資源が開発されずに埋もれていると言われるが、チーク材もそのひとつだろう。

かつて、ビルマ式社会主義の時代、この国は半ば鎖国状態で、日本へのチーク材の輸出は皆無だった。そのため、インドネシア産やマレーシア産の植林チークが日本へ流入、これが日本人にはチーク材と見なされていた。

しかし、ミャンマー産は天然チークと称せられ、「グリーンチーク」と呼ばれるインドネシア産とマレーシア産の植林チークとは一線を画する世界に誇る銘木である。

マレーシアとインドネシアでは、急速な工業化や近代化に伴う森林伐採や木材需要の増大により乱開発・乱伐採が進み、現在では高樹齢の良質なチーク材は供給できない状況となっている。それだけにミャンマー産チークの希少性が改めて見直されている。

古来より最高の建築材として珍重されてきたミャンマー産チークは、金褐色の重厚な質感だけでなく、素材の持つ安定性やたぐいまれな耐久性を持つのが特色だ。

そのため、17世紀にイギリス海軍が海水に浸かっても劣化しないこの国のチーク材の特性に着目し、クィーンエリザベス2世号などの大型帆船などに使いはじめた。余談だが、あの有名な客船タイタニック号のデッキにはこのチーク材が使用されていたが、遭難事故を特集したテレビ番組で、悲劇から70年以上経過しているにもかかわらず、沈没船のチークのデッキが未だ無傷で残っていることが報道され、世界を驚かせた。

日本では国会議事堂や箱根富士屋ホテルなどにも使用され、歴史を経るとともに気品のある空間を作り出す素材として脚光を浴び、世界各地の著名な建築物で確固たる建築材としての地位を築いている。

ミャンマー政府の統制下で厳重に保護される希少な銘木

チークは南洋の堅木でクマツヅラ科チーク属に属し、学術名は「Tectona Grandis」という。この貴重なチーク材は現在ミャンマー政府の統制材になっており、環境保全林業省の独占管理になっている。

しかも2010年~2015年の5年間に森林面積が5%減少したとの国連の勧告を受け、それまで年間20万トンを計画伐採していた伐採を6万トンに削減し、保全に努めている。

これまで、日本市場に流入しているチーク製品の中には、中国の木材業者がミャンマー国境付近で盗伐したチーク材を密輸入し、上海市場で流通させ、それを日本の建材商社が買い付け、日本に持ち込んだ製品も少なくないと言われている。

林野庁はこのような違法製品の排除に努めているが、消費者の理解不足が原因で、依然として流通は続いているという。しかし、樹齢に関係なく盗伐した原木を急速乾燥して加工した製品は、施工後伸縮や反りが発生し、トラブルになるケースも度々発生しているようだ。

ミャンマーのチークは標高200~500メートルの原始林に点在する高樹齢(150~200年)の成熟樹を、伐採する3~5年前に立ち木の状態で木の周辺に切り込みを入れ(辺材部全周)、水分を抜き含水率調整と木の姿の改善・材質の引き締めを行なう(巻き枯らしと呼ぶ)。

伐採後は、象を使って切り出し、筏に組み、大河イラワジ河をヤンゴンまでゆっくりと運搬し、ヤンゴン工場で加工に入る。この期間が2年余必要になるという。

その後、丸太を板材に製材し、6か月余の自然乾燥、人工乾燥、加工製品化となる。だから実際に使用できるまで実に6~7年もかかるわけだ。ゆっくり仕上げる事が重要で、無垢材の特徴を活かして品質を保持するのが良い製品を作る秘訣だそうだ。

チークは耐水性・耐久性・安定性に優れており、抗菌性もあるという。ミャンマー国内ではバゴーのヨーマ地区や上ビルマ北部が産地だと言われている。

 

チーク材彫刻5000点を展示した美術館のあるリゾート

バゴーから車でヤンゴン方面へ約30分、ミャンマー人には知られているが、日本人にはほとんど知られていない珠玉のリゾートがある。シュエ・ピィ・リゾート(Shwe Pyi Resort)がその興味をそそる場所だ。

東京ドーム10個分がゆうに入る広大な敷地内は、中央部分に作られた人造湖を中心に、コテージ形式の独立したホテル宿泊棟、レストラン、カフェ、さらに森林の中でくつろげるレストスペースがいくつも設けられている。

しかし、このリゾートの最大の売りは、何といっても森の中に作られた野外美術館である。その数は5か所もあり、自然と調和させた配置とデザインは見事というほかない。

しかも展示物を目にすると、日本人なら驚きの表情をする方が少なくないという。何しろ前述したミャンマーのチーク材を素材にした彫刻作品が5000点余りも展示にされているからだ。

お国柄、大小の仏像彫刻はさすがの出来栄えである。躍動感溢れる象、牛、馬、龍などの大型の動物から小動物まで、硬くて重いチーク材に、よくここまでの細工を施したものだと感心する。しかもたった15人の彫刻師の手で制作されたというからさらに驚く。

リゾート内は有料の電動カートで見て回ることもできるが、ここでは散歩がてらにゆっくりと歩いて散策がてらにスローライフを楽しみたい。小鳥のさえずり、新鮮な空気、溢れんんばかりの森林の緑に本当に心を癒される。

ちなみに、ホテルは4つ星で、設備も整っており、もちろんWi-Fi も使用できる。ヤンゴンからでも車で1時間15分くらいなので、週末の1泊旅行には向いているだろう。

 


栗原富雄(くりはら・とみお)

月刊『Yangon Press』編集長兼CEO。元日本旅行作家協会会員。1949年、東京生まれ。高校を休学して2年間、ヨーロッパ、アジア、アメリアを放浪。1975年から1988年まで、「ブルータス」「週刊宝石」の取材記者。1992年~2001年、月刊「SEVEN SEAS」、月刊「VACATION」編集長、月刊『MOKU』編集局長を歴任。その後、フリーランスを経て、2011年にミャンマーのヤンゴンへ。2013年4月、日本語フリーペーパーの「Yangon Press」を創刊。2014年9月、ミャンマー語版を創刊。VIP取材には、ダライ・ラマ14世、ゴルバチョフ元ソ連大統領、デビッド・ロックフェラー、アウンサン・スーチー他。著書に『あの助っ人外人たちは今』(実業之日本社)、『不動産広告の裏を読め』(実業之日本社)、『Yangon Press で読み取る現実と真実』(人間の科学新社)などがある。

 

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