変わるシンガポール 奇跡の都から普通の国へ

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変わるシンガポール

奇跡の都から普通の国へ

第一回 シンガポーリアン優遇政策の行方

シンガポールは、面積でいえば東京23区とほぼ同じで、2018年6月末時点でのシンガポール統計局のデータによりますと、722・5平方キロメートルです。シンガポールがマレーシア連邦から独立したのは1965年8月9日でその当時は581・5平方キロメートルでした。国土は埋め立てにより、50年ほどで約25%も増えています。日本でも有名なホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」は埋立地の上に建っています。また国際的にも知名度の高いチャンギ国際空港近辺も埋め立てが進んでおり、近い将来には5つのターミナルが完成し、名実ともに世界のハブ空港の地位を確立していくことが予測できます。

経済成長率もかつてのような2桁成長はないものの、2018年通期で2・5%~3・5%と堅調に推移することが予測されます。直接投資も前年比9・1%の伸びを示しており、経済は引き続き伸びていくことでしょう。

また国際政治面では、2018年6月12日にアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との歴史的会談がシンガポール南部のリゾート地セントサ島で行なわれ、世界中の注目を集めると共に、この会談のために世界各国からマスコミやその他関係者が大挙してシンガポールを訪れ、宿泊、飲食すべてにおいてかなりの金額が短時間でシンガポールに入りました。金額はあくまでも推定ですが、約5億円とも言われています。

 

世界中から人材を集めるシンガポール

1980年代は「アジアの奇跡」とも呼ばれ、堅調に経済成長を成し遂げてきたシンガポールのサクセスファクターの一つとして積極的な移民政策があります。世界各国から優秀なプロフェッショナル人材を獲得していき、競争力を高めました。

日本でもようやく外国人の「受け入れ」に積極的になってきましたが、いまだに「受け入れ」と上から目線のような消極的な姿勢が見受けられます。かつてフィリピンのアロヨ大統領が、「日本は労働力の輸入をしませんと、フィリピン人は売り切れになってしまいますよ」と警鐘を鳴らしていましたが、日本に観光で行きたい東南アジアの人は多いですが、仕事として行きたい人はそれほど多くないとは思います。フィリピン人は、近いこともあり、シンガポールに数多くメイドとして仕事をしていますが、それでもホームシックで突然帰国してしまうこともあります。

積極的な移民政策から消極的な外国人雇用規制へ

2018年度6月末時点での人口統計を見てみますと、総人口は56 3万8700人で前年同期と比べ0・5%の微増です。内訳を見ますと、シンガポール・シチズン(シンガポール国籍)は347万1900人で、1%の微増です。その他は永住権保持者52万2300人で、統計上は、シンガポール国民とPRを合わせた数が、シンガポール居住民とされており、その数は約400万人になります。つまり総人口約564万人からこの数を引きますと、シンガポールには住んでいますが、「外国人」となります。その率は年々増加しており、29%と全人口の約3割を占めます(グラフ参照)。

永住権者も含めますと、「外国人」は合計約全人口の38%となり、世界にも類のない外国人比率となっています。かつては小国ならではの知恵で積極的な移民政策を推し進めて経済成長を果たしてきました。ところが、潮目が変わったのは2012年5月、中国人移民が運転するフェラーリが、52歳の3人の娘がいるシンガポール人ドライバーと乗客の命を信号無視で奪ったことから、無差別に移民を入れることに疑問を持ち始めたシンガポール国民が(珍しく)政府批判をするようになってきました。

そこで政府は雇用に関して「シンガポーリアン・コア政策」を強固に進めており、「ノーリターン(もう後戻りしない」」と宣言しました。企業に組織内のシンガポール人雇用比率を3分の2にするように求めており、従わない企業には「ウォッチ・リスト」に載せて改善を促す施策を推進してきました。大手企業の狙い撃ち(見せしめ)が続き、シンガポール政府の強い意思が伺えます。

次回は外国人雇用に関する様々な規制とその対策について述べてまいります。

 

斉藤秀樹(さいとう・ひでき)
プログレス・アジア シンガポール 代表取締役社長

1966年東京生まれ。タイ国立マヒドン経営大学院卒。1993年~ 1997年、ヤオハン香港本社で人事畑を歩む。1998年~2001年、大手出版社で年間100人の採用実績。2001年~2006年、日系人材紹介会社パソナ・タイ社長。2006 年、グッドジョブ・クリエーションズ・シンガポール設立。2014年5月、経営権売却後、プログレス・アジア シンガポールを設立。プロによる「皆様の総務・人事部」として東南アジア進出企業をサポートしている。