日本ブランド製品の商機は中国にあり(上) -たった1日で2兆円が動く「双十一」

日本ブランド製品の商機は中国にあり

-たった1日で2兆円が動く「双十一」

「祭り」が去って、また「祭り」。中国はいま販促イベント・ラッシュの最中にある。「中秋節」と重なった「十一」に続き、1年で最大のオンライン・ショッピング・イベントである「双十一」、そして「双十二」を控える。日本企業にとっても大きな商機であり、国境を越えたネット通販「越境EC」が活況を示すなか、インバウンド(訪日旅行)とアウトバウンド(中国での販促)の両面展開で突破口を開きたいところだ。

出国ラッシュに沸いた「十一」連休

中国では毎年秋、「建国記念日」に相当する国慶節(10月1日)の時期は「黄金週(ゴールデンウィーク)に相当する。俗に「十一」連休と呼ばれ、今年は10月4日が中秋節(「中秋の名月」を祝う休日)と重なったことから、例年より1日多い8日連続の休暇となった。

その分、経済効果も大きく、「人民電報」の記事によると、中国商務省がまとめた国内小売り・飲食業の売上高は1兆5000億人民元(約25兆5000億円=2017年10月15日現在の為替レートで計算。以下同)に達し、連休期間中の1日当たり消費額は前年同期比で10・3%の伸び率を示したという。

中秋節をターゲットとした月餅ギフトの商戦、そして「十一」連休の出国ラッシュを過ぎると、今度は中国最大のオンライン・ショッピング販促イベントである

「双十一」(11月11日)が到来する。「双十一」という呼称は11が2つ並ぶことに由来する。11月11日はもともと「光棍節(グワングンジエ)=独身の日」と呼ばれ、シングルの身分に甘んじる人たちが集い、交際する日(「1」が4つ並ぶことに掛けられている)として位置づけられていた。1993年、南京大学の学生4人が発起して始まったとされている。

一方、「双十一」は、BtoCの「Tモール(天猫商城)」、CtoCの「タオバオ(淘宝網)」を運営する「アリババ(阿里巴巴)」グループが命名した呼称だ。当初は独身者が自身にご褒美の品を買う記念日にしようというのがイベントの趣旨だった。しかし、それがオンライン・ショッピング全般を喚起するアクティビティーへと変化を遂げるなか、いつの間にか「光棍節」は死語同然となっている。

「双十一」は今年で9回目となる。この日、アリババ・グループだけではなく、家電に強い「京東(ジントン)商城」や蘇寧電器(家電量販店)の傘下にある「易購」なども販促キャンペーンを実施することから、中国全土がショッピング熱に染まることになる。

「双十一」1日でどれだけの売買取引が行なわれるかと言えば、これが桁外れの規模である。アリババ(阿里巴巴)グループについて見ると、2016年に記録した金額は1207億人民元(約2兆519億円)となっている。参考までに日本の農林水産省の平成30年度一般会計概算要求額が2兆525億円、楽天が発表した連結売上収益は7819億1500万円である。この金額がいかに驚天動地の域にあるかが分かるだろう。

取引額で上位を占めた商品アイテムは、家電・スマホ・アパレル等となっており、「蘇寧易購」「シャオミ(小米)」「荣耀(ファーウェイのスマホ)」「ハイアール」「「ナイキ」「ユニクロ」「ThreeSquirrel」「魅族(Meizu)「美的(Media)」等のサイトが存在感を示した。日本ブランドのアイテムとしては、「大麦若葉青汁」や「馬油」、あるいは「龍角散」、参天製薬やロート製薬の目薬、花王や大王製紙の紙おむつ、明治乳業などの粉ミルク、コーセーの洗顔フォームやファウンデーション、パナソニックの音波振動歯ブラシ、カシオの腕時計、ラーメン等に人気が集まったのが記憶に新しい。

なお、「双十一」が過ぎると、次には12月12日の「双十二」が待ち受ける。「双十一」の規模には及ばないが、こちらも大型販促イベントとして定着しており、淘宝(タオバオ)や京東商城では、キャッシュを発給したり、優待キャンペーンを実施するなど、消費者への利益還元を図っている。

 

2大ネットモールの競争が激化

日本でネットモール市場がアマゾン対楽天といった図式で語られるように、中国にはアリババ陣営(タオバオおよびTモール)と京東商城の2大勢力がある。そして、SNSにおける新浪の「ウェイボー(微博)」対テンセント(騰訊)の「WeChat(微信/ウェイシン)」、スマホ決済における「WeChat ペイ(微信支付)」対「アリペイ(支付宝)」といったライバル関係が、これら2つのモールの集客中国にはアリババ陣営(タオバオおよびTモール)と京東商城の2大勢力がある。そして、SNSにおける新浪の「ウェイボー(微博)」対テンセント(騰訊)の「WeChat(微信/ウェイシン)」、スマホ決済における「WeChat ペイ(微信支付)」対「アリペイ(支付宝)」といったライバル関係が、これら2つのモールの集客ちなみに、「ウェイボー」から「京東」、「WeChat」から「Tモール」「タオバオ」へのリンクはできないのが現状だ。

かつてタオバオでは、「タオバオ直通車(淘宝網のリスティング広告、PPC広告/クリック報酬型広告(pay per click)」が一世を風靡したが、スマートフォンなどモバイル端末からのアクセスが主流になるなかで、その影響力は低下している。さらに、ニセモノがはびこるCtoCから品質に比較的信頼がおけるBtoCへと、中国の電子商取引の牽引役がシフトしてきたのが近年のトレンドだ。

行政側にとっても、CtoCよりBtoCの取引が活発したほうが税収確保のうえで都合が良い。キャッシュレス社会が急激なスピードで実現したのも、ニセ札の流通を本格的に取り締まるのは難度が高いが、オンライン上の取引なら一目瞭然で、税の取りこぼし防止が容易だと国が判断したからではないだろうか。

ちなみに、効果的な集客方法として近年脚光を浴びているものに「網紅」がある。「網絡」(インターネット)と「紅人」(人気がある人)を組み合わせた造語であり、ネット上の有名人を指す。「網紅」は一般消費者の購買意思決定に大きな影響を与えることから、その活用が企業各社によるマーケッティング活動の成敗を分けることもある。

宅配「最後100メートル」のハードル

「春運」(旧正月シーズンの帰省ラッシュ)や出国ラッシュに沸く「十一」が「人流」のピークなら、「双十一」は「物流」のピークだ。したがって、「双十一」は華やかな販促キャンペーンで彩られる「光」の部分もあれば、裏舞台では” 陰” の部分が存在する。膨大な数の小包を短期間に処理することで配達遅延やアクシデントが発生するケースも珍しくないようだ。

10月12日にニールセンと阿里研究院が北京で発表した合同レポート「宅配の最後100メートルのサービス趨勢報告」の概要を報じた各メディアの記事によると、2017年の「双十一」期間中に扱われる小包量は10億個に達するという。

ちなみに、「最後100メートル」とは、配達先に荷物が届けられる最終プロセスを指し、小包量の増加に追いつかないマンパワーの実状を物語っていると言えよう。2016年に全国で扱われた宅配小包の総量は313億個、2020年には700億個に達すると予測される。宅配員が扱う小包の量は1日平均で150から200にも及ぶなか、購入者が自宅や仕事場を不在にしているために荷物の受け渡しができないケースが多々ある。宅配会社にとって「最後100メートル」が大きな関門とされる所以だ。

とくに大都市の女性消費者は多くが中産階級のホワイトカラーに属し、オンライン・ショッピングの利用頻度が高い一方でプライバシーや安全に対する関心も強い。それゆえマンションやアパートの管理部門やガードマンを信頼せず、専門的な受け取り代行サービスや宅配ボックスなどの利用ニーズが高まることになる。

たとえば、「菜鳥駅站」というアリババ・グループが展開する荷物代理受取り所の加盟店が提供するサービスの利便性や規範化された仕組みが好評だ。75%の利用者がサービスに満足していると報じられている。

「双十一」に関わるホットな話題としてにわかに注目を浴びているのが「宅配配達料」の値上げ問題だ。値上げが報じられているのは順豊速運を除く圓通速逓、中通快逓、申通快逓、韵達快逓等、フランチャイズ展開を行う宅配会社で、各社は昨今、配達費の最低規準を1件2元(=約35円。以前は0・5元=約8・6円)に引き上げる内部通達を行なったという。日本でもヤマト運輸や佐川急便による運送料引き上げが大きなニュースとして扱われているが、運送コストの増加、労賃の上昇、原材料価格の値上げ、配送1件当たりの利益が年々低下するといった事情は、日本・中国に共通したものだと言える。

中国の宅配市場は甚大な規模を有する一方でまだ規範化の途上にある。代理受け取りサービスのほかにも、チルド物流や貴重品の扱い、定時配送といった消費者のニーズを充足していくことが今後の課題であり、消費者に向けた価格設定もより細分化され、体系化が進んでいくのではないだろうか。

 

日本ブランド製品の商機は中国にあり(下)

 

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近藤修一(こんどう・しゅういち)

「Whenever Dalian」編集長

中国・大連市在住。静岡県出身。信州大学卒。1994 年、上海に語学留学。1998 年、現地パートナーとともに日本人向けパソコン・スクールを上海で開始し、教育、ハード・ソフト販売、サポート等の業務に携わる。2002 年10 月に中国全土でフリーペーパー事業を展開するメディア漫歩グループに入社、ビジネス誌「Whenever Biz CHINA」(現名称)の制作等に携わる。2010 年2月に同社を退社。中国メディアの日本語電子媒体「インサイト・チャイナ」編集長、ヤンゴンのタウン誌「ミャンマー・ジャポン」編集長、フリーランサーとしての活動(翻訳・調査業務等)などを経て、2017 年4月より現職。

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