日本ブランド製品の商機は中国にあり(下) -たった1日で2兆円が動く「双十一」

 

日本ブランド製品の商機は中国にあり(上)

 

中国で売れる商品の条件

先にオンライン・ショッピングで人気を集めた日本商品をいくつか紹介したが、嘆息を漏らしたくなるのは、かつて栄華を誇った日本製デジタル家電がすっかり色を失っていることだ。

「十一」を日本で過ごした筆者は大手家電店でスマホを購入したが、後悔の念に駆られるまでにあまり時間は要さなかった。中国で流通しているアイテムのほうが総じてスペックが高いことに気づいたからである。2017年10月時点でデュアルレンズ搭載、2000万画素、RAM6GB以上、メモリ容量64GB以上という性能値は中国ではさほど珍しくない。しかし、日本であればハイエンドに位置づけられる部類ではないだろうか。さらに、ファーウェイ(華為)は人工知能(AI)を内蔵する「Kirin 970」チップを搭載した最新モデル「Mate 10」も発表している。そのほか、OPPOやVIVO、シャオミ(小米)など中華ブランドによってスマホ市場は席巻されており、海外ブランドが参入できる余地はアップルを除くと全くないというのが実感だ。

そもそも、「90後」(1990年代以降の生まれ)と呼ばれる若い世代の中国人は、一言でいえば、「自己中」である。あるいは年長の世代と比較しても、より「ナルシスティック」な性格を多分に備えていると言えよう。自己アピール力に長け、刺激的な体験を求め、ゴシップネタや2次元の世界に関心を抱く傾向があるとされ、女性は自分撮りした画像を「美白」機能で修正してSNSに頻繁にアップしていく。そんな用途でのニーズを満たす上で、一眼レフのカメラよりも自分撮りが便利なスマホカメラの性能向上に関心が行くのは必然だ。解像度が低かったり、十分なメモリ容量を備えない製品は最初から淘汰されている。

「メイド・バイ」ジャパンであれ、「モディファイ(改良)」「ミニマナイズ(縮小化)」といった日本のお家芸はいまだ健在だとしても、日本ブランドに訴求力があるのはむしろ「健康と美の追求」「個性の演出」「美味しさと安全性の兼備」といった、デジタル家電以外のフィールドだと言えそうだ。「ヒューマナイズされ、細部に渡った配慮」が施され、多岐にわたる選択肢が用意されているところに中国の消費者は高い関心を向ける。

この点は、売り込み側である日本の企業側も承知済みなのだろう。日本の食や日用品、あるいは高齢者向けサービスをテーマにした展示会や商談会が実施されれば、代理業者探しや貿易パートナーとの提携、投資提携の機会探しを目的として多くの企業が出展の呼びかけに応じる。

たとえば、大連では、日本商品に特化した中国唯一の展示販売会として「大連日本商品展覧会」が開かれるが、今年は9月15日から17日の3日間で22の都道府県から214社もの企業が出展し、電子医療機器、バイオ、高齢者向け用品、電子医療機器、化粧品、工芸品、食品や日用品などの展示販売を行なった。来場者は6万1000人を記録するなど盛況だった。開催初日が「大連日本地方銀行聯合商務商談会」との併催だったこともシナジー効果を生んだと言えそうだ。

 

日本企業が新たなライフスタイルを生み出す

「アフリカに靴を売りに行った営業マン」という逸話がある。市場の見極めかたや、参入のタイミングのあり方を考える話として扱われ、ビジネスパースンなら誰もが耳にしたことがあるだろう。

そのうえで「コーヒーをいかに飲ませるか」というテーマも面白いと思う。茶文化が発達してきた中国では、改革開放後もコーヒーがすぐに日常的な飲み物となることはなかった。1990年代末にスターバックスが進出した後も、しばらくはプチブル気分を味わうことのほうに関心が向けられ、店頭でソフトドリンクや果汁をオーダーする消費者が少なくなかったと記憶している。

かりにコーヒーを注文しても、目いっぱいに砂糖を混ぜて飲むケースも目立った。おそらく国が発展途上のフェーズにある段階では人びとは甘い味覚を求めるきらいがあるのが万国共通の現象なのだろう。1990年代半ばにサントリーがペットボトルのウーロン茶を中国で販売し始めた当初、店頭で砂糖入りタイプのものをよく見かけたものだ しかし、人の嗜好は変わる。今日では砂糖入りウーロン茶もマイナーな存在になった印象がある。味覚が成熟したとは言わないが、経済発展とともに健康への関心が高まるなか、「無糖」を求める層が増えていくというのが自然な流れではないか。

いまでこそ大都市ではスターバックス、コスタコーヒーの看板を至るところで見かけるが、1990年代半ばに日本の大手スタンド・コーヒーチェーンが市場調査の末に参入を断念した経緯がある。中国におけるコーヒー市場の位置づけは、長い黎明期が続き、近年になって爆発的な成長期に入ったと見たほうが良さそうだ。2016年の市場規模は147億9300万人民元(約2514億円)、それが21年には220億6000万人民元(約3750億円)に達すると予測されている。

こうしたなか、「U.COFFEE FOODS SINCE.1925 KOBE」のロゴでブランド展開を行なうウエシマ・コーヒーフーズはこのほど、「シングル・オリジン」と独自開発の「石釜焙煎コーヒー」の中国での販売展開に打って出た。「友誼商城」での店頭販売のほか、オンライン・ショップを通して「U.COFFEE」(中国名:優咖啡)ブランドの浸透を図っていくという。

「Uコーヒー」の上島一泰代表取締役社長は、ブラジルの「コーヒー鑑定士」(クラフィシカドール)の正規資格を有するほか、2003年に神戸に開設したブラジル名誉領事館の名誉領事の肩書を持つなど、業界でも異色の経営者だ。それだけにコーヒー文化の伝道師としての矜持を胸に、新たなライフスタイルを提案していこうという使命感も強いようだ。大きな市場フロンティアに挑むなかで、「ライバルはネスカフェ」(上島社長)と意気が揚がる。

奇しくも中国の「十一」(10月1日)は、国際コーヒー機関が承認する「コーヒーの日」に当たる。来年、この記念日を「双十一」(11月11日)のようにコーヒー消費を喚起するイベントとして仕掛けていく
――そんな発想もありかも知れない。

 

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近藤修一(こんどう・しゅういち)

「Whenever Dalian」編集長

中国・大連市在住。静岡県出身。信州大学卒。1994 年、上海に語学留学。1998 年、現地パートナーとともに日本人向けパソコン・スクールを上海で開始し、教育、ハード・ソフト販売、サポート等の業務に携わる。2002 年10 月に中国全土でフリーペーパー事業を展開するメディア漫歩グループに入社、ビジネス誌「Whenever Biz CHINA」(現名称)の制作等に携わる。2010 年2月に同社を退社。中国メディアの日本語電子媒体「インサイト・チャイナ」編集長、ヤンゴンのタウン誌「ミャンマー・ジャポン」編集長、フリーランサーとしての活動(翻訳・調査業務等)などを経て、2017 年4月より現職。

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