アジアの本はこう読め!

第7回 金がなくても不動産王になれる

外国人がこんなに簡単に土地が買える国は日本だけかもしれない。

100万円以下で一戸建てを買う

昨年、北海道小樽市で古民家を買った。3年ほど前から探していたのだが、理想の物件を見つけたのだ。JRの小樽駅からバスで10分。坂の上にある木造モルタル2階建て土地付き。築年数こそ35年だがメンテナンスはされていて、すぐにでも入居可の状態。建物は100㎡余りで土地は300㎡。窓からは小樽湾が見下ろせる絶景だ。それがなんと70万円。信じられないだろうがホントの話だ。

ではわたしの70万円一戸建て土地付き古民家というのは特殊な例だったのか。いやいやちっとも特殊な例ではない。ここ数年、小樽は古民家が投げ売り状態なのだ。ネット上の不動産サイトを覗くと、小樽の中古一戸建て物件は40万円台から100万円台までドカドカと掲載されているばかりではなく、毎週のように格安物件が新規登録されちまっているのだ。それもほとんどが市街地からバスで10分前後の物件ばかりである。小樽駅から徒歩4分で40万円なんて物件を発見した時には目を疑ったものだ。すでに物件を購入した後だったので手は出さなかったが、これが中国人だったら即買い間違いなしだったろう。いや。1週間もしないうちに不動産サイトからは姿を消していたから、案外中国人が買ったのかもしれない。

 

変化する中国人観光客の志向

中国人インバウンドに関する書籍が多いジャーナリスト中島恵が書いた『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)を興味深く読んだ。爆買いブームが落ち着いた中国人訪日観光客の傾向と動向を解説した本だ。

中島によると昨今の中国人訪日観光客は、これまでの団体爆買い旅行客ではなく、日本の文化に深く興味を持つ富裕層個人旅行者が中心となっているのだという。たとえばこれまでの定番であったディズニーランドよりも、石川県の高級旅館加賀屋に泊まることや、根津美術館や唐招提寺を訪れることを好むのだそうだ。ある大学教授などは、映画監督の小津安二郎の大ファンであるということで、小津が定宿にしていた茅ヶ崎館を訪れ、大感激したことをブログにつづったりもしているそうな。これまでの中国人観光客とは大きく好みが違う人々が主流となっているらしい。

食についても「食べる」から「体験する」に興味が移行しているそう。料理教室のABCクッキングは中国人旅行客の和食作り1日入学が人気になっているらしい。

中でも興味深いのは訪問場所が地方都市に分散していることで、農村などでゆったりと贅沢な時間を過ごすことを好む観光客も増えているそうだ。かつて海外旅行といえば農協の短期爆走団体旅行か、ネーちゃんオバちゃんたちのブランド買い漁り旅行が話題に上った日本人だったが、いまはそんな姿もめったに見なくなったように、中国人旅行者も熟成の段階に入ったのかもしれない。

外国人に狙われる日本の不動産

わたしが古民家を買った小樽市は毎年2000人もの人口減少に悩んでいる。坂が多いうえに冬場の雪の多さもあって、年寄りたちが逃げるように隣の札幌市に出てゆくらしい。観光客は訪れるが札幌が近いせいで泊り客が少なく日帰りばかりだ。経済も停滞。だから格安の古民家が増え続けている。

しかし昨日、地元TVで面白いニュースを見た。小樽の古民家を買う中国人が増えているのだという。世界的リゾート地となった北海道ニセコ町も、オーストラリア人と中国人が安い土地を買い、発展させた。熟成した中国人が買う小樽の古民家。いまなら貧乏人でも不動産王になれる町。うん! 買いですぜ、みなさん!

 


黒田信一(くろだ・しんいち)

フリーライター

1955年北海道生まれ。札幌で映画会社に勤務していた時、同僚たちと映画館建設を決定。苦闘の末、1982年、札幌に48席のJABB 70 HALLをオープン。映画館経営の傍ら映画雑誌『BANZAI まがじん』を創刊し編集長に。1992年、映画館を閉館、雑誌も廃刊。ライターに転向してアジアを中心にうろつく。2004年、ラオスでカフェを開業。2007 年に閉店し帰国、ライター業に復帰する。スポーツから雑記まで幅広く執筆。本の雑誌別冊『文庫王国』のノンフィクション部門や北海道新聞の新刊書評なども担当。主な著作には、『カフェビエンチャン大作戦』(本の雑誌社)『アジア大バカ珍道中』(情報センター出版局)『ア ジアバカうまレシピ』(情報センター出版 局)『インド人、大東京をゆく!―なんと、アジアで最も熱い都市が日本のなかにあった』(青春出版社)『ルチャリブレがゆく』(講 談社文庫)『突撃!グフフ映画団』(講談社文庫)などがある。

 

 

 

 

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