カフェから見るアジア Vol.10

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第9回  シルクロードからオアシスが消えた!?

トルファンに居る外国人の憩いの場はオープンエアのカフェだった。

 

ウイグル人の間に漂う不穏なムード

近年の新疆ウイグル自治区では、大規模暴動とか、爆弾テロが頻発していますね。

トルファンを訪ねたのは、20年ほど前のことですが、あの頃もウイグル人と漢族の間には、不穏な感じはありました。ウイグル語も漢語も分からない私が感じるほどだから、かなりのものですよ。たぶん。

さて、トルファンのメイン・ストリートから少し離れた場所。外国人旅行者の常宿だったトルファン賓館の真向かいに、オープンエアのカフェがありました。ヒマを持て余している我々は、よくそこを溜り場にしておりました。

当時の中国は、上海などの大都会でも、喫茶店は、ほとんど見かけなかったです。まだ、文化大革命とかの残香も漂っていた時代でしたから、喫茶店もブルジョア的なものとして敵視されていたのかもしれません。

外国人には居心地が良かったウイグル人の世界

しかし、ここはウイグル人の世界。シルクロードのオアシスです。辛い砂漠の旅をしてこの地に辿り着いた隊商は、茶館で飲む一杯の茶で疲れたココロと体を癒やすもの。その伝統が生きているのでしょう。この店の名前も「Oasis Cafe」なのですね。

店主もウエイトレスも、みんなウイグル人です。先祖代々、この地で旅人に茶をふるまいながら生きてきたのかもしれません。そう思うと、なおさら感慨深いですね。

客席の頭上は葡萄棚になっていて、繁る葉が日光を遮り心地良い涼風だけが伝わります。

ああ、居心地の良い場所です……。が、こんな場所で無粋ですね、白人の旅行者が、中国の悪口を大声でまくし立てています。

まあ、気持ちは分からないでもない。当時の中国では、ホテルも食堂も無愛想で官僚的で融通が利きません。ホスピタリティーの欠片もなく、客を客とも思わない。かくいう私も、1日3回は確実に怒鳴り声をあげて怒ってましたよ。

カフェは反政府運動のアジト?

しかし、ここは「オアシス」です。旅の苦難も、殺伐とした戦いのことも忘れて、コーヒーの芳香に心癒されながら過ごす場所。

気を取り直して、
「コーヒー、おかわり」
注文したつもりが……誰も聞いていない。

店主やウエイトレスまでが、白人旅行者たちと一緒に、中国政府や漢族の悪口を声高に叫んでます。もう、こっちのことは眼中になしですね。

旅行者の不満から、話はもっと過激な政府批判にまでイッちゃってるような。
さっきまでの静かで心落ち着くオアシスの雰囲気はなく、反政府組織のアジトみたいな……。

はあ、困った。帰ろうか。そんな感じだったのを、覚えています。

 


青山 誠(あおやま・まこと)

フリーライター

島根県出身。大阪芸術大学卒業。旅と歴史を主なテーマに『旅の手帖』『散歩の達人』『別冊宝島』など数多くの雑誌や書籍を活動の場としている。著作には『港町に行こう!~歴史と人情とうまい魚を求めて~』(技術評論社)『江戸300藩城下町をゆく』(双葉新書)『インターネットビジネスの手順&儲け方』(すばる舎)『ツアーコンダクター一度はやってみたい!こんな仕事』(すばる舎)『バンコク恋愛事情愛タイ!』(双葉社)『戦術の日本史』(宝島sugoi文庫)『坂野惇子―子ども服にこめた「愛」と「希望」』(中経文庫)などがある。

 

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