グローバルビジネス時代のクラウド会議システム活用術1

【第1回:テレビ会議とウエブ会議のいいとこ取りした最新システムとは?】

グローバルビジネスにおいて、日本企業はこれまでも度々、意志決定におけるスピードの欠如を指摘され続けてきた。確かに、欧米企業におけるトップダウン体質は言わずもがな、例えば、日本企業よりも企業内でのコミュニケーションの対立を回避する傾向があると言われる中国においても、経営判断については老板(ラオバン)の意見が絶対であり、鶴の一言で方針は瞬時に決まる。書類をチェックすべき上司が列を成す日本企業の体質に、首をかしげる人々が多いのはごもっともであるし、当然、改善すべきポイントだといえる。

ただし、こうした日本企業の体質を早急に欧米式に転換すべきだという意見は少々飛躍しすぎているように思う。コンセンサスによる意志決定を優先するという日本企業の体質は、ドラッカーがその名著『マネジメント』でも取り上げていたポジティブな特徴であるし、日本の製品、サービスが世界中で高い評価を得ている要因にもなっているからだ。したがって改善すべきは企業体質そのものではなく、コンセンサスを素早くまとめるための工夫であり、他の外国企業に劣らない意志決定のスピードを身につけることである。それを具現化するのが、ズバリITの活用だ。

ITと聞くと、少し及び腰になってしまう人も少なくないようだが、今やITはビジネスに欠かすことができないツールである。例えば、電子メールはすでに電話に取って代わる存在であり、「突然の電話での連絡は相手に失礼」といったビジネスマナーすら確立されているほどだ。しかし、このメールの使い方ひとつとっても、欧米では重要な経営判断がメール一本で済まされることが多いのに対し、日本でのメールの活用はより限定的である。なぜなら日本語が曖昧さを兼ね備えた言語だからであり、ニュアンスの捉え方により、書き手の意図しない受け取り方をされる場合があるからだ。したがって、日本においてメールの使い方はどうしても副次的になりがちで、大事な決定事項は結局、会議で決定されることが多い。これでは過酷な国際競争の中で、あまりにも不利だといえる。

テレビ会議のメリットと問題点

そこで、メールに取って代わる、よりダイレクトにコミュニケーションが図れるツールが日本企業には必要となる。そこで注目したいのがテレビ会議システムだ。画像を介したコミュニケーションは、シャイな日本人には不向きという意見もあるが、思うにむしろ逆だ。表情や仕草は時に言葉以上に雄弁であるし、日本語独特な曖昧な表現も声にすることでより具体的に伝えることができる。何より日本人は、触れあいのコミュニケーションを大切にする。テレビ会議システムが電話やメールに比べ、より濃密にコミュニケーションがとれることは言うまでもないだろう。

しかし、そんなテレビ会議システムにも大きな欠陥がある。ズバリ、コストの問題だ。例えば、これまでのテレビ会議システムは導入するだけでも100万円以上、運営費も月額数十万円かかっていたと言われる。これほどまでに高価なのは、ひとつにMCU(Multipoint Control Unitの略。多地点接続装置のことで、複数台同時接続を可能にしている)など独自のソリューションを採用していること。もうひとつは、ネットワーク構築のために専用線を施工したり、専用IPを取得するなど、インフラ構築に投資がかかることだ。またプライベートネットワークを構築するが故、普段のメンテナンスやアップデート作業などを行う専門の技術スタッフを雇用する必要もある。「テレビ会議システムを導入するくらいなら出張した方が遙かに安い…」と嘆息する気持ちもわからなくはない。

ウエブ会議のメリットと問題点

もうひとつ、テレビ会議システムに似たコミュニケーションツールに、ウエブ会議システムがある。ウエブ会議システムの大きな特徴は普段使用しているインターネット接続環境と、普段使用しているデバイス(パソコンやスマートフォン、タブレットなど)があれば利用できる点。具体的には、Skypeがその代表だが、フリーウェアのため、初期費用も維持費もかけずに利用することができるのが特徴だ。

ただし、そのクオリティは当然、高コストのテレビ会議システムには劣る。例えば、同時接続は10台までだし、画質のクオリティはデバイスに附属する内蔵カメラの性能に依存することから、場合によってはよく顔が見られないというウエブ会議としては致命的な問題も発生する可能性がある。また、Skypeは特に3台以上の多拠点接続をしている際に音声や画像が遅延したり、途切れてしまったりといったトラブルが発生することがあるが、これはP2P(Perr to Perrの略。サーバ・クライアント間ではなく、ユーザー同士で直接データをやりとりする技術)を採用しているため。つまり、ユーザーの周辺環境に通信品質が左右されやすく、特に東南アジアの通信インフラが整っていない地域からウエブ会議に参加する場合に起こりやすいといえる。ほかにも、普段使用しているデバイスから利用することで、プライベート用と仕事用のアカウント管理の切り分けが難しく、セキュリティやプライバシーの問題が起こる可能性も高い。

 

クラウド会議が問題点を払拭する

したがってテレビ会議システムの持つクオリティと、ウエブ会議システムの持つ手軽さの両立、これがフェイス・トゥー・フェイス・コミュニケーションツールの大きなテーマであった。そこで最近登場しているのが、これらのハイブリッド版ともいえるコミュニケーションツールの登場である。その多くはクラウドを利用していることから、ここでは便宜的に“クラウド会議システム”と名付けることにする。

クラウド会議システムの大きな特徴は、MCUや専用のアプリケーションなど、テレビ会議システムに必要だった技術を、インターネット回線を介してクラウド上から提供していることだ。つまりユーザーは、専用線の敷設を行うことも、専用IPの取得もする必要もなく、ウエブ会議同様、普段のネット環境を利用し、テレビ会議同等の機能を享受することができる。MCUを使っていることから同時接続台数も増えるし、P2PではないからSkypeほど周辺環境に左右されることもない。何より、メンテナンスやアップデートもクラウド上で行われるから、常に最新の環境を無意識に利用できるのが嬉しい。

また、デバイスの性能に依存していた画質や音声の問題も、テレビ会議のようにカメラやスピーカー、マイクを提供することでカバーしている。これらのコストは当然発生するが、クラウド会議システムを提供している業者の多くは、製造コストを抑えることで、低価格化を実現している。

 

会議以外のツールとして利用も

なお、クラウド会議システムはウエブ会議システムの技術をベースに、テレビ会議システムのクオリティを実現しているため、当然、ウエブ会議システムの特徴であった汎用性を持ち合わせている。すなわち、デバイスを選ばないということだ。これは前述の内容に矛盾しているように思えるが、そうではなく、メインの会議室では専用機器を使用しつつも、外出先からタブレット等の既存のデバイスを用いて、会議に参加できることを意味するのである。すなわちクラウド会議システムは、よりフレキシブルなコミュニケーションツールだといえる。

そのフレキシブルさを利用し、会議以外の新たなビジネスツールとしても可能だ。例えば、遠隔地のクライアントに対するセールスやアフターサービスの提供。クライアントに臨時で利用できる会議IDを伝達することで、遠隔地間であってもフェイス・トゥー・フェイスのセールスが可能に。こちらが専用機器を利用すれば、相手には高クオリティの画像・音声を届けられるし、画面共有機能やプレゼン機能も利用できる。

また、デバイスを選ばないという特徴を生かし、セミナーや研修などの一斉配信にも利用できる。基本、セミナーや研修は伝達者と視聴者の関係が成り立つワンウェイのコミュニケーションであるから、視聴者用URLを伝えるだけでいい。プレゼン資料の配付などは、クラウド会議システムの持つ機能で利用できるほか、配付資料の著作権を鑑み、閲覧のみに指定したり、ダウンロードできても改変できないよう設定することができるツールもある。

このように様々なビジネスシーンで活躍できるクラウド会議システム。導入することで、海外でのビジネスをより円滑に推進していくことが可能になるはずだ。

 

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