香港でビジネスチャンスを探そう Vol.11

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第11回 英国統治の名残と日本文化の波

1997年7月1日の中国返還まで香港が英国の植民地だったことは誰もが知るところです。それから22年近く経った今、英国の名残はどの程度残っているのでしょうか? そして、じわじわと侵食を進めているもう一つの文化とは──。市民の目線から記してみようと思います。

 

香港社会の根っこにある英国

香港のガイドブックを開くと、必ず載っているのが「アフタヌーンティー」と「植民地時代の風情を残す美しい建造物」です。実際、多くのホテルやレストランでは、本国に勝るとも劣らないアフタヌーンティー・メニューを提供し、観光客だけでなく地元客をも魅了しています。

また、セント・ジョンズ教会(St.John’s Cathedral)はじめ本格的な西洋建築も数多く残されており、東西文化の共存を具現化した街並みは香港ならではのものです。英国を訪れたことのある方ならば、信号・道路の路面表示や2階建てバス、「Marks & Spencer」(英国系百貨店)にも親近感を覚えるのではないでしょうか?

また、ビジネス目線で見てみれば、今もなお法律・金融システムなどに英国流が引き継がれていますし、第9回「香港で使われている言葉」でも触れましたが、未だに英語が当地の公用語となっています。これらは身近で感じられる英国統治時代の置き土産として当面揺らぐことはないでしょう。

 

香港の若者はニッポンが大好き

と、昔日の名残を並べたところで、筆者がこの15年ほどで実感している異文化流入があります。その出処は、ずばり日本です。第4回「香港における日系企業の活躍」でも述べましたが、特に2000年以後の日本文化の流入スピードはすさまじいものがあり、中でも若者文化の面においてはすでに圧倒的と言っても過言ではないでしょう。

テレビを付ければ日本のドラマが流れ、映画館では作品上映だけでなく日本アーティストのライブビューイングも頻繁に行なわれています。外食を通り越して、今やコンビニとスーパーでも当たり前に日本のお菓子が売られており、いざ日本へ旅行するとなれば、ものすごい情報収集力に驚かされることもしばしばです(知人から聞いた話ですが、「移転する前にもう一度、築地魚市場を見たいから」と東京へ向かった香港女性もいたそうです)。


ちなみに、一連のポケモンGOブームの際も、そこかしこで「精霊(ポケモン)」を探す「訓練員(トレーナー)」が出現しました。また余談ですが、香港ではなぜかサッカー日本代表のユニフォームを着た人をよく見かけます。

なぜここまで日本好きな若者が増えたのか、正直なところ日本人である筆者もよく分かりません。英語が話せるのであれば、英語圏の文化に気軽に接することができるのでは? とも思うのですが、考えられる理由とすれば以下でしょうか。

 

日本文化に感じるドリーム

●コンテンツの豊富さ──(食事・ショッピング・美容・アニメ・アイドル・キャラクター・ゲーム・ドラマ・舞台などなど)
食べ物など生活に密着した分野はビジネス展開しやすいですし、題材が多ければメディアミックスの可能性も広がります。結果、多くの若者が日本の凄さに気づいたのでしょう。

●地理的にちょうど良い距離感
興味のある国であれば自分の足で歩いてみたいと思うものです。その点、香港─日本間はちょっとした逃避行にぴったりの距離です。もはや香港人の「国民的行事」となった海外旅行に、打ってつけの目的地と言えるでしょう。

●同じアジア圏にあり、ほど良い親和性がありながらも、夢とファンタジーの世界を期待できる
個人的見解ですが、香港人は外から入ってくる文化に対し非常に敏感です。狭い土地なので当然と言えばそれまでですが、筆者はここに別の理由もあるのではないかと思っています。

それは「香港・中国製でない物を求める」感性です。

例えばキャラクターにしても、香港でもそれなりの地場キャラクターやマスコットはいるのですが、実際に人気なのは、やはり「ドラえもん」「キティちゃん」「ジブリ」などなのです。

どうも香港人は「外から来た面白そうなもの」に「夢」を見出す傾向にあるようで、日本はその格好の原産地なのでしょう。

150年超の植民地時代に根を張った英国文化と中華文化との併存を図る香港。日本文化の流入も進み、今後どのような景色を見せるのか興味深いところです。我々としては日本が末長く「夢の国」でいられるよう、願うばかりですね。

香港を訪れる機会があれば、ぜひ英・中・日の異文化ミックスを探して触れてみてください。

 


川島響子(かわしま・きょうこ)

日系コンサルティング会社マネージャー

北京に留学し、日本でのOL経験を経た後、再び中華圏へ。日系工場・貿易会社等に勤務し、現場通訳から、人事・労務、資材調達、コーディネーター、駐在員のお世話まで、あらゆる業務を経験する。現在はコンサルティング業に従事。中国・香港在住通算13年超。香港永住権保持者。