香港でビジネスチャンスを探そう Vol.3

第3回 人事・労務の特徴と基礎知識

 

法人設立の方法をご説明した前回に引き続き、香港ビジネスの基礎をご紹介しましょう。第3回目の今日は、従業員採用を考えている経営者の方には知っておいていただきたい、人事・労務の特徴と基礎知識です。

 

雇用契約は自由に決められる

香港における人事・労務の大きな特徴として、雇用契約内容は労使間で自由に 決められる点があります。日本の労働基準法に当たる「Employment Ordinance(以下「雇用条例」とします)」に最低限の条件が定められていますが、それに違反しない限り、双方同意の上であれば、どのような契約でも締結することが可能なのです。

 

例えば、「通勤交通費支給なし。残業代支給なし」としても、雇用条例で規制されていませんので、違法ではありません。

 

人使いの荒い印象を受けるかも知れませんが、これには理由があります。近年変わりつつあるとはいえ、日本では未だに新卒入社・終身雇用が主要モデルになっていますが、香港は違うのです。多くの人は新卒入社の職場で数年間キャリアを積むと、より好条件の職場へステップアップしていきます。自分の実力に待遇が釣り合わないと感じたら転職という手段がありますので、「労使双方、平等に選択権がある」とも言えるでしょう。もちろん、スキルアップのために努力を惜しまないのは言うまでもありません。

 

香港で人材を採用する場合は、まずこの点を念頭に入れておくといいでしょう。

 

雇用主が注意すべきこと

それでは以下、具体例を挙げながら質問に答える形でご説明いたします。

 

Q:ローカル事務員を採用したいが、どう募集すれば良いでしょうか?

A:エージェントを上手く活用しましょう。日本語が話せる人材を希望する場合 は特に有用です。日系業者が複数あり、日本人の斡旋同様、日本語が話せるロー カル人材の紹介にも力を入れているようです。紹介料は発生しますが、語学力チェック等を実施後紹介してくれますので効率良く選考できるでしょう。なるべく費用を抑えたければ、フリーペーパーに広告を出す方法もあります。

 

Q:正社員・アルバイト・パートの区別はあるのでしょうか?

A:日本ほど明確な区別はありません。「雇用条例」によると、最低限の条件(最 低賃金等)は労働時間に関わらず、すべての従業員に適用されます。そして「継 続的に雇用されている従業員」については、さらに有給休暇や傷病手当等の福 利厚生条項が適用されます。「継続的雇 用」の定義は「同一雇用主の間で4週間以上、週18時間以上就労していること」とされており、この条件に当てはまる場合、 雇用条例上、正社員・アルバイト・パートの区別は発生しないことになるのです。

 

Q:「W-PAY」って何ですか? ボーナスと何が違うのでしょうか?

A:「W - PAY(ダブルペイ)」とは、中華圏における一つの慣習で、月給の1か月分を旧正月前後に、通常月給に加算して支給するものです。義務ではありませんが、契約の際には注意が必要です。と言うのも、ダブルペイについては雇用契約に「あり」と明記した場合、必ず支払わなければならないからです。上乗せ支給的なイメージからボーナスと混同されがちですが、ボーナスは契約書に「業績による」と明記した場合、ゼロ支給もあり得るのに対し、ダブルペイはそれができません。つまり、毎年必ず支給できる確信がある場合のみ契約書に盛り込むべきと言えます。ただし、実情として大多数の企業がダブルペイを実施しています。採用の際は最初から13か月分の支給額を想定し、給与決定するのも一つの方法かも知れません。

 

Q:採用したものの、能力が伴わず、業務がこなせていない。解雇はできるので しょうか?

A:残念な結果ですが、どの企業でもありえる事象です。香港では合理性を証明 することができれば、解雇は原則認められます(実務的には通知期間等の規定が ありますので、詳細確認が必要です)。「雇用条例」では解雇の正当な理由として下記5点を挙げています。

 

(1)従業員の行為に起因するもの

 

(2)業務において必要な能力あるいは資格に起因するもの

 

(3)リストラあるいはその他経営上の必要性

 

(4)法令上の規定によるもの

 

(5)その他の実質的な理由ご質問の「能力が伴わず、業務がこなせていない」は、上記理由の「業務において必要な能力あるいは資格」に該当すると考えられます。なお、原則解雇は認められるといっても、雇用主側から一方的に従業員にとって不利な通告をした場合は「推定解雇」扱いされることもありますので留意ください。

雇う側も雇われる側も日々前進を求められる

以上、要点をかいつまんでご紹介しましたが、いかがでしょうか。

 

流動性の高さから「人材が定着しづらい」などの声を聞くことがありますが、 プラス面もあるかと思います。前述の通り、香港の人は向上心が旺盛なため、企業側もそれに見合う魅力を保てなければ、優秀な人材は集められません。

 

そして、人々もまた、少しでも良い待 遇を目指して自分を磨き続けるのです。香港では雇う方も雇われる側も、日々前進を求められるようですね。

 

雇用条例の概要全般をご覧になりたい方は「Labour Department(労工処)」の サイトで閲覧可能ですので検索してみてください。

 

———————————–

川島響子(かわしま・きょうこ)

日系コンサルティング会社マネージャー

北京に留学し、日本でのOL経験を経た後、再び中華圏へ。日系工場・貿易会社等に勤務し、現場通訳から、人事・労務、資材調達、コーディネーター、駐在員のお世話まで、あらゆる業務を経験する。現在はコンサルティング業に従事。中国・香港在住通算13年超。香港永住権保持者。

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here