香港でビジネスチャンスを探そう Vol.5

第5回 会計・税務制度の特徴と基礎知識

 

第5回目は、香港における会計・税務制度、特に監査制度についてご説明いたします。
日本とは異なる部分が色々ありますので、これから香港でビジネスを始めようと思っている方は是非ご一読ください。

法人は必ず会計監査を受けなければならない

香港における会計業務の大きな特徴として、すべての法人が、その規模に関わらず、会計監査を受けなければならない点があります。日本で監査が義務づけられているのは、一部の大企業のみですから、大きな違いですね。

あまり馴染みのない業務ゆえ、「監査って何をするの?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、ざっくり説明すれば、その会社の財務諸表について、会計士からお墨付きをもらうこと、つまり「きちんとした会計処理をしていますよ」という保証を得ることと言えるでしょう。

実際の作業としては、監査人が各証憑(銀行明細・INVOICE・契約書等を元に取引を検証し、Audit report(監査報告書)としてまとめます。通常、いったんドラフト(下書き)が作成され、企業側の承認を得た後、清書し完成という段取りになります。ボリューム的には20〜30ページ前後になることが多いようです。

報告書には「Independent auditor’s report(独立監査人の意見)」という総括的な評価が記載される欄がありますが、ここが最も重要な部分となりますので、必ず目を通しておきましょう。

 

監査人のレベルは一定している

それでは以下、よく寄せられるご質問にお答えします。

(問1)
監査はどこにお願いするのが良いでしょうか?

(答1)
主に予算とコミュニケーションの取りやすさを考慮して決めましょう。

監査作業は同一の監査基準に沿って行ないますので、ローカル・日系、どの監査人に依頼しても、一定のレベルは保証されることになります。

しかし、監査人も生身の人間ですので、手際の良し悪しや相性などはどうしても差が出てしまうものです。可能であれば信頼できる方に紹介してもらうのも一手でしょう。

財務諸表の英語表記については言葉の問題をそれほど感じない方もいるようですが、「やはり全て日本語で理解したい」という場合は、多少割高になりますが、日系会計事務所に依頼しましょう。

なお規定上、記帳業務と監査業務は別々の会計事務所が担当することになっています。

香港は予定納税制度を採用している

(問2)
香港における法人税の申告期限と法人税率を教えてください。

(答2)
一般的に、法人税申告書(Profit tax return)は毎年4月に税務局から郵送され、発行日から1か月以内に申告するよう記載されています。

しかし、企業によって決算期は異なりますので、すべてがこの期限で対応することは困難です。そこで、税務代理人(通常、監査を行なう会計事務所が請け負います)が税務局宛にレターを提出することで、以下の通り延長することが可能です。

・決算月1月〜3月の場合、11月15日頃まで
・決算月4月〜11月の場合、翌年4月30日頃まで
・決算月12月の場合:翌年8月15日頃まで

法人税率は、例えば2015〜2016年が課税対象年度の場合、16・5%となります。

ちなみに、香港では予定納税制度を採用しており、次年度も同様の収入があるとして2年分の税額を収めることになっていますのでご留意ください。

 

サインすることが取締役の仕事?

(問3)
監査報告書が完成したのですが、取締役のサインを取り付ける箇所がたくさんあり、驚いています。本当に取締役自身が全てサインしなければならないのでしょうか?

(答3)
はい。日本では取締役が自ら署名するという習慣がないため、違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、香港ではこれが通常作業となり、省略はできません。後日、税務局へ提出の際も取締役の署名が必須となっています。

取締役が香港外にいる場合等、署名の取り付けにあまり時間が掛かりますと、税務申告に支障をきたすこともありますので、前もってスケジュールを確認しておくことをお勧めします。

 

香港では税務調査はほとんどない

(問4)
監査報告書に「『限定意見』が付く」と監査人から連絡がありました。どういう意味でしょうか?

大丈夫なのでしょうか?

(答4)
前述の「Independent auditor’s report」の内容についてですね。以下、内容で記載されることが多いです。

・「U n q u a l i f i e d o p i n i o n(適正意見)」――最も好ましい評価で、つまり「当財務諸表は信用するに価する」という意味です。

・「Qualified opinion(限定付適正意見)」――ご質問の「限定意見」に相当し、「一部を除いて信用して大丈夫」との評価です。例えば、監査に必要な書類のうち未入手になっているものがある等の場合、監査人はその旨記載します。及第点ではありますが、可能であれば、適正意見を得られるよう対応したほうが良いでしょう。

なお、時折「我が社の監査報告書はどこかで公開されるのですか?」というご質問を受けますが、基本的に、監査人(会計事務所)の控えと税務局への提出分以外は各社の取り扱い次第です。

また、このような監査制度が存在しているため、香港では立ち入りによる税務調査はあまりなく、調査は、ほとんど質問状送付により行なわれています。

正しい監査をすれば企業の負担は少ない

(問5)
その他、何か特徴的な制度はありますか?

(答5)
よくいただく質問で、繰越決算金の繰越制限があります。香港では繰越期限はありません。将来に向けて永続的に繰り越すことが可能です。

以上、要点をかいつまんでご紹介しましたがいかがでしょうか。

「監査が義務」と聞くと、何やら堅苦しい、煩雑なイメージを持たれるかも知れません。

しかし、監査人のリクエストにしたがい、必要な対応を取れば、企業側の負担はそれほど多くないかと思います。ふだん会計に全く携わっていない方が担当された場合は、日本語のやり取りでも苦労されることがあるようですが、社内の数字の流れを把握される良い機会と思って、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか?

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川島響子(かわしま・きょうこ)

日系コンサルティング会社マネージャー

北京に留学し、日本でのOL経験を経た後、再び中華圏へ。日系工場・貿易会社等に勤務し、現場通訳から、人事・労務、資材調達、コーディネーター、駐在員のお世話まで、あらゆる業務を経験する。現在はコンサルティング業に従事。中国・香港在住通算13年超。香港永住権保持者。

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