香港でビジネスチャンスを探そう Vol.6

第6回 香港の個人番号制度

日本で2015年10月から番号発送が開始されたマイナンバー制度──。似た制度を採用している
諸外国についての記事も多く見受けられます。
アメリカのソーシャル・セキュリティー・ナンバー(社会保障番号)などが有名ですが、実は香港でも個人番号制度が普及していることをご存知でしょうか? 今回は香港の個人番号制度についてご説明いたします。

 

IDカードがないと、日常生活ができない

香港では11歳以上の居住者にIDカードの携帯を義務づけています。カードにはそれぞれ番号が振られ、顔写真の印刷の他、指紋を含む個人情報の記録されたチップが埋め込まれています。このカード番号をHongKong identity card number(通称「香港ID番号」)といい、日常生活のあらゆる場面で使用されているのです。

銀行口座開設やクレジット・カード作成はもちろん、就職時の履歴書、携帯電話の契約、面白いところでは、懸賞応募の際も記入欄があったりします。一般企業においても、番号の記録・管理は認められており、給与明細にも氏名と番号が併記されている、といった感じです。

 

合理的なシステムで運用されている

こう聞くと、ものすごい管理社会を想像されるかもしれませんが、私は香港におけるこのシステムは合理的で上手く運用されているのではないかと感じています。理由は以下の通りです。

(1)厳格な管理体制が敷かれており、流出の可能性が低い
IDカードの作成にあたっては、必ず本人が役所へ出向かい、面接官のインタビューを受けなければなりません。顔写真はもちろん、指紋も面接官により採取されるため、偽造が大変難しいのです。
また、日本のマイナンバー制度は、番号が先に簡易書留で送られてくるようですが、香港IDカードは出来上がるまで、番号は分かりません。つまり、番号だけが一人歩きして第三者の手に渡る、というような事象が起きにくいと考えられます。

(2)所持するメリットが大きい
IDカードを所持していれば、イミグレーションで香港人と同じ通路を使用することができ、親指一本の生体認証で通関完了です。長い行列の観光客用通路に並ぶ必要はありません。
加えて、7年間合法的に香港に居住すると、申請により永住権を取得することが可能となります。永久居民(永住権保持者)がマカオに行く際は、外国人でもパスポート不要、IDカードのみでイミグレーションを通過することができます。
また、納税記録も税務局でID番号と紐付け管理されており、何か疑問があれば電話一本で問い合わせが可能です。日本の年金にあたるMPFの積み立て記録も紐付け管理されていますので、「消えた年金」問題の発生は皆無と言えるでしょう。
所持義務を相殺可能なほどの利便性があるため、IDに異議を唱える市民は存在しないのではないでしょうか。

 

今までIDカードがなかった不思議な国ニッポン

思うに、この制度が普及した背景としては、単純に中華系の人々の名前は同姓が多いため個人識別が難しいこと、また、中国という広大な大陸に接している都合上、治安的な要因で一般人の管理も厳格にせざるを得なかったこと等があるかと思います。番号管理によるお役所の事務効率化という側面も、もちろんあるでしょう。

しかし理由はどうであれ、システムとして真っ当に機能し、管理する側される側双方に利益のある制度であれば、十分賞賛に値すると思うのです。

日本のマスコミ記事を見ていると、諸外国での失敗例を多く取り上げている印象ですが、香港のような成功例にも少し触れて良いのではないかと思います。

ちなみに、香港の人に「日本人はIDカードがありません」と言うと、驚かれます。

「じゃあ何が身分証明になるの?」と返され、「パスポートとか、運転免許証とか……」と答えると、

「パスポートや運転免許証は全員持っているとは限らないでしょ?」と指摘されるのはよくあるパターンです。

先進国のはずの日本で個人証明手段がないというのは確かに不思議ですね……(あれだけ人口の多い中国でも身分証は発行されています)。

そのうち「日本人にはマイナンバー・カードがあるよ」と答える日が来るのでしょうか?

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、世界で最初に実用化された公共交通機関向けプリペイド・カードは香港のオクトパス・カードです。1997年に使用開始されましたが、開発したのはソニーでした。

本国の日本でSUICAとして使用開始されたのは4年後の2001年です。技術開発で常に世界をリードしながら、実用スピードで遅れを取ることもあった日本──。

マイナンバーについて、カード作成を含め、今後どのような制度運用が行なわれるのか?

身近な「マイナンバー先進国」、香港からも注目していきたいと思っています。

 

 


川島響子(かわしま・きょうこ)

日系コンサルティング会社マネージャー

北京に留学し、日本でのOL経験を経た後、再び中華圏へ。日系工場・貿易会社等に勤務し、現場通訳から、人事・労務、資材調達、コーディネーター、駐在員のお世話まで、あらゆる業務を経験する。現在はコンサルティング業に従事。中国・香港在住通算13年超。香港永住権保持者。

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