香港でビジネスチャンスを探そう Vol.8

第8回 個人所得税についての大事な話

以前、第5回で取り上げた「会計・税務制度の特徴と基礎知識」では、香港の法人税についてご説明しました。
今回は個人の税金SalariesTax(給与所得税)についてお話しましょう。

 

給与所得者が自分で確定申告を行なう

まず大きな特徴ですが、香港では一部の例外を除き、全給与所得者が確定申告をしなければいけません。外国人でも申告方法は同様です。日本のように源泉徴収や年末調整がありませんので、自身で情報を的確に把握しておく必要があります。

では、申告に関わる具体的なステップを見ていきましょう。香港における課税年度は毎年4月1日から翌年3月31日までとなります。

 

IR56B(雇用主支払報酬申告書)の入手

4月に入ると、各企業は前年度、誰に対し、いくらの給与を支払ったか、を税務当局に申告します。この申告書類一式の表紙をBIR56A、それに付随する報告書をIR56Bといいます。

IR56Bは各従業員につき1枚ずつ作成し、コピーを従業員本人に渡さなければいけない規定です。企業による税金の徴収は行なわれませんが、報酬の明細が記載されているという意味では、日本の源泉徴収票をイメージすると分かりやすいかも知れません。

受け取り後は内容をしっかりと確認し、不明な点があれば、雇用主に問い合わせましょう。

 

BIR60(個人所得税申告書)の記入

5月に入ると、今度は税務当局から個人宛に個人所得税申告用紙が送られてきますので、各自記入のうえ税務当局に提出します。

A3両面印刷のこの用紙にはさまざまな記入項目がありますが、一般的なサラリーマンや駐在員の場合は、前述のIR56Bを元に給与所得額と諸手当の内容、個人情報(配偶者や子供の有無等)を記入すれば完了です。

個人事業を営んでいたり、不動産所得等がある場合は、それぞれ指定の欄に記入します。

 

納付通知の受領

BIR60の提出後、税務局はIR56BとBIR60双方を確認の上、各個人あてに納付通知を発送します。

納税額と納付期限が記載されていますので、遅れずに支払いを行ないましょう。

 

税率は2通りある

香港の税率ですが、標準課税方式と累進課税方式の2通りがあり、よほどの高所得でない限り、累進課税方式のほうが有利な税率になっています。ちなみに、基礎控除は12万香港ドル(約168万円)です。

 

累進課税による計算式

純課税所得(諸控除適用後額)の:
最初の4万香港ドル……2%
次の4万香港ドル……7%
次の4万香港ドル……12%
残りの額……17%
支払い方法としてポピュラーなのは小切手ですが、インターネット・バンキングやクレジットカードでの支払いも可能です。

また、少額であればコンビニエンス・ストアでも支払えるなど、納税者の利便性が考えられたシステムになっています。

疑問点等がある場合は税務局のホットラインで随時問い合わせが可能です。納付通知にご自身のファイル番号が記載されていますので、係員に伝えれば、もろもろ対応してくれます。

主な流れは以上ですが、いくつか注意点もありますので、以下ご参考ください。

 

課税対象

香港源泉の給料・役員報酬・賞与・臨時手当等が対象となります。
ただし、駐在員の方などで、本国の親会社から受け取ったものでも、香港での労働への対価である場合は、課税対象となりますのでご留意ください。

 

予定納税制度

香港は源泉徴収制度がないため、税務当局からすると、税金を取り損なう可能性があります。
これを回避するため、予定納税制度を採用しており、納税通知発行の際は次年度も同等の所得があると見なして、2年分の税額を請求してきます。
これを知らず、赴任後の初回納税額に驚く方もいらっしゃるようですので、頭に入れておくといいでしょう。
次年度の所得が前年度を下回った場合は、きちんと計算処理してくれますのでご安心ください。

 

退社や帰任が決まった場合の税務処理

以下2つの対応があります。
(1)退社後も引き続き香港に居住する場合
雇用主がIR56Fというフォームで、退社日までの支払い報酬を税務局に申告します。
IR56B同様コピーを入手しておき、後日BIR60記入の際、内容を反映させます。
例えば、4~8月まではA社、9月~翌年3月まではB社で働いた場合、BIR60記入の際、給与欄にはA社のIR56FとB社のIR56Bの内容を反映させるといった具合です。

(2)外国人で本国への帰任が決まった場合
帰任日・最終給与が確定次第、IR56Gという専用フォームで退社日までの支払報酬を申告します。
厳密には帰国日の1か月前までに申告しなければならない規定ですが、実務上遵守するのは難しいため、「できる限り早い対応」でも、許容範囲のようです。
なお、駐在員などで所得税を会社が負担している場合は、申告書の提出のみで完了可能ですが、本人負担の場合は出国前に所得税の清算をしなければならない規定になっています。
未対応のまま出国すると税務局から問い合わせが来ますので、帰国が決まり次第、申告スケジュールを確認することをお勧めいたします。

税務申告を怠った場合

雇用主・従業員ともに、申告の遅延が生じた場合は対応を促すレターが税務局から届き、それでも応じない場合は規定により罰金が課されます。
要点をかいつまんでご説明しましたがいかがでしょうか?

 

香港と日本の大きな違い

日本と違い、確定申告のうえ、自ら納税するためか、香港の方は税金に対し「私たちが負担している」という意識が強いように感じます。適正な使われ方をしているか常に注目しているようです。

政府が毎年発表する予算案には、一般市民が身近に感じられる措置も多く、個人所得の還付などが複数年度実施されています。

あまり知られていませんが、香港には消費税がありません。相続税もなく、所得税も基礎控除額の12万香港ドル(約168万円)までは実質無税です。共に経済低迷が囁かれる中で増税方針の日本と、対極スタンスを採った香港。申告方法だけでなく、ここにも二者の違いがあるようです。

 

 


川島響子(かわしま・きょうこ)

日系コンサルティング会社マネージャー

北京に留学し、日本でのOL経験を経た後、再び中華圏へ。日系工場・貿易会社等に勤務し、現場通訳から、人事・労務、資材調達、コーディネーター、駐在員のお世話まで、あらゆる業務を経験する。現在はコンサルティング業に従事。中国・香港在住通算13年超。香港永住権保持者。

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