香港でビジネスチャンスを探そう Vol.9

第9回 香港で使われている言葉

連載9回目の今回は、あまり知られていない香港の言語事情についてご紹介します。
旅行者の方にもお役に立つ情報かと思いますので、ご一読ください。

香港の公用語は英語と中国語

現在、香港における公用語(つまり、お役所で公式に使われている言語)は英文と中文です。平たく言えば、英語と中国語ということになりますが、香港独特の事情がありますので、触れておきましょう。

まず、英語はイギリス統治時代からの公式言語で、綴りや単語もイギリス英語が受け継がれています。例えば、「色」は「color」ではなく、「colour」、「小切手」も「check」ではなく、「cheque」といった感じで、ビルの階層表記も日本の1階がG(ground floorの略)になっていたりします。

私は英語放送の発音もABCやCNNとは少し違うように感じていますが、興味のある方は見てください。

もう一つの「中国語」ですが、こちらは少し説明が必要となります。

以下、中華圏で使われる主要中華系言語を簡単に整理しましたのでご覧ください。

【中国大陸】
・普通話(≒漢語≒北京話)──日本で言う「共通語」に相当する。
・広東話(=白話/粤語)──いわゆる「広東語」のこと。広東省・広西省地区が中心。
・その他各方言

【香港/マカオ】
・広東話(=白話/粤語)
・普通話

【台湾】
・台湾国語(≒普通話)
・台湾話(台語)──いわゆる「台湾語」
・その他各方言

【シンガポール】
・華語(≒普通話)
・福建話/海南話

 

香港では中国語=広東語

「英文」に対して広義で「中華系市民が使う土着の言語」と捉えると、以上すべてが「中国語」となります。その中で、香港で最も普及しているのは広東語ですので、事実上「中文=広東語」と言えるでしょう。

ただし、広東語は「白話」の別称から分かるように、話し言葉として発展したため、そのまま文章にすることができません。ゆえに、文書表記では若干調整をして書かれています。

身近な例として、ローカルテレビのニュースに字幕が付いていますが、アナウンサーの話している内容と字幕の文字は必ずしも一致していません。おおむね、アナウンサーは広東語の原稿を読み上げ、字幕は普通話に沿った文章を流しているようです。

事実上、単一言語の日本からすると、ずいぶん複雑な言語環境と思われるかも知れませんね。

 

日本人には理解が難しい言語環境

それでは、よく聞かれる質問にずばりお答えします。

──香港の方って、みなさん、英語が話せるのですか?
個人差はありますが、事務職に従事する人であれば、ほぼ全員が理解すると言っていいでしょう。特に金融関係は英語抜きで仕事を進めることができませんし、製造業でさえ、香港人同士でも社内メールは英語という会社が多数あります。

また、英語のみならず、第2外国語を意欲的に学習する人も多く、例えば日系企業勤務なら日本語が話せる人も珍しくありません。日本から赴任してきた駐在員が帰任する頃には、駐在員の英語(もしくは広東語)より香港人部下の日本語のほうが上達していた、などという話も耳にします。

近年では中国大陸との交流増加により、普通話を学習する人も増えています。

──中華圏には、たくさんの方言があるようですが、お互いの方言を理解し合えるのですか?
日本における標準語と関西弁のようにはいかないようです。

例として、普通話と広東話の間には、英語とドイツ語並みの隔たりがあります。隣接地域の方言であれば、勘の良い方はある程度聴き取れるようですが、基本的には、別言語と思ったほうが無難でしょう。

また、広い中国大陸では、普通話でも地方によって発音に特徴があり、全国放送でも字幕が出ていることがしばしばです。

多くの方言が存在しながらも、「中文」という全体構造を形成できる要因としては、やはり漢字の存在が大きいのではないでしょうか。

──中国大陸と香港って、使っている漢字が違いますよね?
中国で使われているのは「簡体字」という、旧字体を簡略した文字です。香港・マカオ・台湾では、旧式の画数の多い「繁体字」を使用しています。日本人からすると、馴染みやすいのは、繁体字かも知れませんね。

なお、シンガポールは簡体字を使用しています。

──これまで外国語に縁がなかったのですが、香港で暮らす場合、どの言葉から勉強したら良いでしょうか?
目的により異なってきますが、まず英語の基礎固めをされてから、次の言語に取り掛かることをお勧めします。と言うのも、あまり知られていないのですが、香港では携帯電話からクレジットカードまで契約書は基本的に英文だからです。

依頼すれば、中文版も用意してくれますが、英・中文間で解釈の違いが発生した場合は英文に準拠する、と書かれている場合が多く、ビジネス文書においては英語優勢なのが実情です。

英語の次に中華系の言語を何かひとつ、と考えられる方は、まず簡単な広東語(挨拶など)を身に付けてみると良いかも知れません。「早晨!(おはようございます)」「唔該 !(すみません、ありがとうございます)」と、外国人であるあなたが一言発すれば、香港人はきっと喜んでくれますよ。

いかがでしょうか。コミュニケーションの基本となる「言語」、掘り下げてみると、なかなか面白いテーマのようです。

あまり実感が湧かないかも知れませんが、香港の人たちは自らの言語環境に強い意識を持っています。

以前、香港のとあるテレビ局が、ニュースの字幕に簡体字を流した際には、1万件以上の抗議が殺到する事態となりました。思わぬ形で「言語=文化」であることが露呈した出来事です。

こちらにいらっしゃる機会があれば、行き交う人々の言葉と文字にも注目なさってみてください。

 


川島響子(かわしま・きょうこ)

日系コンサルティング会社マネージャー

北京に留学し、日本でのOL経験を経た後、再び中華圏へ。日系工場・貿易会社等に勤務し、現場通訳から、人事・労務、資材調達、コーディネーター、駐在員のお世話まで、あらゆる業務を経験する。現在はコンサルティング業に従事。中国・香港在住通算13年超。香港永住権保持者。

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