JETROシンガポールが国際展示会でジャパン・パビリオンを開設

ミドリムシがこの地球を救う

シンガポールで卸売業者とともに「ユーグレナP-3」というサプリメントを販売している「株式会社ユーグレナ」は最先端の技術を駆使しながらも、人の栄養改善という地道ではあるが重要な役割を果たそうとしている。

同社の食品・化粧品・サプリメントの主原料となっているのが「ミドリムシ」である。代表取締役社長の出雲充氏が18歳、大学1年生の時、初めて訪れた外国が最貧国の一つと言われたバングラデシュで、慢性的な栄養不足の子供たちを目の当たりにしたという。そして帰国後、バングラデシュの食糧問題、特に栄養不足の解決策を模索する中で出会ったのが藻類の「ミドリムシ」だったという。

同社の会社概要によると、出雲氏はミドリムシを大量に安定的に培養・供給する技術の研究を続け、東大のベンチャー企業としてユーグレナ社を2005年に創業した。

そもそも起業のきっかけとなったバングラデシュでの経験を重視した出雲社長は2013年10月に同社初の海外拠点となる事務所をバングラデシュの首都ダッカに開設している。

そして、同年12月には日本ムスリム協会から、ユーグレナ、クロレラがイスラム教徒でも口にできる「ハラル」であることを認める「ハラル認証」を取得している。

世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア、イスラム教国のブルネイやマレーシアの他に南部にイスラム教徒が住むタイ、同じく南部でイスラム系組織が独立武装闘争を続けるフィリピンなど東南アジアにイスラム教徒は多く居住しており、その文化・習慣・宗教への理解は今では東南アジアでビジネスを展開する日本企業にとっては不可欠となっている。

そうした意味でも、ユーグレナ社がすでにハラル認証を得ていることは素晴らしいことと言えるだろう。

ミドリムシには、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、不飽和脂肪酸など59種の栄養素が含まれ、中性脂肪とコレステロール値を抑制し、乳酸菌の活動を活発化、プリン体の吸収を抑制し、肝臓の保護作用、さらにアトピー性皮膚炎の緩和、便秘解消などという多様な有用性が注目されている。

シンガポール随一の繁華街オーチャード通りの高島屋地下にある西野薬局、ブギスジャンクションのウェルシアBMGなどでサプリメント「ユーグレナP-3」(シンガポール限定商品)を販売している。販売価格が120シンガポールドル(約9600円)の「P-3」には720㎎(ミリグラム)のカプセルが入っており、その粉末はミドリムシの数にすると、約7億2000万個に相当するという。

日本では、緑汁、ユーグレナ・クッキー、カンパン、飲むユーグレナ、スキンケア用の化粧品など多分野での商品を開発販売している。

「石垣島にある当社専用施設で培養し、それを粉末化して商品化しています。サプリメントとして私も愛用しており、体調はとてもいいです」とユーグレナ中央研究所研究開発部機能性研究課の中島綾香課長は話す。

まさに「ミドリムシであなたの未来が変わる」「この先、この星を救うかもしれない藻類」(同社研究レポートより)であり、会場を訪れた多くのシンガポール人が関心を抱き、同社ブースで中島課長や取締役研究開発担当の鈴木健吾博士(農学)から詳しい説明を聞き、資料に目を通していた。

最先端を走る日本のロボット技術

6月6日の午前10時からは会場の一角でJETROシンガポール主催のイノベーションをテーマにしたセミナーが開催された。

冒頭に佐藤百合JETRO理事が「アセアンの経済発展は著しく、先を進む会社と後に残された会社の差は広がる一方である。そんな状況の中で、日本は技術力、イノベーション力で様々な分野での協力が可能である」と述べ、日本と東南アジアの企業の協力体制構築の重要性を強調した。

その後、基調講演したロボ・ガレージ代表取締役の高橋智隆氏は、初のロボット宇宙飛行士として2013年に国際宇宙ステーションで若田光一飛行士と会話をした同社開発・製作の小型人間ロボット「Kirobo」を実際に起動させて、日本語の会話を交わし、会場を大いに沸かせた。

また、乾電池2本でフランスの自動車レースのサーキット「ル・マン」を24時間走行し続けた小型ロボット「Evolta」の映像が会場で流され、24時間耐久を成し遂げた際は会場から大きな拍手が起きた。

その「Evolta」も会場に登場し、高橋氏の手にするロープを実際に攀じ登る実演も行なわれ、参加者は日本のロボット技術の高さに嘆息を漏らしていた。

高橋氏は「ロボットの開発はテクノロジーとデザインとビジネスである」として、新たな革新の時代を創造するためにもロボットは重要だと強調した。

同じロボットでも大型なロボットをブースで披露したのは「オムロン・アジアパシフィック」で自動案内ロボットと呼ばれる高さ約1メートルのロボットだ。ホテルやカジノですでに自動案内の役割を果たしており、横に並んでセルフィーで記念撮影する訪問者が後を絶たない人気だった。

日本に学ぶべきこと日本ができること

「パネル・ディスカッション・パート2」では「日本とアセアンのパートナーシップから生じる問題の解決策」について日本企業の幹部らがモデレーターのJETROシンガポール石井所長と意見を交換した。

横河アジアのライ・ア・クオウ相談役は、同社で40年働いている経験を基に、日本とシンガポールについて、日系企業で働くシンガポール人の立場から興味深いエピソードを披露した。

「先日東京の銀座を妻と歩いていて、数寄屋橋の交差点に来たとき、交通違反をしたと見られる車両を交番にいた警察官が自転車で追跡をはじめたのだ。すごい速さで懸命にペダルを漕ぎながら、しかも通行人などの安全に配慮しての追跡だ。日本人の妻に、これこそシンガポール人が学ぶべきことだと話した」

シンガポールの会社で働く日本人、日本の会社で働くシンガポール人は共にその社会の価値観や習慣のことを考えて仕事をすることが大事とした上で、ライ相談役は「いかにして、匠やもてなしを実現していくかが重要だ」と話した。

横河アジアはブースにバーチャルシステムを持ち込み、バーチャル空間でメンテナンスのトレーニングをするノウハウを披露した。このシステムを採用することでメンテナンスのトレーニングが効率よく実施ができることをPRしていた。

セミナーの最後にJETRO シンガポールの石井所長が発言、会場で熱心にパネル・ディスカッションを聞いていたシンガポール人や東南アジアの聴衆に対し、「日本の会社との提携を考えている会社の方は是非JETROにコンタクトしてほしい。Talk to JETRO firstでお願いします」と今後もJETROが日本企業と東南アジア各国企業の橋渡しに全力を尽くすとの意気込みを示した。

 

シンガポールはイノベーションの本拠地

シンガポールはアセアンの中で金融センター、通信情報センター、流通のハブ、最先端医療科学研究ハブなどでその存在感を示すことを政府方針として明らかにしている。

政府の経済開発庁(EDB)はシンガポールを「Home of Innovation(イノベーションの本拠地)」と位置づけ、日本をはじめとする欧米各国や中国などに東南アジアへのイノベーション技術、ビジネスのゲートウエイとして活用を求めている。

EDBはそのHPなどでシンガポールが果たすべき役割として「シンガポールに必要なソリューションの需要が生まれている。各国企業はシンガポールの官民両セクターのパートナーと協力してシンガポールを生きた実験場として利用」してほしいと訴える。

そしてその結果「シンガポールを実験場として利用することで新しいソリューションのコンセプトを練り、共同で開発を行ない、実証運用をして、アジア市場、グローバル市場にそのソリューションを売り出すことができる」としている。そしてそれは、とりもなおさずシンガポールにとっても「売り出す過程でシンガポールの人々の生活水準は向上し、一歩進んだ最先端ソリューションを取り入れられる」としてシンガポール国民の生活向上にも寄与するという「ウィンウィン」の関係が築けると主張、先端技術を有する外国企業の進出、投資を歓迎しているのだ。いや正確には、企業、シンガポール、そして売り出すアセアンの国という「ウィンウィンウィン」の関係といえるだろう戦略を打ち出しているのだ。

こうしたシンガポール政府の思惑に応えるためにも、JETROシンガポール事務所は近年、積極的にシンガポールで開催される各種の展示会・見本市などに、単に日本企業の参加を側方支援するだけではなく、「ジャパン・パビリオン」を設置して、参加企業を募り、選び、そして、事前にバイヤーとの会合を設けたり、セミナー形式のパネル・ディスカッションを企画したりと日本企業の強み、魅力の対外発信に大いに貢献している。

EDBが5月18日にまとめた「シンガポールの投資動向2017、製造業とイノベーションへ向けた投資」という報告で「シンガポールへの日本の投資比率は全体の9・6%を占め、特筆すべきは2016年の7・4%から2・2%も増加している点だ」として、日本企業の活動状況への注目と期待を表明している。

そして、「2018年度の投資コミットメントが2017年とほぼ同じ水準を維持すると予測」していることを明らかにした上で「今後は投資主導の付加価値経済からイノベーション主導の価値創出経済に移行していく」との見通しを示している。こうした中で開催された今回のinnovfestに「ジャパン・パビリオン」として初参加したJETROシンガポールの判断はまさに時機を得たものと言えるだろう。

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