どこまで行けるか?「日本スタイル」 vol.6

第6回 2018年のタイはどうなるのか

タイは2014年から軍事政権が支配しております。この十数年間ほどのタイは、大規模なデモがあったり、クーデターが起こったり、プミポン国王陛下が崩御されたり、と政治的には激動の時代が続いてきました。
現在のタイは政治的には安定しておりますが、経済的には今後どうなっていくのでしょうか──。
2018年のタイを予想してみます。

 

軍事政権により政治は安定化しているが……

2013年後半から2014年初頭にかけて、タイの首都バンコクで反政府グループによる政権打倒活動が断続的に行なわれました。2大政党のいずれが政権運営をしても、その片方が「反政府」となり、デモを繰り返してきました。2005年以降の状況を経験している多くの在住邦人は、こういった状況を「この道はいつか来た道」と感じております。この十数年のタイの経済成長は、混迷と融和の繰り返しの中に、中間層の経済的拡大を背景としてきました。

タイ人は、秩序や安定を好み、他者に対して調和的なことを美徳とします。自己にではなく、家族や他者のために尽くすことが功徳と考えています。一方、正義感やプライドが強く、感情的な行動に出た場合の抑制が利かない面があります。

これらの混乱状況は、民主国家として未完成な国が近代国家に推移していくための成長過程として見ることができると考えます。2014年はこの混乱の中、軍部が全権を掌握し、2018年現在の今も続いているプラユット政権が発足しました。政党間のねじれに振り回されてきた国民は、混乱を収拾できる唯一の存在として、この軍事政権を歓迎しました。

また前回の2005年のクーデター政権の反省から、経済政策で景気の低迷をしないように、国際社会にも積極的にタイ国の安定を訴求しています。しばらくこの状況が続くことが、タイ国経済の安定を支える形になると考えます。

 

日本料理の浸透がさらに加速化している

今やタイでは日本料理はキラー・コンテンツとなりつつあります。タイの食に関する統計によると、日本料理は現在、タイ料理に次ぐ地位を占めています。現在の追い風の中、日本料理レストランの進出は外食産業が盛んなタイ国において、さらに加速するものと考えられます。

以前は個人経営の飲食業が主体でしたが、ここ数年は、日本の大手外食企業の進出が続いています。つぼ八、元気寿司、丸亀製麵、牛角、寿司小樽、てんや、吉野家など、馴染みの店がタイ市場での展開を開始しています。大手外食企業の場合、数年で50店舗展開などという計画もあります。

タイの日本料理レストランは現在2000店舗以上といわれ、その多くがバンコク中心部に展開しています。また、外食の海外進出支援、コンサルティング、飲食に特化したサポート・サービス(施工・人材・情報など)の専門企業がサービスを開始しており、成熟産業となりつつあります。

飲食の業態としては、総合レストラン・食堂といったものから、専門店(すし、牛丼、カレー、ラーメンなど)への移行傾向が強く、本物志向が最近の傾向となっています。

タイ人の嗜好特性を睨んだ出店は今後も続いていきますが、課題や運営上の問題も多いです。タイでの法人設立の場合、タイ側企業による出資を51%以上受けなくてはならず、日系飲食企業は、タイ食品大手と業務提携することになります。

経営上も運用上も単独で経営判断することができない状況にタイ仕様の運用になってしまうケースも散見されます。

一方、ハイエンド向けの飲食業態の成長は、アジアの一大グルメ都市バンコクの今後の高い可能性を感じます。

加熱する日本旅行は団体から個人へ急速にシフト

2017年の日本観光は、外国人観光客が2800万人突破で大いに沸きました。2017年の訪日タイ人観光客数は約98万人。ここ数年にわたって、高い成長率を示しています。2013年7月から実施された訪日ビザ免除もタイ人に歓迎され、日本観光の人気を高める結果となりました。

日本の旅行関係者の多くが参加するTITF(タイ国際)旅行フェアも日系の出店規模を大きく成長させており、海外旅行人気の高まりも経済成長と中間層の所得成長を背景に規模を増やしているのではないでしょうか。

タイ国内の観光地には、新しい施設やテーマパークがどんどん造られており、休日には大勢の家族連れやグループで賑わいを見せています。タイ人は「遊ぶこと」「楽しむこと」については、その天賦の才を発揮します。なにしろ遊び上手です。今、そんなタイ人が海外旅行を始めており、近隣周辺国へ陸路で行く観光、手頃な距離感のアジア諸国への旅行から始まっています。

また、団体旅行から個人旅行へのシフトが急速に進んでおり、旅先の広がりを見せています。礼儀正しく愛想が良いタイ人旅行客は、観光地でも評価が高く、タイ人の情熱的とも言えるショッピングは、日本の地域活性につながるほどのエネルギーがあると考えられます。東名阪、中部ルート、北海道といった代表的なコースから、九州、四国といった未認知エリアに観光コースが広がることになるでしょう。

さらに、団体旅行を経験したリピーターは、個人旅行者(FIT)となり、日本旅行の形態が成熟度を増していくと予測されます。

タイ女性のライフスタイルの近代化

アジアのファッション・ソリューションを牽引している「ニッポン」。タイのビューティー・シーンは、大半をニッポンのファッションをベースにローカライズされたものが主体になっております。

タイでは未発売のコスメ商品をネットで個人輸入したり、旅行時に友人の分まで大量に購入するなど積極的な購買行動が進んでいます。「黒髪ストレートロング」から「カラーリングしたゆるふわヘアー」までの距離と比率は、都市になるほど多様性が進んでいます。

また、ファッション感度が高いと言われているタイ女性のショッピング・ゾーンは、アジアの近隣周辺国から商品を手に入れようとやって来る人であふれています。タイ人女性は、都市層ほど、晩婚・少子化が進んでおり、自立した女性やクオリティー・ライフを謳歌する女性像に憧れを持つのは、近代化していくための象徴なのかもしれません。

アセアンの時代は今後もしばらく続くだろう

2016年に発足したアセアン経済統合体により、アセアンの成長はさらに加速化しております。

アセアン10か国それぞれの国の事情があり、歴史背景があります。

また、現在の成長過程においても、まちまちであり、価値観も違います。

しかし、これからの10年は、間違いなく、アセアンの時代となるでしょう。

 

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井芹二郎(いせり・じろう)

バンコクポルタ株式会社 代表取締役社長

熊本県出身。リクルートにて、求人情報誌の創刊プロジェクト、地域活性化事業、狭域エリア事業のシニアダイレクター、メディア・プランニングと媒体設計にたずさわる。2008年、タイのバンコクでPR企画会社バンコクポルタを設立。消費意欲が高まるタイのバンコクで、トラベル・インバウンド・サポート、ライフスタイル・マーケティング、日本企業のタイ進出支援、イベント企画などを行ない、日本国内では自治体や民間企業のアドバイザーを務めている。

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