俺たちに明日はあるのか ──現在の「負け組」から未来の「負け組」へのメッセージ

117

第10回 外国で親族が亡くなったらどうなる?

このコラムを書きはじめて2年──。
友人知人からは「まあ訊いてください」ということが増えました。
私はコンサルタントではありません。訊かれても、アドバイスというよりも、せいぜいご意見という程度のものしかできませんよ~。
「まあまあ、それでもいいですから」という感じなんですが……。

海外居住者が関心のありそうなリアルタイム進行ネタがありましたので、せっかくですから取り上げてみたいと思います。
中でも誰もが逃れられない事態で、皆さんも関心があろう一例が進行中なのでご紹介しましょう。

 

日本大使館領事部は非を認めない!

海外リタイアメント組のHさんの叔父が、アジア某国の首都近郊で急死した。叔父も3年前からHさんの勧めでリタイアメント組になっていました。正確には首都近郊の病院に搬送、蘇生を試みたが、そのまま帰らぬ人となったのです。病院から首都の日本大使館領事部に病死の通知がなされた。日本大使館領事部は病院の事務局を通じて「今日中に領事部に来て、パスポートの穴あけ作業をさせてください」という。

Hさんは「首都には旅行に来ていたので、中心部に逆走すれば大渋滞だし、このまま田舎に帰りたい。叔父の知り合いも皆その田舎だし、今そちらに向かえば、今日中に田舎に戻るのは不可能になる」

領事部は「こちらに来ないと、火葬(許可)もできませんよ」と言う。

「それじゃ、アジアの田舎やアフリカの僻地で日本人が死んだら、腐敗して病原菌が湧いて疫病が心配される状況になっても、ほっとかなきゃならないのか?」

人間の遺体は腐敗すると、病原菌の巣窟となり伝染病の源となるのだ。

「ン十万人の大虐殺」とか平気で歴史を語る輩は、そのことを知らない。

すると、領事部は約2時間後に「では、田舎の警察で検視して火葬許可証を書いてもらって火葬してください」とあっさりと引いた。しかし「火葬できませんよ」は間違いでした、とは決して言わなかった。さすが役人!

銀行口座の凍結はあるのか?

さて、田舎では、Hさんの友人であるWさんが「現在はオンライン社会。(領事部から連絡が行って)年金もすぐに止まるし、(叔父名義の)銀行も証券会社も凍結される」と断言した。根拠のないものではなくて、米国に在住届を出していたWさんの知人がメキシコで死亡した時にはそうなった、というのだ。

2010年頃、東京を中心に爺さん婆さんの死亡を隠して年金を10年分とか受給していた多くの事例が発覚した。江戸時代から生きている(死んでいない)という戸籍も凄い数が確認され、以来、省庁は改革に取り組んできているから、そういう流れになっていてもおかしくはない。

しかし、Hさんがネットで「海外で死亡した時」についていろいろ検索しても、目ぼしい情報は載っていない。それこそ役所や外務省のウエブサイトにも載っていない。

銀行、証券会社に関しても、日本に存在する地方銀行も含めての百数十行が全て口座凍結されるのか? 大手都市銀行5行だけでは?

「死亡時の口座凍結に備えてパスワードを伝えられる間柄にある親族または友人ならば、その日から毎日ATMの限度額である50万円ずつ下ろして、葬式代に使っちゃったことにして、相続税対策する」という話を聞いたことがあるHさんは、天涯孤独だった叔父の金銭面も任されていたので、すぐにピーチエアライン(LCCで安く日本に片道で行けるので手頃)で那覇に飛んで、その作業に入った。せっせと1日50万円を下ろし続ける対策を取ったのです。

で、Hさんの話をこの年末に聞いているわけですが、現在のところ、銀行も証券口座のほうも全く以前と変わらないそうです。

これってケースバイケースで、その人その人で違うんじゃないの?

Wさんの知人(アメリカ在住届あり)の件もG20(先進20か国)やG7(先進7か国)での事例だからじゃないの?

2か月に1度振り込まれる年金は?

「まあ、いつかは止まるわけだから、ほっておけばいいんじゃないの」というのが私の意見です。返却するにしても「月1000円ずつずっと返します」ということで。それじゃ10年かけても12万円にしかなりませんが、それで大丈夫というリタイア年長者の推測もあります。

「あっというまに刑事事件になりますよ」という御仁もいるので、果たしてどうなるのか、これからのお楽しみ(笑)です。

 

遺族年金は介護していた者にも出る?

次に遺族年金についてです。HさんにはMさんという同じリタイアメントの友人がいます。Mさんは自衛隊を55歳の定年まで勤め上げ、その後は大手金融機関に勤務し、そこでも定年まで勤め上げられた方です。決してハッタリをかますような人ではありません。Mさんが熱く語るには「遺族年金は、痴呆や寝たきりなどの介護を死ぬまでの数年間した人には出るんですよ。それは婚姻関係のない内縁の妻でも、タイ人の愛人でも。また死ぬまで介護をした息子にも(当然20歳以上の成人ですが)。現に私が手続きしてあげて、死ぬ間際まで面倒を看たタイ人の愛人が数年間、遺族年金を受給できるようにしてあげました。愛人が受給するには村長や地域長が執筆や作成する『2人が同一生計を立てていた。死ぬまでの何年何か月間を介護していた、という証明書』を翻訳して日本で提出します。それは年金事務所に出向かないと、それら方法・段取りは教えてくれません。日本の行政システムは、決して政府のほうからは広報しない、国が損をすることは国民には教えない、国民は知らないと損をする、そういうふうになっているのです

Mさんはそこから一番大切な点を語った。

「近年は3年おきとかに、年金・遺族年金に関する法律が変わっています。もし私がタイ人の愛人が受給できるようにしてあげた時と変わってなければ、死ぬまで介護をした親族ならば、成人した男性でも遺族年金が介護した年数に合わせて数年間もらえます。20年間介護した場合は死ぬまでとかになるでしょう。日本人が介護していた場合には、介護だけをしていて、その期間、無収入・無職であった証明書を日本の市役所で発行してもらって年金事務所に提出します」

20歳以上の成人男子でも遺族年金が受け取れる──。

本当にそんなシステムがあるのか?

これに関しては、リタイアメント組の間では「そんな遺族年金制度があったら、日本人はみんな働かなくて済むじゃないの?」という意見以外は出なかった。

しかし「介護離職」「老々介護」が現実に激増している日本──。

介護が終わって、お金がない職がない収入がない成人男子(を含む介護をした親族その他)には生活保護が待っている。

「介護だけしていて働かなかった人間は自己責任なのだから後は野垂れ死にしなさい」と堂々と本音をいう政治家は落選してしまうでしょう。

日本人高齢者を死ぬまで介護をした(愛人を含む)外国人、または成人男性Hさんが遺族年金を受け取れるか。その結果を待ちたいと思います。

 


南島三郎(みなじま・さぶろう)

大阪出身の50代。日本ではマスコミの周りをウロウロしていた。リーマン・ショック後、クレジットカード破産。日本、タイ、カンボジア、フィリピンをグルグル回っている。現在、カンボジアのシェムリアップに家を借り、タイの カンチャナブリ県に農場を所有している。妻はタイ人で娘が1人いる。