俺たちに明日はあるのか ──現在の「負け組」から未来の「負け組」へのメッセージ

第2回 天国に行くのは難関だが、地獄へ落ちるのは容易である

 

バブル時代の日本を駆け抜けた男が語るしくじり人生。「ニッポン低国」の「敗戦」と軌を一にする自身の負け戦はまだまだ続いている。果たして、ニッポンも男も再生できるのか──

 

不動産も中国人に買ってもらうしかない。それも中国政府が資金持ち出しに 規制を掛けたから急速に減退している ……。 淡々と語り続けるK太郎氏。だが、彼は実は決して成功者ではない。どころか、日本における立場は「負け組」「破綻者」であった。「破産者」ではなく、「破綻者」──。その理由は、おいおい述べるとして、「破綻」に至る経緯をK太郎氏に遡ってもらう事にした。

 

クレジットカードを使い回して綱渡り

簡単に言えば、リーマン・ショックの株暴落と一気の円高で、自社も取引先も資金がショートした、に尽きますね。マスコミに踊らされて、老後に備えて資産を増やしましょう、と狂騒するのは愚かな事だ、と話しましたが、その時は私も凡人でした(もちろん、今だって凡人ですよ)。大多数の人と同じように「明日には好転するだろう」と撤退時期を完全に逃しました。

 

まあ、撤退時期なんてのは後付けしたもので、そんなものはなかったというのがリーマン・ショックでした。私は持ち株内の信用取引だったので、被害はまだ他より小さかったですが、周りには追証で破産した人も多かったです。

 

そうやって破産した人間を「重症」、資産が5分の1くらいになった人を「軽症」とすると、借入金をブチ込んで破綻した、というのは「中症」でしょうか。

 

私は、最後はクレジットカードを目一杯まわして生活しておりました。株暴落で資金が全くなくなってしまったので、カードで事業の決済をしていたのですが、株をカードで買っていた、というのと同じ事でしょう。当時、毎月のように東南アジア各国を忙しく飛び回っていました。最初は商用ビザを取得していましたが、短期滞在も多くなり、面倒くさくなって、ノービザで暮らすようになりました。到着滞在許可ですから、旅行者扱いです。体調を崩す事も多く、軽い下痢だな、ちょっとした風邪だな、とか油断していると、アメーバ赤痢だったり、インフルエンザだったりする事がありました。こじらして入院になったりすると、その後のスケジュール調整が大変で、大きな商談──まあ商社の取引に比べたら個人的なクソみたいなものですけど──を逃したりするので、その都度それぞれの病原菌に合った抗生物質などを現地の外国人御用達の病院でしっかりもらっておりました。ですから、海外旅行保険の付帯したクレジットカードは必需品でした。

 

リーマン・ショックで全てを失った

以前、K太郎さんのパスポートを見せてもらった事がありましたが、増補(パスポートに40ページを付け足すこと。バンコクの日本大使館領事部では、すいている時なら1時間前後で可能。約2000円)のページも各国の出入国スタンプでなくなりそうでしたね。そんなんで旅行者扱いになるんですか?

全く問題なかったですね。ある時、バンコクにある有名病院の日本人専用セクションの係と仲良くなりましたが、「K太郎さんはブラック(要注意人物)なんですけどね。まあブラックでも通る(短期旅行者扱いでキャッシュレスの審査が通る)人もいるんです」と言われましたので、それからはしっかり、【お持ちの海外旅行保険付きクレジットカード】の欄に──それまでは面倒くさいので書かなかった事も多かったのですが──全部のクレジットカードの番号を書くようにしました。

 

ああ、あれですね。掛かった医療費を 保険会社で按分(あんぶん:比率に応じて 金額や分量をそれぞれ割り振ること)す るってやつ。でも、医療費が日本円で5 000円程度とかだった時も、それをす るんでしょうか? 事務手続きの手間の ほうが大きいと思うんですけど?

しないでしょうね。おっしゃる通りで、手続きのほうが面倒。人件費がもったいない。パスポートのコピー取って、FAXして、先方にも担当1人置いてもらわなきゃならない。多分3万円以上とか、マニュアルがあると思います。これは保険会社の海外部門で働いている社員しか知りえない事でしょう。推測ですが。

 

元社員でリタイアした人をこちら側に 引き込みますか(笑)。

それで素人なりに考えて、按分されるのなら、各社の負担が少ないほうが、こっちへの風当たりが小さくなる、と考えました。所持カードの欄には、A○Aカード(東京海上火災保険=現・東京海上日動火災保険)、J○○トラベルプラスカード(日本興亜=現・損害保険ジャパン日本興亜)、セ○ンGカード(損害保険ジャパン=現・損害保険ジャパン日本興亜)、イ○ンGカード(あいおい損害保険)、○天カード(三井住友海上火災保険)、パ○コカード(S自動車火災保険)と。イ○ミヤカード(現在はカード事業から撤退しているらしいですが)、これは日本出国前申し込みで14泊15日の海外旅行保険の証券を取り寄せる事ができて、現地での電話連絡も省けたので、病院直行でキャッシュレス治療ですから便利でした。まあ、引き受けは東京海上火災で重複したりしますけど。で、所持カードの欄には前記の7種を記入して、16桁の番号も全部書きますので、けっこう手間かかりましたよ。

 

で、それらが全部リーマン・ショックで吹っ飛んだ?

そうです。

 

と、今は屈託なく語るK太郎氏。続きはまた次号で。

 

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南島三郎(みなじま・さぶろう)

大阪出身の50 代。日本ではマスコミの周りをウロウロしていた。リーマン・ショック後、クレジットカード破産。日本、タイ、カンボジア、フィリピンをグルグル回っている。現在、カンボジアのシェムリアップに家を借り、タイの カンチャナブリ県に農場を所有している。妻 はタイ人で娘が1 人いる。

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