俺たちに明日はあるのか ──現在の「負け組」から未来の「負け組」へのメッセージ

第5回 タイで不渡り小切手をつかまされる

バブル時代に破綻してしまった男はこのままでは死ねない。
クレジットカードのポイントで貯めたマイレージを使って、今も東南アジアを飛び回っている。
タイでは、金を騙し取られたり、報酬を踏み倒されたり、交渉で殴られたり、苦難は続く。
果たして、しくじり人生から脱却できるのか──。

 

タイの警察官は日本のヤクザと同じ

 

 日本では自己破産対象者──だが、その金融システムの盲点(?)を突いて、日本と東南アジアを結ぶビジネスを継続し続けたK太郎氏。東南アジアでのビジネス・トラブルも幾度となく体験していた。

タイでの小切手決済で日本と一番違う点は、不渡りは「刑事事件」扱いになる事ですね。否「出来る事がある」としたほうが正確ですかね。期日に銀行決済ができないと、警察署に小切手を持っていくのですが、普通は振出人(または法人)が登録している住所の管轄署に持って行きます。そこで担当が決まるわけですが、彼ら警察官にとっては副収入チャンス。

副収入は主収入ですから!

小切手の規模(金額)、両者からどれくらい「引っ張れそうか」で、俺がする! と立候補(笑)して、担当官が決まります。そりゃ、百戦錬磨ですから、その嗅覚は大したものですよ。謝礼や示談その他……を的確に推測します。まず、不渡り小切手についての書類の作成だけで、タイ人だと2000バーツくらいなんですが、外国人だと最低5000バーツですね。

そして、振出人(または法人代表者)に担当官が呼び出しを掛けるんですが、2週間応じないと、検察庁に「業務」が送致されます。そうなると、担当官は副収入にならないので、「もう少しで応じそうだ」などと言って、延々と先延ばしにするわけです。最終手段では、振出人が弁護士を伴って、たとえば金曜日の夕方に警察署に赴いたという段取りをするのです。金曜日の夕方ですよ。振出人が来たので、警察署に来てください、と電話が来るのです。こっちは今チェンマイですよ。無理です。代理人を頼もうにも金曜日の夕方なのでどうにもなりません。で、「呼び出しに応じなかったので、もう刑事事件にはなりません。検察庁には持って行きません」となるのです。この時点で振出人側からは当然の……となって、副業でウハウハ、となるのです。

対策としては、期限になったら、弁護士を使って、一気に検察庁に持っていく事です。弁護士の日当とその他もろもろは掛かりますが(不渡り小切手をつかまされた上に泣きっ面に蜂ですが)、そうするしかありません。弱い立場から毟(むし)るのが連中のやり方です。

民事裁判で勝訴しても意味がない

刑事事件にならないなら、民事裁判ですが、もう不渡り小切手を振り出した側は出廷しない、と断言できます。いちおう被告欠席で勝訴して、タイの大手都銀(バンコク、カシコン、クルンタイ、サイアム・コマーシャル、アユタヤ銀行などなど)の小切手振出人(法人)名義の預金が差し押さえられるという書類は出ますが、ここでも有力な弁護士を使って、速攻で決めないとダメですね。銀行側はトラブルを嫌いますから、「調べたけど、(その名義の口座は)ない」とウソつかれたり、とにかく、外国人の案件は面倒くさがって、まともに対応なんかしてくれません。

タイ人の場合は、知り合いの警察官(前述とは逆の立場で活躍だ~)なんかを連れて、「裁判所の預金差し押さえ許可が出ているんだ。振出人名義の口座がないなら『ない』、口座にお金がないなら『ない』、と一筆書いてくれ!」と、段取りします。まあ振出人も悪知恵を教えてくれる弁護士から「預金残高は0にしとく事」と言われていますから、預金額がすでにない、は現実的です。預金差し押さえの判決書類には預金以外の資産も差し押さえできると入っていますから、振出人の居場所が分かっている場合は、そこへ出向くことになります。

『ミナミの帝王』萬田銀次郎がバンコクを舞台に大暴れ……で、これくらいの事は描いてほしかったですが、ゴーゴーガールに惚れ込んだ男の借金回収話で期待はずれでした。金融漫画の金字塔『ナニワ金融道』の青木プロに期待したいですね(笑)。

 


南島三郎(みなじま・さぶろう)

大阪出身の50代。日本ではマスコミの周りをウロウロしていた。リーマン・ショック後、クレジットカード破産。日本、タイ、カンボジア、フィリピンをグルグル回っている。現在、カンボジアのシェムリアップに家を借り、タイの カンチャナブリ県に農場を所有している。妻はタイ人で娘が1人いる。

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