俺たちに明日はあるのか ──現在の「負け組」から未来の「負け組」へのメッセージ

第7回 詐欺事件に介入して利益を得る行政機関

日本のバブル時代に破綻してしまった男は、タイで再起を目指していた。
しかし、女には金をたかられ、友人からは偽札をつかまされ、日本人の詐欺師には食い物にされ、相も変わらず災難続き。
タイで復活しないと、日本に戻ることもできない。
果たして、故国に凱旋できるのか──。

容疑者と被害者の間に入って手数料を稼ぐ謎の治安組織

南島さん、今回は「もしも~」ということで話しましょう。あまりにもヤバかったら、「ハッハッハ、冗談さ。作り話に決まってんじゃん。まあ、漫画の原作かな~」と、すべてなかったことということで……。

そうですね。今回はそうしましょう。

一例として、詐欺事件に相当する案件があって、十分な立件証拠があって、容疑者を警察署に連行して、「これを詐欺で立件する事は簡単なんだ。立件され、刑務所にぶちこまれたくなかったら、被害者に返済する事だ。一括でダメなら分割でな。返済契約書も作ってな。小切手を切れる場合は小切手での返済契約でな。ここでは、小切手の不履行は刑事事件になるんだからな」ということで、詐欺事件の容疑者と被害者に弁済契約をさせ、被害者からは30~40%の弁済成功報酬をいただきます──というようなことを生業とする「警察組織」があったらどうでしょう。

そりゃ、儲かりますよね、その組織は。

まあ、小切手を切れるような立場の労働許可証を持った長期滞在者でも詐欺を働くような国だから、組織も「これは被害者の立場に立った正義の行動だ!」と自負できるわけです。

で、このアイディアを「へっ、へっ、へっ、ツーリスト・ポリスのみなさん~、こうすれば儲かりまっせ! 副収入(給料より多い本収入)バッチリでっせ~‼」と持ち掛け、計略したのが日本人だったりしたら(仮名はI浦としておきます)。

それで詐欺事件の容疑者が完済すれば、100歩譲って、被害者の事を考えた正義のお仕事と言えない事もない。容疑者は、(散財したので)すでに金はなく、塀の中にブチ込まれる事はあっても、被害者は金銭的弁済を受けられない事がほとんどだからだ。

しかし、このときの容疑者は300万円を分割弁済中に90万円の弁済でギプアップ。ここで問題が発生した。組織と日本人のI浦は「40%の成功報酬(この場合は120万円ですね)は先にいただきます」と言って受け取り、被害者にはいっさい、弁済金を戻さなかったからだ。受け取ったのは組織とI浦だけ。

で、被害者は日本大使館の領事部に相談しました。

叫ぶ詐欺師とお上には勝てない

領事部では、警察庁からの担当官が2年間の任期で出向している。赴任したばかりのN西さん。前任者もN西さん。血のつながりはない(ダイ・ハードにあるセリフ風に)。

「I浦ってのは完全に犯罪者。公権力を利用して金儲けをしているトンでもない輩!」

これは事件だ、と力説した。

ん? I浦が完全に犯罪者なら、それに便乗して金儲けをしている組織は……。

「パスポート紛失時の被害届の作成に日本大使館領事部の職員は警察に一緒に行ってくれない」「市場でボッたくられたのに何もしてくれない」「領事部の営業時間に電話を入れたら、留守電になっていた」という、まあ、クレーマー日本人コミニティーでは「仕事をしない」と悪名が高い日本大使館領事部ですが、このときは動いてくれたのです。

その夜、I浦は、領事部に相談したこの被害者に「これでツーリスト・ポリスはお前の敵になった。お前を逮捕する案件は5件ほどある」と脅迫してきたのです。

翌日、それも領事部で相談すると、担当のW井領事は「お前こそ、もうすぐ捕まるよ、と言ってやれ」という返答だった。

しかし、新聞の第一面に『警察が公権力を使って金儲け。事件にされたくなかったら金を寄こせ! と脅迫』と大々的に報道するようにならないのが発展途上国の常。相手は組織のバックアップもあるため、詐欺で逮捕されることはありませんでした。

結局、被害者が、別の管轄にある警察に告発していた横領容疑で、I浦だけ呼び出して、容疑者が払った返済金を吐き出させました。

「俺がケーサツの取り分まで全額かよ! 大赤字だ~‼」とI浦君は叫んでおりましたが、自業自得です。結局、被害者は告発を取り下げて、示談となりました。

ちなみに、共謀した警察組織は、もちろんお咎めなしです。

いや~、もしも、傷害も殺人も「立件されたくなかったら金寄こせ」なら、世界有数の収益率を挙げる巨大企業が誕生すること、間違いなしですね。

漫画原作としてはリアリティーがなくてボツでしょうか?

 


南島三郎(みなじま・さぶろう)

大阪出身の50代。日本ではマスコミの周りをウロウロしていた。リーマン・ショック後、クレジットカード破産。日本、タイ、カンボジア、フィリピンをグルグル回っている。現在、カンボジアのシェムリアップに家を借り、タイの カンチャナブリ県に農場を所有している。妻はタイ人で娘が1人いる。

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