フィリピンの「常識」を知らずに仕事ができるか! 第11回

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第11回 フィリピン人は古いモノには興味がない?

フィリピン人は、ある意味では、合理的でリアリストです。モノは使えればそれでいいし、古いモノをありがたがることもありません。今回は日本人とフィリピン人の気質の違いをいくつかの実例をあげて説明いたします。

 

 

趣味よりも実用が大事

フィリピンにもスペイン統治時代の教会や要塞の遺跡、それ以前の時代の史跡があちらこちらに残っていますが、他の東南アジアの国と比べると、ちょっと見劣りがする気がします。

保存状態が良くないということもありますが、それ以前にフィリピン人自体がそれらの遺跡や史跡にあまり興味がないように見受けられるのです。もっと、ちゃんと学術的に掘り下げて調査すれば、それなりに定説を覆す発見やフィリピン独自の視点から考察した新説も生まれたと思うのです。

現存している遺跡や史跡はどちらかと言うと、フィリピン人が自発的に価値を認めて後世に残すために保存しようとしたというよりも、外国人の学者などに、これは歴史的価値がある、と言われて、それじゃ保存しましょう、となったように邪推してしまいます。

例えば自動車やオートバイでも、かなり古い年式の物がいまだに現役で走っていますが、それは、いわゆるクラッシックカーとか、ビンテージカーという物とは全く違います。使えるから、まだ動くから使っているという感覚です。

前に住んでいた町の中古車屋に40年くらい前の日本車が売ってました。日本ならちゃんと整備すれば、かなりのプレミアがついたと思いますが、外装も内装もボロボロで、エンジンもオリジナルではなかったので、本当の実用品として売買されているんだな、とその時思いました。まあ、前々からフィリピン人はつくづくメンテナンスが苦手な人が多いなと思っていましたから、外観だけでも面影を留めているのはすごいことかも知れません。

 

お金はあればあるだけ使ったしまう

以前、新紙幣・貨幣の発行のことを書きましたが、その際に、発行当初、フィリピン人は新紙幣・貨幣を額面よりも高い値段で手に入れて、それを周りの人たちに自慢するという我々からすれば逆の発想をしているのにビックリしたことも書いたと思います。新紙幣・貨幣は今後どんどん普及していくのに対して、旧紙幣・貨幣は数が減っていくから希少価値が出るのではないか? というのが、我々の考えなのですが、フィリピン人は違うようです。

旧紙幣・貨幣は時間が経てば使えなくなってしまうので仕方がないのかも知れません。それに、記念紙幣や記念硬貨も普通に流通していて、たまにお釣りでもらったりします。これらの紙幣・貨幣も特に額面以上で取引されているとは聞いたことがありません。

日本なら古銭・切手などを扱うお店がありますが、フィリピンでは見たことがありません。マニラあたりの骨董品屋には置いてあるのかも知れませんが。

これは、統治者が、スペイン→アメリカ→日本と変わり、その度に前統治者の通貨が使えなくなったという苦い経験があるからなのかも知れません。一夜にして持ってた通貨が無価値になってしまった経験があれば、明日はどうなるか分からないから、お金は使える時に使ってしまおう、となっても不思議はないですね。

太平洋戦争時代の軍票を知人が見せてくれたのですが、戦後70年以上経っているのに、思ったよりきれいで驚きました。ただし、今の紙幣とサイズがほとんど同じなので偽物? と思い聞いてみると、こんな紙切れに偽物作っても誰が買うの? って言われてしまいました。

フィリピン人の、宵越しのお金は持たない、という江戸っ子みたいな気質の裏には、被征服者の苦い記憶があって、それに我が国が加担していたと思うと、後ろめたい気持ちになりました。

 


滝 修二(たき・しゅうじ)

日系金属加工会社 フィリピン現地法人代表

50代半ば。大学卒業後、地元の商社に就職。その後、地方公務員となる。フィリピン在住は10年余。日系金属加工会社のフィリピン工場で生産管理・品質管理を担当した後、現職。日夜、不良品対策や現場指導に頭を悩ませている。趣味は読書と釣り。