在タイ日本人コンサルタントの本音 Vol.8

第8回 麻薬で捕まる日本人が絶えない

これまで掲載されておりました7回目までは、昨年以前までの事例を取り上げておりました。第8回目の今回からは、弊社が最近扱った事案や事件に関してお話しさせていただきます。弊社は6人のタイ人弁護士が所属しており、基本的に企業顧問を主体とする法律事務所ではありますが、もちろん、それ以外に刑事・民事の訴訟を請け負うことも多く、また日本大使館やタイ警察からの依頼を受ける場合もあります。皆様が普段ニュースなどでご覧になる日本人がらみの事件では、かなりの割合で弊社で事情聴取立ち会いからその後の裁判などを請け負うことが少なくありません。そんな事例の中から、最近急増している日本人による麻薬事犯についてお話しいたします。

 

タイの刑罰を甘く見てはいけない

ここ2〜3年でしょうか。タイ警察からの連絡で、日本人が薬事犯で逮捕されたので来てほしいという依頼が急増したように感じます。タイと言うと、何か開放的なイメージがあるのでしょうか、旅行で来て、つい誘いに乗ってしまったり、タイで働いている方でも様々な誘惑から手を出してしまう方もいるようです。
実はタイでは約100万人の麻薬常習者がいると言われ、使用したことがあるという数を入れると、その数は300万人近くに達すると言われます。確かに筆者も街角やタクシー内で誘われた経験がありますが、忘れてはいけません、タイは薬事犯についての刑罰が特に重い国でもあります。
筆者が逮捕された日本人のもとに駆けつけた場合、かなりの割合で一番初めにされる質問は「私はこれからどうなるのですか」というものですが、ここで筆者が刑罰などについて説明すると、その被疑者は絶望の表情へと変わります。本当に辛い瞬間です。

販売目的だったら死刑も

誌面の都合上、詳しくは書けませんが、タイの刑法では、大きく分けて3つの判断基準があります。
一つは「薬物の種類」。大麻や合成麻薬の場合は比較的刑罰は軽く、ヘロインやコカインなどの使用・所持の場合は比較的刑罰が重くなります。
また、「所持量」によっても刑罰の重度が分かれ、薬物の種類によって違いますが、比較的少量であれば、5000バーツ以下の罰金刑で済むものから、10年以下の懲役(外国人は禁錮)に処されるものまであります。
最後に「処分目的」。処分目的とは、自分で使用するためか、販売目的か、と言うことですが、販売目的である場合は、もちろん刑罰が重くなり、たとえ自己使用目的であっても、覚醒剤などは0・5グラム以上所持していた場合は、販売目的と判断されます。
販売目的であると判断された場合は、最高で死刑や無期懲役の可能性もあります。初犯の場合、執行猶予がつく場合が多い日本と比べると、かなり厳しいと言えます。

止められない人間は軍の矯正施設に送致

昨年から現政権の「単なる収監よりも矯正に力を入れる」という方針により、麻薬常習者が売人でない場合は、刑務所ではなく、麻薬矯正局に送られる場合が多くなりました。単なる使用で、なおかつ所持量が一定量以下の場合は、逮捕(留置場)から簡易裁判(拘置所)の後、矯正局に送られ、軽微な場合はいったん釈放(国外出国禁止)され、その後90〜180日間、週に1度の矯正局への出頭を命じられます。つまり週に1度、検査を行ない、指定期間使用が認められない場合は、期間終了後、裁判所にて刑罰の執行停止処分となります。もしこの期間に検査で陽性反応が出た場合や、出頭しなかった場合、また使用頻度が重度だった場合は、軍基地内にある矯正施設への送致となります。
筆者の見る限り、この指定期間を未使用で乗り切る方は本当に稀で、ほとんどの方がこの監視期間中に使用してしまい、矯正施設への送致となっています。軍基地内の矯正施設では、日々厳しい教育と矯正が行なわれ、矯正施設の目的である「もう2度と薬物には手を出したくない」と思わせるには十分なようです。矯正施設の生活環境はほぼ刑務所と同じで劣悪ですので、もしこれをご覧の方で何らかの誘惑に遭遇した場合、タイでは薬事犯は重罪であることを思い出していただければ幸いです。

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内田知春(うちだ・ともはる)

アドバンスト・マネージメント・ジャパン株式会社代表取締役

1974年生まれ。立命館大学大学院国際関係科終了。インターンシップで初来タイし、終了後にタイの大学に就職。その後、貿易会社を起業する。企業間の裁判を何度か経験した事から、そのノウハウを活かすためにコンサルティング会社を設立。タイの政財界とのつながりを軸にプロジェクトの立ち上げや法律・財務のコンサルタントとして活躍中。タイの優秀企業賞を2回受賞。アジア経営者連合会タイ支局の副支局長も務める。「パワー・コンサルティング」を信条に総合格闘技の修練に励む。

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