在タイ日本人コンサルタントの本音 Vol.9

第9回 タイにおける仮想通貨取引について

昨今、仮想通貨について報道されることが多くなりました。興味や関心を持つ人はもちろんですが、実際に行なっている人も増えております。その仮想通貨がらみの犯罪について、タイでの事例をお話しましょう。

 

軍政は取り締まりを強化

一般的に暗号通貨やデジタル通貨などと呼ばれる仮想通貨ですが、タイは日本など諸外国に比べて法整備が遅れているのが現状です。しかし、遅れているからと言って、野放しになっている訳ではなく、軍事政権は取り締まりを行なうべく法整備を着々と進めております。昨年までは政府内に仮想通貨に関する専門の部署はなく、取り締まりの根拠となる法も明確ではない中で、筆者も何度か官公庁の勉強会という形で、日本の仮想通貨における法整備を参考に意見を述べさせていただきました。

タイでは本年8月現在、仮想通貨取り締まりの根拠として、大きく分けて2つのポイントがあると言えます。一つは「仏暦2510年通貨法」。ご覧の通り、すでに制定されて50年以上経過する法律ですが、基本的にはタイ国政府が発行する、もしくは認めた通貨以外を製造・使用することを禁じています(第9条)。

タイでの仮想通貨取引に詳しい方ならご存知かと思いますが、タイでは一部の銀行と登録されている取引業者でのみ、仮想通貨の購入・売買が認められており、取り扱いが可能な種類も少数に限られています。

また本年に入って再度登録義務が課せられ、申請期限内に登録された業者にのみ仮想通貨の取引が認められました。認められたといえ、未だ明確な法整備が整っていない状況ではありますが、とりあえず、認可業者以外は、個人間取引も含め禁止されているのが現状です。

ちなみに、この通貨法に違反すると、3年以下の禁錮、もしくは5万バーツ以下の罰金、またその併科に処されます(第35条)。

労働許可がない外国人も納税が必要

もう一つのポイントは「所得税法」。詳細は控えますが、基本的に日本では収入に応じて最高所得税率45%と住民税10%の最大55%の税金が仮想通貨収入に課せられます。タイでもSEC(タイ証券取引委員会)の定めたところによると、仮想通貨で得た利益に関しては15%の税金が課されます。しかし、気をつけなければならないのは、利益を得た者(日本人)がタイに年間180日以上滞在している場合は、日タイ租税条約が適応され、タイ国で個人所得税を納めなければなりません。タイの個人所得税は日本同様、累進課税となっており、最大で35%となります。つまりタイにて労働許可証を取得していない外国人(日本人)でも、タイに年間180日以上滞在する外国人は、これらに対して納税の義務があり、脱税で検挙される可能性があります。

以上2つのポイントをもって、タイ政府は仮想通貨取引の取り締まりを強化しているのですが、今年に入って仮想通貨に関わる詐欺罪での検挙が相次いでいます。

日本人に逮捕状が発行される

記憶に新しいところでは、今年8月9日に仮想通貨「ドラゴンコイン」への投資詐欺として有名俳優が逮捕されたニュースが報道されましたが、他にも仮想通貨に関する事件は多く報道されており、今年に入ってタイでも仮想通貨絡みの事件に対する注目度が上がっていることから、警察も取り締まりに力を入れております。

そのような中、日本人も例外ではなく、昨年末から今年始めにかけて、ある日本人男性が、在住の日本人を通してタイ人約100人に、ある種の仮想通貨を個人売買し、その直後、暴落(価値が約10分の1以下に)したことから事件となりました。

日本では仮想通貨取引に関して、いわゆるインサイダー取引を取り締まるような法律は未だありませんが、この場合はその日本人販売者があたかもそのコインの製造元関係者であるように吹聴していたことなどもあり、通貨法違反と詐欺で立件(逮捕状発行済みの連絡はありましたが、筆者の執筆時現在では未確認)が進められています。

日本では合法的な取引であると考えられる場合でも、タイでは未だ法整備途中であるということもあり、他の案件でも似たようなことはありますが、「特に被害者が多い場合」「被害者がタイ人の場合」は、より罪の重い詐欺罪での立件の可能性もあります。

読者の皆様の中にタイにて仮想通貨取引を行なっておられる方がおられましたら、法整備動向に十分に気をつけながら取引を行なわれることをお勧めいたします。

 

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内田知春(うちだ・ともはる)

アドバンスト・マネージメント・ジャパン株式会社代表取締役

1974年生まれ。立命館大学大学院国際関係科終了。インターンシップで初来タイし、終了後にタイの大学に就職。その後、貿易会社を起業する。企業間の裁判を何度か経験した事から、そのノウハウを活かすためにコンサルティング会社を設立。タイの政財界とのつながりを軸にプロジェクトの立ち上げや法律・財務のコンサルタントとして活躍中。タイの優秀企業賞を2回受賞。アジア経営者連合会タイ支局の副支局長も務める。「パワー・コンサルティング」を信条に総合格闘技の修練に励む。

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