在タイ日本人コンサルタントの本音 Vol.4

第4回 タイで労働許可証を取得する

タイに進出する日本企業は年々増えておりますが、それに比例して、進出した日系企業と現地パートナーとの間のトラブルも増加しています。
前回の第3回目は「法人設立」をテーマに取り上げました。今回はそれに関連して、「労働許可証」について解説いたします。

 

最低資本金は200万バーツ

第3回「タイで法人を設立する」の中でもご説明いたしましたが、外国人がタイで労働許可証を取得する場合──、

(1)資本金200万バーツ(約670万円)以上の株式会社であること(BOI=タイ国投資委員会の奨励案件を除く)
(2)外国人1人の労働許可証(以下WP。Work Permitの略 )につき、最低4人のタイ人を雇用する以上が条件となります。

つまり、最低でも200万バーツの投資をして、4人のタイ人の雇用を生み出す事が外国人労働者には期待されているわけです。
他にも、WPを取得する場合、必要書類に学歴証明(通常、労働許可証取得には大卒の資格が必要ですが、近年はそうではないようです)は当然の事、職歴証明の提出が義務づけられています。

労働許可が取れない職種がある

これは、タイに新たな技術を伝承できる能力、そして、タイ人には難しい職業ゆえに外国人労働者が必要である、という理由づけを求められているとも言えます。その証拠に、タイには外国人職業区分法という法律があり、この中で、建設現場での肉体労働や、レストランでの接客などの単純労働に外国人が就くことは禁止されており、当然、労働許可証を取得することはできません。
また、必ずしも外国人である必要のない仏像製作や医師・弁護士などの特殊・専門職も法律で禁じられています。これは一部の国を除いて同様かと思います。
つまり、タイ人の職を奪わずに、タイの国に貢献できる外国人が求められていると言えます。
では、これらはどのようにチェックされるのでしょうか。

 

労働許可の申請時に必要な書類

外国人がWPを取得するにあたって、得られるビザは、おおよその場合Bビザ(例外あり)となりますが、Bビザの取得時に、まず法人の状況、つまり、資本金や資本構成・納税状況が調べられます。
このBビザだけでは、もちろん働くことはできません。それをクリアすると、そのBビザでの滞在可能期間(通常90日)の間にWPの申請を行ない、3〜5日の審査期間を経て、晴れてWP取得となります。
ただし、この申請時に提出しなければならない書類の中に、従業員が4人いることを証明するための書類があり、以下の書類を準備しなければなりません。

(1)従業員に実際に給料が支払われている、雇用を示す月次決算書類(新設の場合、例外あり)
(2)従業員4人がオフィスにて就業している写真
(3)従業員が加入している社会保険の支払い証明
(4)証人としてこれらを労働局に申請する申請者が法人内にて従業員とともに写っている写真
(5)従業員のIDカードのコピー等々

特に(2)と(4)に関しては、いかにもタイらしいと言えます。
以前であれば、写真も簡単なものだけで、写っている人間に関しても大して注視していなかったのですが、現在はIDカードの写真と見比べるほど、用心深くチェックを行ないます。
軍事政権が成立する前までは、これほどのチェックもなく、当然のように従業員の名義貸しなどが行なわれており、日本人経営の会社を覗いても、実際には従業員が1人しかいないという事はざらにありました。
もちろん、現在も名義貸しを利用してWPを取得している法人も少なくないのですが、こういった会社には以前から30社に1社ほどの割合で、イミグレーション(入国管理局)、もしくは労働局の係官が抜き打ちの査察に訪れていました。

 

軍事政権は外国人への締め付けを強化している

しかし、軍事政権になってからは、5社に1社ほどの割合で査察係官が訪れています。査察時に、従業員がいない、もしくは届け出と違う就業状態・事業内容であった場合、多額の賄賂や罰金の要求、運が悪ければ連行されて国外退去と事例も少なからず発生しています。

書きにくい事ではありますが、現在の軍事政権は、成立以前から外国人排斥的な意味合いのデモを支持していた部分があり、実際に軍事政権が成立した後、外国人への締め付け傾向が見受けられます。

現在は、不法滞在者の取り締まりも度々行なわれておりますが、良い意味では、これらの違法行為を行なう外国人の取り締まりにより治安が改善されることが期待できると言いつつも、合法的に滞在・就労する外国人への締め付けが強化されているのも事実です。

合法的にWPを取得する事が手続き的にもコスト的にも難しいがゆえに、不法就労者が増えるという悪循環に陥っているとも言えます。
今後、タイでのWP取得を予定されている皆様は、日々変わる法律に注意しながら、楽だという理由で名義貸しなどの安易な方法を選ばず、いつ査察に入られても大丈夫なように、しっかりと法律通りの手続きを進められることをお勧めいたします。

 

 

 

 

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内田知春(うちだ・ともはる)

アドバンスト・マネージメント・ジャパン株式会社代表取締役

1974年生まれ。立命館大学大学院国際関係科終了。インターンシップで初来タイし、終了後にタイの大学に就職。その後、貿易会社を起業する。企業間の裁判を何度か経験した事から、そのノウハウを活かすためにコンサルティング会社を設立。タイの政財界とのつながりを軸にプロジェクトの立ち上げや法律・財務のコンサルタントとして活躍中。タイの優秀企業賞を2回受賞。アジア経営者連合会タイ支局の副支局長も務める。「パワー・コンサルティング」を信条に総合格闘技の修練に励む。

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