すべてはタイから教わった Vol.2

第2回 私がタイ語を学ぼうと思った理由

 

現在の私は、日本のとある会社に勤めながら、時おり、タイ語通訳・翻訳の仕事もやっております。今のようにタイ語ができるようになるまで、実はタイ語学校では一度も習った事はありません。ゆえに自分では決してタイ語のエキスパートなどとは思っていませんが、なぜ私が、タイ語を覚えようと思ったのか、どうやってここまでに至ったのか、については、もしかしたら少しは皆様のお役に立つかも知れません。タイ語を学んで良かった理由なども語ります。

 

英語がほとんど通じなかった

現在、観光旅行で会うタイ人の範囲から言えば、ほとんどのタイ人がそこそこの英語を話せるかと思います。しかし、私がタイに来始めた頃は、ほとんど英語が通じませんでした。繁華街のレストランや、観光地周辺ではそこそこ通じましたし、タクシーやトゥクトゥク(三輪自動車)も、そこそこ通じました。しかし、普通の雑貨屋やスーパー・マーケットなどでは、数字すら怪しく思えました。今では、タイ語で訊いても英語で答えが返って来る時もあるという事からは、隔世の感があります。

 

その頃(1992年頃)のバンコクは当然BTS(高架鉄道=スカイトレイン)などなく、タクシーも交渉制。バックパックで少しでも旅費を安くあげたい私は、当然、値引き交渉には力が入りました。観光地の周辺では、土産物を買う時も言い値の半分で買う事が目標だったりしたものです。

そして、タイを何度も訪れるうちに、いい加減、土産物も買わなくなり、普通 の買い物だけになりました。雑貨屋とか スーパーなどで買い物するのには値引き交渉もありません。付いてる値札で買うだけ。すると残るは、タクシーやトゥクトゥクとの交渉だけになっていきました。はじめ、分からないままに英語で交渉していましたが、同じ場所へ行くにも、言われる料金はマチマチ。10 バーツ(約40円=1992年~1993年当時。以下同)から20バーツ(約80円)の開きがありました。平均すると60バーツ(約240円)くらいの距離だったと思います。そこで、タイ語の数字と「まけて!」というタイ語を丸暗記して交渉してみました。するといきなり、40バーツまで下がり、その後、最初の半額である30バーツ(約120円)まで下がりました。

 

さらには、運転手や土産物屋の態度も明らかに親し気に変わってきました。「外国人が自分たちの言葉を使う事が嬉しいんだ」そうです。自分の国とアイデンティティーに誇りを持っているんだなぁ、と感心したものです。

 

すぐに挫折したタイ語学習

こうした事に気を良くして、私のタイ語学習にも熱が入りました。しかし、すぐに壁に当たります。それは発音でした。タイ語には日本語にはない5つの声調があります。高声、中声、低声、下から上に上がる。上から下に下がる。これがどうしてもできないのです。上がる、下がる、は、いいのですが、高中低がどうにも分かりませんでした。

 

挫折感に襲われていた時、ふたつの打開策を思いつきました。ひとつは、もう細かいことは気にしない、という開き直り。もうひとつは、かつて英語を学習した時の応用です。それは、歌って覚えるという事。ちょうど日本でタイ人の友だちが出来た事もあって、日本の歌がタイ語でもカバーされている事を知りました。『花』とか、『もう恋なんてしない』などです。その友人を通じて、それらのテープ(その頃はまだテープでした)を手に入れた私は、聴いたままをカタカナに書き起こしました。

 

実は学生時代からハードロック系のバンドをやっていたので、曲を聴いてコピーする事には慣れていました。かつては、ギターやベースの音をコピーしましたが、タイ語学習では言葉をコピーすることに応用したわけです。もちろん、意味など分かりません。ただ聴こえたままにカタカナに書き起こししました。中には、どうしてもカタカナにできない発音もありましたが、そこは似た発音とアルファベットを代用しました。例えば、「~です」にあたる「krap」では、「p」はプではないので、クラッ「p」と書くような形です。

 

タイ文字の読み書きを後回しにするな!

ただ、その時でも、タイ文字を学ぶ気には慣れませんでした。語彙を増やす事と、聴き取りだけで精一杯だった事もありますが、やはり、あのヘビがのたうってるような文字には抵抗があったのだと思います。私がタイ文字を読み書きできるようになったのは、かなり後からだったのですが、いま思えば一緒にやるべきだったと後悔しています。というのは、前述の通りに、タイ語はカタカナでも、英語のアルファベットでも、書ききれない発音が多々あるからです。まして、高中低など書きようもありません。

 

また、後に詳しく書くつもりですが、タイ文字は発音記号とも言えるものです。表音文字というのだそうですが、音を文字にしているので、読めれば、発音も意味も分かるのです。なので、これからタイ語を習い始めたいとお考えの方には、ぜひ文字と同時に習得する事をオススメします。

 

このようにして、少しずつタイ語を覚えていったのですが、会話ができるようになるにつれ、タイ人の態度も明らかに好意的になりました。何度か訊いた事があるのですが、多くの人が、タイ語を話す、また話そうとしている外国人に対しては、歓迎の気持ちが起きるので、騙したりボッたくろうという気持ちも起きないのだそうです。

 

タイでも、ビジネスには英語が多く用いられています。しかし、発音が多少おかしくても、少しでもタイ語を話そうという姿勢を見せる事で、相手の態度が変わることもあります。

 

———————————

そむちゃい吉田

フリーライター

在タイ17 年目。過去にタイで起業 した事もあるが失敗。現在、某日系企業のマネージャーを務めながら、通訳・翻訳もこなし、フリーライターとして取材に歩く日々を送っている。主な著作に、『大人のタイ極楽ガイド』『大人のイラスト会話タイ語トラベル』(いずれも有楽出版)がある。現在、BizAiA! にて、タイのニュース記事やコラムを執筆する他、タイの歌謡曲情報サイトにも寄稿中。

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here