すべてはタイから教わった Vol.3

第3回 タイで起業して分かったこと

 

現在は、とある日本の会社に籍を置きながらライターをしている私ですが、タイに仕事として来たのは1999年4月末。知人が投資してバンコクに設立された会社に誘いを受けて赴任しました。しかし、その会社は諸々あって、いわば見解の違いで1年を待たずして辞める事になってしまいました。そして、私の退社を知った取引先の方に声をかけてもらい、新しく会社を起こす事になったのですが、その時の経験は今でも私自身のタイでの礎になっているように思います。

 

すべて自分で登記した法人設立

会社を辞めて、少し経った頃に、取引先の方が連絡をくれました。2人で新しく会社をやらないか、というものでした。君の語学力を貸してほしいとの事でしたので、少し悩みましたが、やってみる事にしました。しかし、そこからが大変でした。

 

肝心の仕事は、その人がほとんどをやってくれたのですが、私は事務方の仕事 を一手にやる事になったのです。会社を設立するために何をどうすればいいの か?今のように気楽に頼める代行業者もまだほとんどなく、頼りはネットにわ ずかに見つかる情報のみ。日本語で見つかればしめたもの。それがない時は、英語で探しました。

 

会話には実務上も不自由はなくなっていたものの、まだ読み書きはできなかったので、タイ語での資料探しは、困難そのもの。時間ももちろんかかりました。

 

そんな折に、紹介されたタイ人会計士さんが色々とアドバイスをくれて、登記の際も同行してくれる事になり、手続きは一気にはかどりました。書類の作成に整理点検。役所と事務所の往復と、この時の経験が今の私の礎になっていると思っています。

 

同朋からのしっぺ返し

会社の仕事も当初は順調でした。相方から徐々に実務も任されるようになり、事務仕事はタイ人社員へと引き継ぎました。

 

何か月かが経ったある日、突然、入管と名乗る男たちが会社を訪ねて来ました。彼らが言うには、この会社に労働許可なく就労している日本人がいるとの密告があったとか。そんな訳はなく、会社登記と共にビジネスビザを取得し、労働許可証も持っていました。当然、入管職員たちは何事もなく帰って行きました。

 

当時、取引先とのつながりで、入管の副局長を知っていた私は、すぐに事情を尋ねました。彼は事態を知らなかったようでしたが、折り返し報告が入りました。「名前までは明かせないが、日本人の通報だったそうだ」

 

同業者による嫌がらせだったようです。日本を離れ、海外で暮らす者どうし。なぜこのような事をするのか、理解に苦しみました。すでに何人ものタイ人の友人がいた私は、彼らに話すと、同様に信じられないと言います。

 

中国系の友人は、その時、華僑はお互いにお金を持ち寄ってお金をプールするシステムがあると教えてくれました。誰かが事業で必要になった時にそこから借りて、利子を付けて戻す。それは、同じ民族としての互助システムとして、昔からやっているのだと。

タイの役人に言われたこの国の姿勢

会社が軌道に乗るまでには、3年かかりました。共同で設立したとはいえ、出資したのは相方の方で、私は実務でそれを補うという約束でした。会社の事務仕 事は、タイ人の女の子がうまくこなしてくれていましたが、商品の配達をさせて いた男たちには、悩まされました。私がこの会社にいた4年間で、3回も全員を クビにする事になるとは、初めは思いもよりませんでした。

 

一度は、クビにした社員が労働基準局に訴え、呼び出しを受けました。彼をクビにした理由は、商品の横流しをしたため。明らかに会社に非はありません。しかし、役人が言った言葉には衝撃を受けました。

 

「あなたの会社は間違っていないし、彼ら自身が悪い、と個人的には思う。しかし、クビにされて、彼らも困っている。すまないが、全額とは言わないから、少しでも退職金を出してやってほしい。私たちは、タイ人を守る事が仕事なのです。分かってください」と、最後には懇願するように言ってきたのです。

 

確かに一つの筋は通っている。タイの公務員である以上、その最低限の責務は 自国と国民の利益を守ること。日本では、外国人であれ、正しい事が認められ、 日本人も間違っていれば、認められない。

 

しかし、タイでは、あくまでも、自国民を守る事が優先される。それがもし間違っていたとしても。

 

相方は、「ここは王国なんだ。法律よりもお上の意向が優先される。そして、それは金で動く」と、ボヤいていました。私たちは、この中で生きて行かなきゃならない。そう、私もこの頃には日本へ帰る気持ちは、失せていました。このまま、同胞からもタイからも、やられ放しでは帰れない。

 

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そむちゃい吉田

フリーライター

在タイ18 年目。過去にタイで起業し た事もあるが失敗。現在、某日系企 業のマネージャーを務めながら、通 訳・翻訳もこなし、フリーライターと して取材に歩く日々を送っている。主な著作に、『大人のタイ極楽ガイド』 『大人のイラスト会話タイ語トラベル』 (いずれも有楽出版)がある。現在、 BizAiA!にて、タイのニュース記事やコラムを執筆する他、タイの歌謡曲 情報サイトにも寄稿中。

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