すべてはタイから教わった Vol.5

第5回  タイで知り得た教育の意味と意義

 

バックパック旅行でタイやフィリピン、ネパールなどを周りながら、日本国内では海外への支援活動で、豊かさについて疑問を持った私は、その疑問を解決しないまま1999年4月末頃にタイへ赴任する事になりました。
そして、休日には現地のNGO活動へ参加。
その活動のなかでタイの教育制度の変遷を知る事になりました。今にして思えば、この事が、その後わたしがタイで暮らす上で最も重要な体験となりました。

タイの義務教育期間の変遷

恥ずかしながら、私は大学には行っておりません。それは頭が悪かったことが一番の理由ですが(笑)、それよりも大学で何を学べばいいのかが見つからなかった事と、他にやりたい事があったからでもあります。

しかし、やはり両親からは大学への進学を勧められたのです。それじゃあと、しぶしぶ受験勉強を始めて間もなく、弟が私立高校へ行く事になったから私の大学費用が出せないと言われてしまい、奨学金などをもらいながら苦学するつもりもなかった私は、あっさりと進学を諦めたのです。

タイで働き始めてから、教育支援のNGO団体を手伝うようになりました。その活動の中で、タイの教育に関する歴史を調べる機会がありました。その時に驚いたのは、1977年までタイの義務教育期間が4年しかなかったことです。法律的には、1977年以前は4‐3‐3‐2となっていて、4年間だけが義務教育だったのです。

その後、日本と同じ6‐3‐3‐4に改善され、義務教育期間は6年間、9年間と改められてきました。現在は高校までの12年間が義務教育期間とされています。

教育期間で違った仕事への態度

私は、タイでの教育支援活動と実際に仕事でタイ人と関わっている間に、教育が人生にどのようなことをもたらすのかを垣間みる事になりました。それは、自分で会社を始めて少しした頃の事。とあることに気がついたのです。

会社のスタッフや取引先の相手に仕事に対する取り組み方に違いがあることに気がつきました。それは会社やお店によるものではなく、あくまでも個人レベルでの事。ある年齢を境に、仕事に対する姿勢が違っていたのです。

2000年のころでしたが、ほぼ30才という年齢を境に若い人ほど、真面目に仕事に取り組み、上の年齢ほどいい加減な態度が目立つ事に気がつきました。

2000年で30才というと、1970年生まれ。タイの義務教育が4年制から6年制に延びた頃なのです。そして、その数年後に9年間へと再延長されたわけですが、その差が見事に仕事に対する姿勢に反映していました。

今でこそ、ピザのデリバリーや宅配が一般的になっているバンコクですが、その頃までは、タイ人にお金の集金を伴う配達は任せられないということが企業の常識でした。

しかし、これも2000年あたりから徐々に解消されてきました。教育の有無に関わらず、悪事を働くヤツはいる。とも言われますが、概して、教育機会がなかったゆえにそうした道に踏み込まざるを得ないという実情もあります。

タイで教育の意味を知る

義務教育が9年制になったあとも、家庭の事情で中途で退学、小学校だけしか卒業できない子どもたちはたくさんいました。私が出会ったタイの人々には、小学校を中退したという話をよく聞きました。

彼ら彼女たちは、決して頭が悪くなく、逆に非常に才能豊かな印象を持つ人たちも少なくありません。しかし、学校での教育を受ける機会を得られなかった。そして、結果として学び取るという力が足りなくなっている。我慢して、コツコツと続けることが苦手という面も共通して感じたところです。

日本以上に学歴によって就ける仕事が限られるタイ。つい最近、警備員にも中卒資格が求められることになり、多くが失職した事がニュースになりました。

教育とは、人が人として、どうすればより良くなれるのかを学び、会得する術を体得する期間なのでしょう。親として、国家として、子どもたちへの教育の機会を与えないのは、その子の未来を選択肢のない狭く厳しい人生を送らせることになる。具体的にどんな学問かに限る事ではなく、現代に生きる人として、生きる力や選択肢を増やして、選びとる能力を会得するのが教育なのでしょう。そう考えるに至ってから、今でも教育支援の活動を続けています。

そして、これは気づきを与えてくれたタイへの恩返しでもあり、大学へ行けなかった自分への懺悔にもなっているようです。

 

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そむちゃい吉田

フリーライター

在タイ18 年目。過去にタイで起業し た事もあるが失敗。現在、某日系企 業のマネージャーを務めながら、通 訳・翻訳もこなし、フリーライターと して取材に歩く日々を送っている。主な著作に、『大人のタイ極楽ガイド』 『大人のイラスト会話タイ語トラベル』 (いずれも有楽出版)がある。現在、 BizAiA!にて、タイのニュース記事やコラムを執筆する他、タイの歌謡曲 情報サイトにも寄稿中。

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