「ボータイ」を制する者がベトナムを制す Vol.2

第2回 大洪水時における旧型バイクの復権から学ぶ

 

ベトナム人の気質を最もよく表すキーワードが「ボータイ」です。この「ボータイ」と上手く付き合えないと、ベトナムで事業を成功させるのは 難しいです。皆様には全く馴染みがない言葉かと思いますが、本コラムではその「ボータイ」を追究していきます。

 

1年に1度は必ず起こる!市内完全麻痺の大洪水!!

読者の皆様、こんにちは!ベトナムのホーチミン在住雑文ライター、29屋で ございます。

 

1995年に初来越以来、刻一刻と移り変わっていくベトナムの風景のスピードについていこうと努力はしているのですが、なにぶんにも、経済発展、技術イノベーション、文明開化のご時勢。ぼやぼやしていると時流に置き去りにされかねない今日この頃ですが、それでも、まだ、さすがの発展途上国。昔からいまだに、変わりのないものも、まだまだあるようです。

 

たとえば、1年に1度、必ず起こる、ホーチミン市内の大洪水。

普通の雨季のスコールであれば、1~2時間、ざーっと大雨が降った後に、涼しい風が吹き渡るものなのですが、年に1度、8月半ばから9月ごろにかけての台風シーズンに、満月の潮力がぴったりとシンクロしたときに、ホーチミン市内にあるほとんどの幹線道路が、画像のごとく膝か腰ぐらいまでの高さの水に浸かってしまい、完全に交通が麻痺してしまうことがあります。

 

大洪水になると、車もバイクも悲惨な末路が待っている

もともと、メコンデルタというエリアは、海抜が大変に低く、水をたっぷり含んだ土層の上に都市が作られているため、大変、水はけが悪いようなのですが、それに加えて、道路のそこかしこに作られているはずの排水溝の口に、あちこちから吹き寄せられた落ち葉やゴミなどが流れ着いて、水の行き場をふさいでしまい、このような惨状を呈するというわけなのです。

そして、完全に河と化したいつもの通勤路の向こう側に渡ろうと、意を決して水の中に突進した車がどうなるかといえば、ほとんどの場合、マフラーの中に入りこんだ泥水がエンジンまで到達して焼きつき、エンスト。

 

運よく濁流を泳ぎ渡っても、エンジンの中に入り込んだ泥やゴミが焼きついてしまい、翌日総メンテナンスに出す破目になってしまうようです。

 

ならば、ベトナム人民の足、バイクはどうかといえば、最近の若者が好んで乗るスクータータイプで車高の低いおしゃれな高級バイクは、四輪車同様、悲惨な試練を迎えます。水面下に隠れて見えない路面の5センチ10センチの微妙な段差に車輪をとられてエンジンが空回り→エンストしたり、よろよろと進んでいる横を強行突破していく4WD車の立てた波にあおられて、バランスを失って横転→頭から泥水にダイブしたりと、まあ、えらいことになってしまいます。

車も、おしゃれバイクも玉砕!しかし、そんな中、無事だったのは……

しかし、そんな大混乱の地獄絵図の中、悠然と荒波を乗り切っていく、21世紀の鉄騎兵の如き雄姿があります。

よく見ると、それは、私が初めてベトナムに来た20年前には「超高級バイク」だったものの、ベトナムの若い人の間では、いまや「時代遅れ」の象徴とも陰口をたたかれている、ホンダのドリーム号ことスーパーカブ!

 

水が入り込まない、エンジンの機密。ちょっとやそっとではバランスが崩れない、安定した操作性。そして、無事に洪水を突破した後のメンテナンスのやりやすさ。

 

なんとも、まあ、たくましく、すばらしい「時代遅れ」ではないですか。

 

古きを生かして新しきを助くべし

規模も質も向上著しいベトナムのビジネス社会において、設備やインフラ、技術の導入については、とかく、時代に遅れまいと、最新式のものを入れるのが当たり前のようです。

 

しかし、まだまだ、突発的緊急事態の発生が絶えない環境でもあります。

 

「エース」がダメになってしまったとき、使い勝手のいい「ロートル」が、その穴を埋めるということもあります。

 

いざ、というときに、「ボータイ!」を招かないよう、それぞれのビジネスで考え得る最悪の事態に小回りの利く非常手段を、平時のうちに模索してみては如何でしょうか?

 

では、好い一日を!

 

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29屋(にくや)

在ベトナム22 年。本業である食品卸し・小売業のかたわら、「29屋」のペンネームにて、日越の仕事や人間関係を面白おかしく観察したコラム連載や講演、テレビ出演などを多数こなしている。

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