「ボータイ」を制する者がベトナムを制す Vol.4

第4回 サービスは一朝にしてならず

経済成長が著しいベトナムは、もはや「資本主義国」だという人もいます。しかし、サービスという面から言うと、どうでしょうか。ベトナムは急成長と発展途上の狭間にあるため、時には日本の常識では考えられないような対応に出合ったりします。そういう意味では、ベトナムは今も紛れもなく「社会主義国」だと言えるでしょう。

クリスマスに浮かれる南国の街角で日本人がベトナム人に激怒?

このコラム原稿を執筆中の現在、ベトナムはクリスマスの真っ只中。

ゆるーい仏教&フランス植民地時代以来のカトリックが、ほぼ人口の大半を占める、この国。敬虔に教会でミサに参加して、家族総出で祈りをささげる人たちもいれば、日本同様、プレゼント合戦とパーティー三昧に明け暮れる凡夫たちの人の波が通りを埋め尽くし、何ともまあ、幸せそうな家族連れや若人の群れ。

浮かれ気分で、このまま、年間で最大のイベント、旧暦正月(テト)にまでハイテンションが持ち越されていく観のある、1年でも有数のハイテンションなシーズンであります。

そんな中、私の友人で、在越歴、すでに10年以上を誇る、ある日本人の友人が、

「もぉー、ひっさびさに激怒して、人前で怒鳴り散らしちゃったよ……」
と、自己嫌悪を交えた自嘲気味のメールを送ってきました。

ふだん、温厚篤実で知られる彼に何があったのか? と、訊いてみると……。

ラッピングするだけで20分近くかかる

私同様、ベトナム人の妻子を持つ、その友人。8歳の娘さんと、5歳の息子さんに、クリスマス・プレゼントを買おうと、市内中心部にある有名書店に赴き、吟味の末に、1冊ずつ本を選んで会計を済ませたあと、レジのすぐ脇にあるカウンターで贈物用のラッピングを依頼したのだそうですが、問題は、そこから。

他に2〜3人のお客さんが並んでいた、そこのカウンターでは、4人ほどの年配の女性スタッフが、四方山話に花を咲かせつつ、のんべんたらり、ちんたらちんたらと、たかだか数個の商品をラッピングするのに、ああでもない、こうでもないと、紙の折り方、テープの貼り方、リボンのつけ方に試行錯誤を繰り返し、ようやく友人の順番が回ってくるまで、受付札を渡してから、実に19分47秒(あんまり腹が立ったので、時計を見ながら時間を計っていたそうです)。

焦る気持ちを抑えながら、せっかく選んだ我が子へのプレゼントがラッピングされる様をイライラしながら見守っていたところ、あろうことか、アオザイ(民族衣装)で正装したオバちゃんの店員は、紙で出来ている本の表紙に直接、両面テープを接着し、包装紙とくっつけようとし始めたそうです。

サービスのレベルは未だ「社会主義国」

「あああああ〜〜〜、ちょっと! 何してんの!?」と、友人がたまらず声をかけた瞬間には、すでにとき遅く、30センチほどの長さの両面テープによって、本の表紙と包装紙が、ぴったりとくっつけられたあとでした。

ベトナム人と仕事をして長年の経験を持つ彼も、さすがにブチ切れてしまい、

「バカじゃないの! 紙で出来た商品に直接、両面テープ貼るか? 普通? もう、いいから!  自分の家でラッピングするから、その本、取り替えて‼」

とクレームしたところ、実はその売り場のフロア・マネージャーだったというオバちゃんから、予想外の返答が返ってきました。

「新しい本が欲しいのなら、もう1冊分、お金を払え!」

「あと、そっちが要らないと言った本の、包装紙の代金と包装費用(合計で日本円300円程度)も払え!!」

「マネージャーを呼べ!」って言っても、

「私(=オバちゃん本人)がマネージャーなので、話があるなら聞きまっせ」

結局、「じゃ、いらねーよ!その本は、あんたの息子にでも上げてよ !!バイバイ!」と、捨て台詞を残して、買い上げた本を放置し、別の書店で、プレゼントを買いなおすことになったそうです。

一昔前の、社会主義まっさかりな時代の名残が消えてない頃のベトナムならまだしも、1年ごとに見違えるほどの経済成長を遂げている現在のベトナムで、まだ、こんな、客を客とも思わないサービスが生き残っているとは(驚)。


29屋(にくや)

在ベトナム22 年。本業である食品卸し・小売業のかたわら、「29屋」のペンネームにて、日越の仕事や人間関係を面白おかしく観察したコラム連載や講演、テレビ出演などを多数こなしている。

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