いまも僕を刺激するベトナムという国のこと Vol.3

第3回 ハノイとホーチミンシティーってどう違うの?(その2)

 

一口にベトナムと言っても、北部と南部は気質も文化も風土も大きく異なっています。北部にある首都ハノイと南部にある商都ホーチミンシティーはどう違うのか――。前回に続き、ハノイとホーチミンシティーの「距離」の「遠さ」をご紹介いたします。

ハノイとホーチミンシティーは遠いのか近いのか

ベトナム政府が首都を置く北部のハノイと、そのハノイを凌ぐ最大の商都として栄える南部のホーチミンシティー。2つの都市をへだてる1700キロの距離はベトナムの人々にとって、どのような意味を持っているのでしょうか。

これを考えるにあたっては、まずベトナム人が一般に、生まれ育った地元をあまり離れたがらないということを知っておく必要があります。ことにベトナムを代表する大都市のハノイ、ホーチミンシティーのどちらかが故郷に近ければ、わざわざ北部の人が南部へ、南部の人が北部へ引っ越そうということは、ほとんどないといいます。

 

東京の営業さんからすれば、「ハノイとホーチミンシティーって、違うの?」というぐらいの感覚だった2つの都市は、我々が飛行機に乗れば2時間(札幌-大阪ぐらい)で到着しますが、長距離列車に乗れば30時間ほどもかかります。ベトナムの人々にとって、ハノイとホーチミンシティーはそれぐらい遠い距離にあると考えたほうが良さそうです。

私にとって、ホーチミンシティーは外国です

当社で活躍する地元出身の女性社員。 いっときハノイの日系企業に勤めていたのが、ほんの数か月で辞めて、ホーチミンシティーへ戻ってきてしまいました。「せっかく日本の大企業に就職したのに、何で簡単に辞めちゃったの?」 と訊くと、彼女は、「ハノイは、人も、気候も、食事も、私には合いません」 と、にべもない様子です。

 

日本では、大都市に本店を構えていれば、全国から人を採用することができます。また、大学時代の同級生には北海道から沖縄まで全国の人がいたというのも珍しい体験ではないはずです。

 

しかし、ベトナムではこうした風景はあまり見られず、北部の学生はハノイ(北部)の大学、南部の学生はホーチミンシティー(南部)の大学へ通うケースがほとんどです。のちに紹介しますが、日系IT企業のハノイ進出が昨今めざましいのには、こうした背景も影響しています。ホーチミンシティーにオフィスを構えて優秀な人材を集めようぜ、と言っても、けっして全国から応募が来るわけではないのです。

 

分かってはいても、どうにかならないかと、ハノイの人材コンサルタントが出張してきた際に相談をしてみました。ハノイで採用活動をやって、北部の優秀な学生をホーチミンシティーに連れてくることはできないか、と。

 

「I think it is almost impossible( ほとんど無理だと言ってよいでしょう)」彼女はきっぱり言いました。我々が鼻白んでいると、彼女はこう続けます。「ハノイとホーチミンシティーは、あなた方が思っているよりも遠いのです。私 が今日ハノイからここへ着くまでフライトはたったの2時間。でも、いったん飛行機を降りれば、ここは、気候も、人柄も、街並みも、言葉すらも違う街。ハノイで暮らす私にとって、ホーチミンシティーは外国なのです」。

 

そんなことも知らないのか、と呆れ顔をされてしまいましたが、知っています。それが難しい相談だということは、もちろん知っていますが、しかし、それでもなお「ハノイとホーチミンシティーは外国だ」とまで言いきられてしまうと、「そうかな……?」と改めて考え込んでしまうのです。

 

若い労働力を求めて展開先を模索するIT企業

ベトナムへ進出するIT企業にとって最大の魅力は、続々と情報工学系の学部を卒業してくる若い労働力です。「IT立国」を標榜する政府の後押しもあって、エンジニアの卵ともいうべき若者たちがどんどん労働市場へ流れ込んでいます。

 

しかし、ここまで見てきたようなベトナム人の地域流動性の低さにより、この国の労働市場は地理的に分断されていると考える必要があります。

 

「ヒト・モノ・カネ(そして情報)」を引き寄せる大都会とはいえ、ホーチミンシティーで待っていても、集団就職列車はやってきません。求める人材との出会いが充分になければ、こちらが出て行かなければならないのです。

 

筆者がベトナムに関わりはじめた7年ほど前には、ウエブ系の比較的若いIT企業はホーチミンシティーに進出するケースが圧倒的に多かったと記憶しています。

 

しかし、ここ4~5年のあいだにハノイの日系ウエブ開発/ゲーム開発企業の社会は大きな盛り上がりを見せました。これはひとつにハノイの優秀な人材を求めた進出が続いたものと見ています。

 

また、ハノイへの進出や二次展開が当たり前になるにつれて、ダナン工科大学の学生に注目する声も聞かれます。IT企業が進出する都市に関しては選択肢が増えつつある状況のようです。

 

(この項、次回に続きます)

 

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堀真一郎(ほり・しんいちろう)

株式会社RNAコンサルティング代表取締役

東京とベトナムのホーチミンシティーを結 んでウエブ・システムのオフショア開発/ BPO(業務のアウトソーシング)受託を 手がける株式会社Wakka Inc. グループ の創業者。株式会社RNA コンサルティ ングの代表取締役も務める。2011 年に 日系IT 企業起ちあげ支援コンサルティン グでホーチミンシティーでの活動を開始。 現在は1年の大半をアメリカのボストンで 過ごす。

 

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