いまも僕を刺激するベトナムという国のこと Vol.5

第5回 ハノイとホーチミンシティーってどう違うの?(その4)

 

ベトナムは、北部と南部では気質も文化も慣習も風土も大きく異なっています。北部にある首都ハノイと南部にある商都ホーチミンシティーはどう違うのか。 今まで3回にわたって説明してきましたこのシリーズも、今回の第4回目で最終回となりました。最後に、ハノイとホーチミンシティーの相違点をまとめます。

 

 

日系企業にとってのハノイとホーチミンシティー

「進出するなら、ハノイなんですか?ホーチミンシティーなんですか?」

というのはベトナム進出の話をしていると、よく出てくるお訊ねです。

3、4年も前なら「ホーチミンシティーのほうが商業が発展しているし、日本人も暮らしやすいから、ホーチミンシティーから始めるのがいいんじゃないでしょうか」

とお答えしていたかもしれません。が、いまではそう簡単にお答えするわけにはいきません。

 

違いがなくなりつつある社会インフラ

初めてベトナムへ来た頃は、ホーチミンシティーの中心部でも、夏場になれば週に1度か2度は停電していたもので、新興国で生活するのが初めてだった筆者は「これは大変なところで仕事することになったな……」と不思議な興奮を覚えたものです。

ハノイにおいては、事態はもっと深刻で、日系企業が多数入居する工業団地でも電力不足による輪番停電が行なわれたような話を聞いています。

しかし、現在ではどちらの都市においても、停電の頻度はぐっと下がり、少なくともオフィスで営業する分には、まず、わずらわしく感じることはなくなりました。

ツイッターを見てますと、「停電した!」と騒いでいる人もいますが、いちいち騒ぐほど珍しくなったということだと思います。突然電気が落ちて真っ暗になった居酒屋のテーブルへ、おごそかにローソクが運ばれてくる風景をなつかしく思うこともあるぐらいです。

また、ラッシュ時の渋滞や不安定な国際通信といった問題は、緩和されつつありながらも、ハノイ、ホーチミンシティーのいずれの都市でも同程度に残っています。このようなことから考えますと、インフラ整備の状況で優劣をつけるのは難しそうです。

日本人の生活はどんどん便利に

3、4年前まで、ハノイに駐在する方々からもっとも羨ましがられるのは、ホーチミンシティーの日本食でした。

「ホーチミンシティーへ視察に訪問したい」と相談をうけてお迎えをしましたが、「話題のピザ屋に行きたい」「とにかく、うどんが食べたいです」「フリーペーパーで美味そうな店ができたと知っても、よく見れば全部ホーチミンシティー。許せない」と食事の話が一番盛り上がりました。  さらに、その何年も前から東南アジアで活躍されてきた先輩方には「甘い!」と怒られそうですが、それでも日本と変わらない食事ができるというのはホーチミンシティーに暮らす大きなメリットだと多くの人が考えていたのです。

こうした面でも、最近はハノイにも綺麗なお店がどんどんでき、また居酒屋さんに限らず、こだわりの強い専門店も増えているようです。家族連れなら休みの日に出かけるような商業施設の規模と数では、むしろハノイのほうが上回っており、日本人の生活に欠かせないものとしては、コンビニエンス・ストアのハノイへの展開が遅れているぐらいではないかと思われます。

 

日系企業社会のネットワーク

筆者の属するIT企業社会に関していえば、その幅や深度において、ハノイとホーチミンシティーの違いはなくなったと思われます。

また、以前はハノイとホーチミンシティーを行き来しながら仕事をしている方というのもあまりお見かけせず、筆者がたまにハノイ出張をしますと、「ホーチミンシティーってどうなんですか?」

「ハノイってどう思いますか?」と質問される様子は、まるで2つの街が、それこそ別の国であるかのようでした。

しかし、現在では両方で営業する企業があったり、両都市の企業同士が親しく情報交換したりすることは珍しくありません。ハノイ、ホーチミンシティーのどちらで営業する企業にとっても大変すばらしい変化であったといえます。

IT企業社会の顔ぶれという意味でいえば、ハノイのほうで若いベトナム人起業家の存在が目立つという点がわずかに違いと言えるかもしれません。


企業活動を左右するカギは採用戦略にあり

そうなりますと、ハノイに進出するか、ホーチミンシティーに進出するか、という選択を分けるのは、もはや「どんな人とどのような出会いを求めているか」という問題ぐらいしかなさそうです。

先にも述べたように、大学教育に向けられる予算ではハノイに分があります。そのわりにハノイで日本のIT企業が増えてくるのは少し遅かったものですから、ホーチミンシティーに比べ優秀な人材が低賃金で採用できるという現象が一時的に生じていたのは間違いありません。IT人材についてはこれがすでに解消されたとしても、日本語人材やマネジメント人材については、まだハノイのほうにポテンシャルがあるのでは? と筆者は疑っています。

一方、ベトナムで起業した方のなかには、技術の水準ではなく、「得意分野にどれほど秀でているか」に着眼し、とがった人材を採用できるのはどちらだという調査をされている方もいました。

いずれにしましても、ベトナムの日系IT企業は「規模」と同時に「質」を求められる段階へとうに入っており、どこでどのように、どんな人材を求めていくかという採用・人事戦略がますます企業活動を左右するようになっています。地理的・文化的・制度的状況を勘案すれば、中部のダナンをふくめ、どこへ進出すると決めてもおかしくなくなってきたというのが実態ではないかと考えられます。

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堀真一郎(ほり・しんいちろう)

株式会社Wakka Inc. グループ経営者

東京とベトナムのホーチミンシティーを結んでウエブ・システムのオフショア開発/BPO(業務のアウトソーシング)受託を手がける株式会社Wakka Inc. グループの創業者。株式会社RNA コンサルティングの代表取締役も務める。2011年に日系IT企業起ちあげ支援コンサルティングでホーチミンシティーでの活動を開始。現在は自社グループの経営にあたる。

 

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